| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

十九章
  再び春日山城下

俺達は春日山城下にいた。人質を救出するためにな。なので、道具はトレミーから準備させているので俺たちは目標である崖に向かってる所だ。道具は?と仲間に聞かれたが船の者たちから用意をさせているとのこと。で、俺達が前調査したときから半月も経っていない。そのはずだが、前よりさらに酷くなっているのが分かるな。何でも多くの座が春日山を離れたらしいと聞いた。市の外れで目にしたのは疲れ切っているような兵に連行されていく昏い目をした町の人の姿。俺はあの時無実の者を無礼打ちや捕まえるなと警告を発したが効果はなかったらしいな。なんでも美空の姉と母は死神と閻魔の化身というのを信じていないようらしく、兵からの報告は空振りに終わったらしい。で、今は二手に分かれて町の調査をしていた。俺達がいた頃より酷くなっていないかな。俺はころと一緒にいるけど。

「・・・・ころは見るの初めてだっけ?」

「ずっと城に詰めていましたからね。・・・・あの町の人たちって何か悪い事したんですか?」

「いや、しょうもないことさ。歩いていたら武士の気に障ったとか、物の値段をまけなかったとか、そんなもんだよ」

「鞠ちゃん達から話は聞いていましたが、そこまでですか・・・・」

ころはあのときの綾那みたいに飛び出そうとはしてないけど、それでも辛そうな顔をしている。それでも今は耐えなければならないことだ。

「・・・・・そんなにひどいのかい?春日山は」

ころと話をしていたら、俺達の近くでその光景を眺めていた女の子が声を掛けてきた。咄嗟にスマホを出すとこいつはただ者ではなさそうだ。

「俺が言ったということは秘密だぞ。俺はまだ牢屋に入りたくないのでね」

「分かっているさ。だが、世も末だね・・・・」

「全くだ(こいつは武田の者で主に諜報の者か)」

「長尾が内輪もめしていると聞いて、良い仕官の口が有ったものだと来たんだが・・・・景虎は兵の募集を終えているし、晴景の春日山はこの様だし、困ってしまってね。君もその口かい?」

「似たようなもんさ。仕官が決まっていれば君はここにはいないんだろ?」

「まあね。あればとっくに赴いているさ」

「違いない。甲斐や上野辺りはどんな感じなのかね。北上の噂がいつもあるな」

「確かにどちらも落ち着いているようだから、そろそろ大きな動きがあるかもしれないね。ただ、安定している分、仕官の口を探すのは至難の業だろうけど」

「そうか・・・。だったらそれこそ、山を越えて三河や駿河にでも行った方が良いかもな」

「そうだな・・・・と、引き留めて悪かったね」

「いや大丈夫だ。互いの情報交換も悪くはないからな。良い仕官先見つかるといいな」

「それじゃ、また縁があれば。可愛らしい奥さん、大事にしてやりなよ」

そう言い残して、浪人風の少女はその場を悠々と立ち去って行った。

「わ、わあ・・・・私、一真様の奥さんですって。でも、誰なんです?この間潜入した時にお知り合いになった方ですか?」

「奥さんじゃなくて恋人な。あと、おそらくあいつは他国の間者だな」

ゆらゆらと歩いているが、隙はあるようでない。情報だと武田の間者だな、あれは。たぶん俺らの事も知っているんじゃねえのか。

「そういう意味でもある意味ご同業ですか」

まあ、ああいうのとはやり合いたくないもんだ。

「一真様、調査完了致しました」

隙のない彼女が人混みに混ざって消えた後に、入れ替わりとして綾那達だった。どうやら言いつけ通りの調査を終えたようだ。

「さてと、怪しまれずに移動するか」

俺達が移動したあと、武田の間者と思われる者はある者と合流していた。

「一二三ちゃん!こんな所にいた!」

「やあ湖衣。そっちの様子はどうだった?」

「ひどいものです。あの春日山が、まさかこのような事になるとは・・・・。景虎の底も知れたというものです。一二三ちゃんはどうでした?」

「似たようなものさ。ただ、、お屋形様や典厩様にちょっとした土産を一つ、見つけたけどね」

「・・・・お土産?何ですか?」

「内緒」

「もう、一二三ちゃんはいつもそうなんですから!」

武田の間者と思われる者が言ったキーワード。それは典厩だ。おそらくそれは武田信繁だろうと俺は察知した。おそらくこの子らは気付いてないかもしれないが、上には小型偵察機が飛んでいる。俺らが使っているのは気配もなく姿もない。元の偵察機に神の力で透明化して気配を察知されないようにしたからだ。そのおかげで町のいろんな声が聞けたので、俺の通信機からの指示でトレミーに帰還させた。帰還したときは元の姿になっているし。今俺達が向かっているのは春日山の城だ。

「この辺りが春日山の裏になるんですね」

多くの兵が守っている城門を過ぎてからぐるりと大きく回り込めば、やがて池が見える。そこから上に向けてそびえるのは、春日山の山肌だ。

「確かに険しい所ですね・・・・。この三日間、一通り訓練は受けましたけど、こんな所を本当に登れるのでしょうか?」

昨日までの準備の間に、壁登りの基礎を疑似空間で済ませてある。もちろん俺達が使う道具も一通り覚えてもらった。今日から三日間は実地訓練である。そして七日目がいよいよ本番だ。今回使う道具は創造の力で創ったもの。俺達はいつでも登れるが、表としてのこいつらは道具はないのでな。ヘルメット、ハーネス、ビレイグローブ、チョークバック。

「大丈夫だ。そのために色々と学ばせたのだからな。あと実地訓練のために指導する隊員を連れてきているから心配するな」

「基礎も三日しかしていないのですけど」

「安心しろ。お前らの基礎体力はしっかりしてるから。それに指導員の指示に従えば大丈夫さ」

「それにしても一真様は、どうして崖登りなんて出来たですか?」

「趣味の一つだ。あと救助するための訓練としてやってきたもんだ」

「趣味・・・・?」

「ようするに俺達が来た世界には崖登りとかは、趣味で登る奴がいるって訳だ。あとは救助とかかな。崖のところで孤立した者を助けるためとかでな。南アルプスは分かんないか。赤石山脈って知ってる?駒ヶ岳とか鳳凰三山とか」

鳳凰三山・・・・地蔵岳・観音岳・薬師岳のこと。

「名前くらいは。甲斐と駿河にまたがってそびえてる山地ですよね?」

「そういう崖とかに救助に行ったことがあったのさ。たまにいてな、山に登ったはいいが誤って崖に落ちてしまって孤立してしまったとかな」

俺は軍人だけど救助活動もすることもある。ヘリで降下したのは懐かしいな。

「まあそういうところやこれよりもっと高い断崖絶壁とか登ったけど、あのときに比べたら楽勝だよ」

「それは趣味というより、修業に近いものですね」

「まあ俺以外の者も結構登りには長くやっている者もいるからな。あとさっき言ったように救助とかな。綾那はどう?」

「綾那もこのくらいなら楽勝です!」

「そうか」

「三河の山河で育ったんですから、そんなの素手でやれるのが三河武士として当たり前なのです!ね、歌夜!」

「いや、私はそこまではちょっと・・・・」

「やはり綾那は特殊だな」

「あはは・・・・。一通り教えられましたから、ここくらいなら何とかなりそうですけど、これ以上厳しいとちょっと・・・・」

「あれ?登るのはここからじゃないです?」

「予定だともう少し先だ」

といってもう少し先に進む俺達。すると目的地にはすでに黒鮫隊の者達がいた。俺は敬礼をすると、隊員たちも敬礼をした。護衛役のIS隊もいる。男性隊員は蒼太・大地・海斗で、女性隊員は優奈・真央・奈々だ。当然こいつらは独身同士だ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧