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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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入学編〈下〉
  事務スキル×カウンセリング

風紀委員会は、その業務の性質上、本部に毎日顔を出す必要はない。委員長は、普段から生徒会室にいる。人選も各方面から武闘派を選りすぐって集めたメンバーだからなのか、事務とか整理整頓が苦手な者たちばかりだ。俺が初めてここに来たときもそうだったが、ちょっとしたゴミ屋敷になっていたからな。というより、俺が新入部員勧誘週間の戦績以前に、唯一の事務スキル保有者として風紀委員会の中で働きぱなしだった。今日も本来なら非番で、深雪が仕事をしている間はどこかで時間を潰しているのだが。さっきも言ったと思うが整理整頓や活動報告が全く整理されてないからと、委員長からのヘルプの要請が入る事になる事が多くなった。俺の隣では、補佐している蒼太もいるけどね。俺の隣で活動報告をしているところである。俺と共に本意ではないが、これも仕事の一部と思い一緒にやっている。社長業では主に閲覧かサインをして判子を押すという仕事が主だったが、これはこれで良いと思いながらやっていたけど。

「蒼太、そちらはもうすぐ終わりそうか?」

「はい。やっとではありますが、活動報告をまとめているところです」

「こちらもラストスパートするか、はぁー。何か板について来たな、俺達」

と言いながらも手は動かす。愚痴を言ってもしょうがないと分かっているが、つい出てしまうのが人間の性みたいなもんだ。とりあえず深雪と合流するべく、課題を終わらせてから端末をログアウトしようとしたら、一件のメールが入っていた事に気付く。しかも学校のサインが入っていたけど。この意味は生徒に対して強制力を持つ指導あるいは通達のメールという訳なんだが、俺らに対してはあまり意味がないことを。俺らも一部では学校側からの指導をする役目もある訳で。無視する訳ではないが、一応見るかと思って受信メールを開くと、送信欄には「小野遥」と表示されていた。俺と蒼太は仕事を終てから、指示された場所へと行く事になった。

「急に呼び出してごめんね」

「いいえ。特に急ぎの用事はないですから」

カウンセリング室で、少しも謝罪していないような笑みで見る小野先生に対して俺も心のこもっていない社交辞令をする。あと蒼太はもちろんいるはずだが、メール内容には護衛者は部屋の外で待機という条件付きだったから蒼太は俺の後ろにはいない。まあ脳量子波も使えるから、蒼太がそれを受諾して外で待ってもらっているのだが問題が少々起きた。手伝いを約束したはずの委員長が断りのメールではなく、電話で謝り倒したあと予定以上の仕事を押し付けたからだ。深雪とは少し遅くなると言って今回は深雪と沙紀だけで帰ることになった。俺と蒼太はバイクになったゼロで帰ると言ったからだ。帰宅したあとに、深夜から何か言われるが問題はないだろう。でもなぜ俺がなのかは、蒼太も知りたいくらいなのだがカウンセラーなど受けたことがない。逆にこちらから受けたことはあるが、主に異性の相談とか同性の悩みとかは多く聞いてきた。

「どう?高校生活にはもう慣れたかしら?」

俺の内心を知ってか知らないのか、定番とも言える質問をしてきた。

「いえ、予想外の事が多すぎて、学業に専念できませんね」

一応先生と生徒と言う感じなので、俺が敬語を使わないといけない立場である小野先生だとは理解している。小野先生は苦笑しながら脚を組み替えた。小野先生の格好は丈の短いタイトスカートに、薄手のストッキングに包まれた肉感的な太ももが覗く。これは普通の学生だったら一発でやられるし、脚フェチの者にとってはたまらんだろうな。あと上半身のは胸元を大きく開いた淡い色のブラウスで、下着の線が見えるくらいの透明感がある。昔なら一般的でも今のマナーでは公の場では素肌を見せないというか、肌の露出を抑えることになっているとか。女子生徒も皆、スカートの下に素肌の色が透けない厚手のタイツまたはレギンスの着用必須という義務付けられている。校内において、成熟度は別にしたとしても、俺は別段珍しくも何ともない刺激的な眺めでもあった。

「・・・・どうしたの?」

と聞かれたので、目線を戻すと小野先生は悪戯っぽく問いかけた。普通の男子学生だったら顔を赤く染まるか、遠くからの発言をするだろうけど。俺には特に効果がないなとは思ったけど。小野先生より胸が大きな人は拠点にいるからだ。最も拠点の異空間にある創造した惑星の一つである「魔」には、巨乳な妃がたくさんいるからだ。サキュバスのシャムシェルにシャハル、ニンフの血が流れるルセリアに純血ニンフのセレブリアとか、名前挙げるだけだとたくさんいるが全員巨乳というより爆乳で母乳が出るほどで。しばらくいると乳係やら情事の順番やら、朝から夜まで搾り取られるという事もありあまり行かない。行くとすれば、様子見をするくらいなのだが、彼女たちにとっては日頃溜まっている性欲や乳が張るから母乳を出してくれとか。まあ今はいいや、ここに来る前に散々搾られたからな。

「百年前ならその格好をどうこう言いませんが、現代のドレスコードを照らすと小野先生の格好は刺激的ではありませんか」

「ご、ごめんなさい」

俺の目はに興奮の色はなく、というより慣れたというのが早い。そして動揺もせずに指摘されたのか、小野先生は慌てて脚を抑え、椅子に深く座り直した。小野先生の内心では、動揺を全くせずに本当に十六歳なのか疑問に思ったに違いない。あと蒼太にも、俺の目線をダイレクトに見ていたが蒼太も同じ気持ちになった。蒼太もあれぐらいでは動揺もしないし、昔と比べればと考えた方が早い。相手の動揺を誘うのは、話術に長けている者が主導権を握ろうとしたことで、王道的なテクニックだ。小野先生がこういう服をチョイスしたのもこのためだろ。そのための策に過ぎなかったが、俺には効果がなかったのか調子が掴めないでいた先生であった。

「それで本題に入りますと、なぜ私がここに呼ばれたのでしょうか?」

「今日は、織斑君に、私たちの業務へ協力をお願いしたくて来てもらいました」

「私たちの業務、ですか?」

知能が高いのは、入学試験の結果を見るだけでも理解はしていたのだろ。こうして的確に突いて来る応答は、ますます警戒をしてしまうくらいだ。あとは一筋縄にはいかないから、慣れない色仕掛けの真似事をしたのだろうがそれも失敗に終わった。

「ええ、私たち、カウンセリング部の業務です」

見抜かれているという直感が小野先生の意識がよぎった。でも今は「カウンセリング業務」という建前でやっているため、それ以外に取るべき道はない。

「生徒の皆さんの精神的傾向は、毎年のように変化しています。例えばですが、織斑君は上の人物に対しての一人称は『私』というふうにしてますよね。あとは『自分』という一人称を使う生徒もいますが元々、軍務志願者の割合が高い魔法科学生の間では珍しくないものでしたが、それでも、『私』や『自分』という一人称を使う生徒が一般的になったのは、三年前の沖縄防衛戦の勝利以来です。勝利というより国防軍に手を貸した組織がいたお陰で、犠牲もなく勝利したと聞いています。社会情勢の変化は、生徒のメンタリティーにも変化をもたらします。特に、大きな事件が起こった後は、同じ年代の少年少女とは思えないほど、物事や自分自身に対する考え方、考え方が変わってしまいます」

一旦言葉を切った小野先生は、俺の表情を窺っていた。俺は戸惑いもなかったが、小野先生の話をまるで過去のように聞き流していたけど。三年前の事は俺もいたし、手を貸した組織はソレスタルビーイングで俺自身も加わっていた。

「それで、毎年度、新入生の一割前後を選び出して、継続的にカウンセリングを行うために」

「なるほど。つまりモルモットみたいな感じですか。それだったら呼ばれる以前から協力はしますが、本当の目的は何ですか?」

微笑しながら、さらりと質問を返した俺。小野先生は動揺を押し隠すようにしていたけど、気で分かるんだよなー。

「・・・・本当の目的を隠しているって考えているの?心外だな。私、そんな性悪女じゃないわよ?」

あくまで軽く、冗談めかした口調は、相手を懐柔するためというより平静を失くした自分の心を悟られないためだった。

「サンプルにするには些か特殊すぎると、私は思いますが。それに外には護衛者がいますし、強い権限を持っていることは先生も存じ上げているはずですが?」

「私も織斑君が一般的な新入生とは思っていないわ。織斑家の事はある程度知っているのよ?後ろ盾である蒼い翼とか、あとは一科生と二科生の壁を乗り越えた最初の例になるのかもしれないけど、貴方が最後の例だとは限らないから」

「・・・・では、そういうことにしておきましょうか。蒼い翼についても知っていますし、元々そういうカウンセリングをしろと言ったのは理事長を始めとした者たちがそう進言したと聞きますしね」

小野先生側からしたら、説得に応じられて胸を撫で下ろした。でもここで一瞬だが、小野先生には疑問が浮かんだ。この学校の学校法人は国立魔法大学付属高校というより大学側からとは知っているが、理事長を始めとした何名かがこのカウンセリングを進言したというのはどういうことだろうかと思ったそうだが。

「私が未熟な所為で織斑君に不信感を持たせてしまったようで、遺憾に思うわ。・・・・じゃあ、いくつか質問させてもらってもいいかしら?」

「ええ、どうぞ。私に答えられる範囲で答えましょう」

警戒はあるが、時間が無限ではない事は分かっているので小野先生は準備していた質問を俺に順番に呈示した。カウンセラーはプライバシーを扱う仕事というのは熟知しているつもりだ。何しろ他の外史では、一時期カウンセラーをやっていたからだ。大隊長兼司令官の俺が、まあ部下の相談に乗れないのなら上司として失格だから乗った。そしたらいつの間にか隊員全員とカウンセラーという相談相手をしていた。相談内容はパソコンのデータとして残しておくが、データは俺のパソコン専用フォルダに入れてあるので俺以外は誰にも見られない。これを守秘義務ともいうが、その遵守はカウンセラーの根本的な職業論理だ。相手から相談を受けた事に関して、その解決の為に聴き取った事を第三者に漏らさないという性質のがあって小野先生の方側から協力を依頼したいという状況は学校外のプライベートまでは踏み込めないだろう。今の所聞かれているのは、入学してから今日までの学校について起こった事を、入学以来の騒動という小規模なとばっちりから大規模の事件までを俺本人の口から語ったのだった。

「・・・・ありがとう。それにしても、よく平気でいられるわね。それだけストレスが積み重ねれば、精神のバランスを崩す人だって珍しくないんだけど」

感嘆交りではあったが、まるで医師のような顔でそう言った。小野先生は精神衛生を専攻して医師の資格を得ているが、一真も医師の資格を持っている。手をかざすだけで、どこに異常があるのかを知ってからその部分に回復魔法をかければ何とかなる。近くに病院があれば応急手当としてだが、手術無しでガンを取り除いたり骨折をしたところを繋ぐところも可能ではある。あとは俺が先生と呼ぶのは、この学校のカウンセラーの先生でもあって今は生徒と教師と話してるという事だ。

「医学的にはそう見えるのでしょうね、ですが統計的なデータに例外はつきものですよ」

臨床データが統計処理の産物であることを指摘された小野先生は恥ずかしそうに目をそらす。それと俺は医師だけでなく、いろいろな免許や資格を持っている。医師の免許と言っても色々あるが、主に内科と外科を専門としているし。カウンセリングをするための資格もある、この外史より前のになるが。俺は壁掛け時計をチラチラと見ていると、慌てたように視線を戻した。

「えと、今日訊きたかったことは以上です。・・・・ところで、カウンセリングとは直接関係無いんだけど。二年の壬生さんに交際を申し込まれているって、本当なの?」

「100%関係ないことですね」

俺は呆れ顔をするが、小野先生は焦って言葉を繋いだ。

「相手が壬生さんだっていうから、少し気になって・・・・。詳しい事は話せないけど」

「他人のプライバシーを聞かれても困るだけですよ。それでそのデマはどこから流れたのですか?」

「デマ・・・・なの?」

「デマですが、何か問題でも?」

「いえ、何でもないのよ・・・・ううん、本当の事を言うと、もし織斑君が壬生さんと交際する気があるなら、お願いしたいことがあったの。でも、織斑君にその気持ちがないのならいいわ」

「交際を申し込まれる以前からそれがデマだと言っているのですが。それで、その話はどこから聞いたのですか?」

「ごめんなさい、守秘事項なの」

「まあそれがそうなのなら仕方がありませんね。本来ならそのデマを流した本人をとっ捕まえたいですが、まあいいでしょう。ではこれで失礼します」

俺はそれ以上追及したかったが、ここで力を使う訳にもいかないのでそのままスルーとなった。まあ女子の噂話はすぐに校内に広がると聞くし、随分前に言った外史の事だったけどな。そこは女子高だったが俺だけ男の身分で入学した事もあったな。追求する代わりに立ち上がりドアのところへ向おうとした。

「壬生さんの事で困った事があったら、いつでも相談してね」

その声音からは何か確信があったことだった。この先で何か困ったことがあると言っているようなもんだが、今はエガリテもブランシュも泳がせているからか。そしてドアから出たあとに風紀委員会に戻ったあとに頼まれていたことをさっさと終わらせるために、蒼太と二人で終わらせたのだった。 
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