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インフィニット・ストラトス ―蒼炎の大鴉―

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一日目

特にやることがないので暇潰しに計算問題を解いていると、織斑がくる。

「俺以外に男がいて助かったよ。あらためて、俺は織斑一夏。よろしくな」

なんだ。普通に挨拶くらいできるじゃないか。

「俺は黒鉄和也。御曹司とか気にせず普通に接してくれると助かる」

「ああ。で、お前はどこの御曹司なんだ?」

「レイヴン社だよ。そこそこでかい航空メーカーさ。以前は戦闘機のパーツとかも作っていたんだが、需要が減った、と言うかほぼなくなったから今は旅客機が主流だな。それと独自でISも開発している」

「へぇ」

「お前こそあの織斑千冬の弟なんだろ?何か話すことはあるか?」

「いや、特にないな。あくまであれは千冬姉の栄光で俺のじゃない。自慢の姉であることは認めるけど」

「そうか。まぁなんにせよよろしくな」

「ちょっといいか?」

女子の1人が話しかけてくる。たしか篠ノ之箒とかいったか?名字的に篠ノ之束と何か関係があるのだろうか?

「ああ、いいぞ」

「一夏に用がある。借りてくぞ」

「お好きに」

織斑は篠ノ之箒に連れていかれる。また暇になったので計算問題を再開することにした。

それにしてもうるさい。物珍しいのはわかるが、俺は動物園の珍獣ではないんだぞ。

そんな中でも手を止めることはないんだが

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り響く。距離をとって俺を見ていた取り巻きはすぐに着席し、静かになった。

ちなみに授業に若干遅れた織斑は織斑先生にまた出席簿で殴られた。あれほどの運動エネルギーを生み出すのにはどれほどの腕力がいるんだ?


授業が進んでいく。だが俺にとっては退屈そのものだ。2年までの内容は入学までに予習してきた。復習になると言われればそれまでだが、物覚えが元からよい俺はこの程度は完全に覚えきっているので復習さえ無意味と言えた。まだ問題演習をやった方が有意義だ。

内職という言葉が脳裏をよぎるが、織斑先生がいる以上見逃してもらえないだろうことは容易に予想がついた。

一方織斑は授業についていけてないようで、辺りを見回したりろくに内容を見ずに教科書
捲ったりしている。

「織斑くん、何かわからないことがありますか?」

織斑の様子を見ていた山田先生が授業を止めて尋ねる。

「あ、えっと…」

「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから」

胸を張る山田先生。でかい胸が目立つが興味は湧かない。俺の守備範囲は+2-1だ。それより上や下の女に興味はない。ちなみに俺は胸のサイズはあまり気にしないタイプだ。

「先生!」

「はい、織斑くん」

「ほとんど全部わかりません」

自慢げに言うなよ

「え…全部、ですか…?」

流石に山田先生も絶句した。当然だ。

「え、えっと…織斑くん以外で、今の段階でわからないって人はどれくらいいますか?」

俺を含んで誰も手を挙げない。

「織斑、入学前の参考書は読んだか?」

控えていた織斑先生が問う。

「古い電話帳と間違えて捨てました」

そして出席簿

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」

流石にあれを捨てるのは予想外だ。必読ってかなり大きく書いてあったよな。こいつの目は節穴か?

「あとで再発行してやるから1週間以内に覚えろ、いいな?」

「い、いや、1週間であの分厚さはちょっと…」

「やれと言っている」

「はい、やります」

正直1週間は生ぬるいな。俺は5日で覚えた。

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった兵器を深く知らずに扱えば必ず事故が起きる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができなくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

当たり前だな。まぁそれはISに限った話じゃないが。

「貴様、[自分は望んでここにいるわけではない]と思っているな?」

織斑の態度を察したのか織斑先生が問い詰める。

「望む望まざるにかかわらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることをやめるんだな」

言い方がきついとはいえ正論だ。織斑も納得したようだ。

「えっと、織斑くん。わからないところは授業が終わってから放課後教えてあげますから、がんばって?ね?」

「はい、それじゃあ、また放課後によろしくお願いします」

「ほ、放課後…放課後に二人きりの教室と生徒…。あっ、ダメですよ、織斑くん。先生、強引にされるとよわいんですから…それに私、男の人は初めてで…」

おい教員、公衆の面前で何を言ってる…。

「で、でも、織斑先生の弟さんだったら…」

「あー、んんっ!山田先生、授業の続きを」

山田先生の妄想を織斑先生が遮る。

「は、はい」

ようやく我に返ったか。

その後は微妙な空気の中、授業が進んだ。


キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り、授業の終わりを告げる。

休憩になると、織斑は俺の席までくる。俺と篠ノ之くらいしか話す相手がいないのだろうか?

俺に話しかけようとした時、1つの声が割ってはいる。

「ちょっとよろしくて?」

「へ?」

全くの無警戒だった織斑は間抜けな声をあげる。

話しかけてきたのは金髪の女子だった。見覚えがある。イギリス代表候補生のセシリア・オルコットだったか?

「要件は何だ?イギリス代表候補生」

「あら、私のことご存知なのですね」

織斑は会話についていけてないようだ。

「当たり前だ。ネットのニュースなり見たら嫌でも目にする。最も、情報の大半は機体の方だが」

「そこそこ勉強してるんですね。そちらのおバカさんとは違って」

「これでも次期社長だ。むしろ勉強しないわけがないさ。上に立つ人間が産廃とか話にならんだろ」

「なあ」

織斑が話し始める。

「何だ?」

「代表候補生って何だ?」

「お前さぁ、無知にもほどがあるぞ」

「そうですわ」

オルコットも同調する。

「オルコットさん、説明してやってくれ。俺は疲れた…」

「仕方ないですわね。いいです?代表候補生っていうのは国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートのことですわ。あなた、単語から想像したらわかるでしょう」

「なるほど」

「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡…幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

「そうか。それはラッキーだ」

「馬鹿にしていますの?」

「もういい、相手にするだけ無駄だ。で、オルコットさん、本題は何だ?ウチの会社とのコネか?」

「たしかあなたはレイヴン社の御曹司でしたね。知識はあっても実力はどうだか…」

「一応2年間テストパイロットをやっていた。そこそこはできるつもりだ」

「あらそうですの。あなたは期待できそうですわね」

多少見下した態度がウザいがこらえる。

「要件だけ言ってくれ。俺は勉強したいんだ」

「いえ、単にどれ程の人間か見極めにきただけですわ」

「そうか。そろそろ座れよ。授業開始まで1分をきったぞ」

それを区切りに二人とも席に戻る。


3限目は織斑先生が教壇に立った。

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

ちなみに山田先生は教室の後ろでノートを持って立っている。

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

これは出るべきか…?

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく生徒会の開く会議や委員会への出席…まぁ、普通の学校における委員長みたいなものだ。今の地点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると1年間変更できないからそのつもりで」

「はい、織斑くんがいいと思います」

「私も賛成です」

「私は黒鉄くんを推薦します」

「同じく」

「候補者は二人、他にはいないか?自薦他薦は問わないぞ」

織斑は戸惑っている。

「ちなみに他薦されたものに拒否権はない」

「待ってください。納得がいきませんわ」

オルコットが立ち上がる。

まぁイギリス代表候補生なら当たり前か。

「そのような選出は認められません。大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間味わえとおっしゃるのですか!?」

あ、そういえばこの人こんな性格だったね。

「実力からいけばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります。わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ」

お、珍しく織斑がキレかけている。

「いいですか?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ」

勝手にしてくださいそして黙ってください耳障りです。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で…」

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一不味い飯で何年覇者だよ」

言いやがったぞこいつ

「なっ…」

おお、キレてるキレてるw

「あ、あ、あなたねぇ、わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

これ呟いたら面白いだろうな。織斑一夏とイギリス代表候補生の授業中の口喧嘩。RT4桁は余裕だろうな。

「決闘ですわ」

「おう、四の五の言うよりわかりやすい」

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い…、いえ、奴隷にしますわよ」

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

そう?何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね」

「お前はどうするんだ?黒鉄」

織斑先生が尋ねてくる。せっかく忘れてもらえてたと思ったのに。

「あまり気は向かないですが、推薦してくれる人にわるいので僕も出ますよ」

「決まりだな。それでは勝負は1週間後の月曜。放課後、第3アリーナで行う。織斑とオルコット、黒鉄はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

面倒なことになったな。

その後、その日の授業は滞りなく進んだ。
 
 

 
後書き
指摘のあったところを修正しました。たぶん、文字化けの類いです。以後も間違い等があれば指摘をお願いしますm(_ _)m 
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