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インフィニット・ストラトス ―蒼炎の大鴉―

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某企業のテストパイロット

ある企業が偶然にISコアを開発して一年、そのコアをベースに企業は独自のISを開発していた。

圧倒的な火力と機動性を併せ持ち、且つ水準並の防御力を有する機体。

それは社長の一人息子に与えられた。

男にも反応するコア、それはISの常識を覆すもの。

それをわかっていてなお、その親子は受け入れた。

その機体がもたらすのは平和か破滅か。それは誰にもわからない。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


社内の訓練場

十分に機動戦が出来る空間で、2機のISが飛び回っている。

1機は倉持の開発した第二世代型[打鉄]

もう1機は日本の兵器メーカー[レイヴン社]の開発した新鋭機[デルタカイ]

その姿は既存のISとはかけ離れていた。

パーツはすべて機体に固定されており、脚部も人型を保っている。頭部を除き、ほぼ全身が装甲に覆われていて、関節部にはシーリングが施され、肌の露出がない。頭部は額にブレードアンテナが取り付けられ、目を囲うようにバイザーが付いている。カラーリングは、わずかに青みがかった白に一部が紫と黄色に塗装されている。

そして、それを纏っているのは紛れもなく男だった。



戦いは、デルタカイが遥かに優勢だった。

防御型の打鉄ではデルタカイの超音速機動に付いていけず、一方的な砲火に晒されている。

反撃しようにもロックオンも出来ず、銃を向けた先には既にいない。

結果は見えていた。

降り注ぐビームの雨は瞬く間に打鉄のシールドエネルギーを削り飛ばし、そして戦闘不能にする。

その間約15秒

打鉄のパイロットが弱かったのではない。むしろ、元代表候補生の肩書きを持つほどの実力者だ。

だが、それでもなおデタラメなスペックを有するデルタカイと、驚異的な戦闘能力を持つ天才[黒鉄 和也]の敵ではなかった。

打鉄のパイロットがISを解除して話しかけてくる。

「あなた、本当に出来る子ね。仮にも代表候補生だった私がたったの15秒でやられるなんて」

「機体の性能のおかげです。同じ機体ならたぶん勝てないでしょう」

「どうかしら。あなたなら打鉄でも私に勝てると思うけど」

「お世辞はいいですよ。いくら僕が社長の息子だからって、おだてたところで何も出ない。それはあなたもわかっているはずです」

そう返したものの、彼女がお世辞で言っているのではないことは自身がよくわかっていた。

「そうね。でもあなたならなれると思うわ。私がなれなかった国家代表にね」

「努力はしますよ。社名にかけてね」

自身の敗北は社名に泥を塗る。それを胸に刻んでいる。それは次期社長としての覚悟だ。
これから何万という人間を率いる者の

「期待しているわ」

それを言って彼女は訓練場を出る。その後ろ姿は、歴戦の勇姿の確かな覇気が感じられた。

彼女と入れ替えに、一人の男が入ってくる。身長180cmで、ガタイはしっかりしている。
彼こそがレイヴン社の社長であり、黒鉄和也の父親である[黒鉄 勇二]だった。

「和也、調子はどうだ?」

「問題ありませんよ。機体の耐G機能が優秀だから超音速戦闘をしてもさして負荷はありません」

「そうか…。ならいい。お前の身に何かあったら、父親としても社長としても辛いからな」

「それはさておき、例の男性適合者、どこまで調べがついているんです?僕としてもかなり気になるのですが」

「いくらか重要な情報を掴んだよ。まず、彼は純正のISコアに適合した。これは紛れもなく人類初だ」

「興味深い」

「次に、彼はあのブリュンヒュルデの唯一の肉親で弟とのことだ」

「あの織斑千冬…ですか」

「左様、それが世間からの注目を加速されているようだな。それと最後に、彼はISの開発者[篠ノ之束との交流があったようだね」

「なんかキナ臭いな」

「確かにな。もしかしたら篠ノ之束が何かした可能性も否定できん」

「行方をくらませた彼女が何をしたのか…、かなり興味深いことではありますが」

「裏がとれない以上、干渉できんな」

その会話は部下し社長というよりは父と子がニュースについて議論していると表現する方が近かった。

「どちらにしろ、彼がIS学園に入学することは目に見えている。僕も入学するし、何か掴んでみましょう」

「無茶はするなよ」

「わかってます」

そして社長は立ち上がり、訓練場を出る。業務に戻るのだろう。

「僕もデータをまとめますか」

和也も自身の業務に戻ることにした。

 
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