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同じ姉妹

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第四章


第四章

「はい」
「あっ」  
 気付けば前にカルピスチューハイとピザが出された。両方共彼女の好物である。
「有り難う」
「これでいいかな」
「ええ。いいも何も」
 好物を出されたのでついつい話す。
「両方共大好きなのよ。よくわかったわね」
「たまたまだよ」
「たまたま?」
「うん。だから気にしないで」
 実は彼女が目でカルピスチューハイとピザをちらちらと見ていたことに気付いていたのだ。しかしそれはあえて言わないのであった。
「それはね」
「そうなの」
「まだいる?」
「今はこれだけでいいわ」
 こう答えるのだった。
「有り難うね」
「いいよ、御礼はね」
 また気さくに答えてきた。
「多恵ちゃんの笑顔だけで」
「またそんなこと言って。そういえば」
 今度は多恵の方から尋ねてきた。
「私の名前聞いたわよね」
「うん」
 多恵のその問いに頷いてみせてきた。頷いたその後にコーラを飲む。それからマカロニをナポリタンで味付けしたものを口に含んでいた。
「じゃあ。今度はそっちの名前聞きたいんだけれど」
「弓削っていうんだ」
「弓削?」
「そう、弓削純」
 彼はこう名乗ってきた。
「覚えておいてくれたら嬉しいな」
「経済学部の弓削君ね」
 学部まで言う。それは自分の頭の中に書き込む為に言ったようであった。
「わかったわ。覚えさせてもらうわ」
「そうしてもらえると嬉しいよ」
「それで弓削君は」
 また自分から尋ねた。チューハイのせいかどうかはわからないが彼女は普段より大胆になっていた。しかしそれは自分ではわからない。
「サークルとかは」
「バスケやってるんだ」
「そうなの、バスケットを」
「多恵ちゃんは何してるの?」
「陸上よ」
 またちゃん付けで呼ばれたが意識はしなかった。それどことか気付いてもいなかった。
「中学からしていたのよ」
「それでなんだ」
「そうなのよ。弓削君もそうなの?」
「まあね」
 にこりと笑って多恵の言葉に頷いくのだった。
「ずっとやっていたからね。それでなんだ」
「そうなの」
「サークルは楽しい?」
「楽しくなかったらやってる意味はないわ」
 笑って言葉を返した。これは多恵の本音だった。
「そう思うのだけれど」
「そうだよね。それはね」
 純の方も多恵のその言葉に同意して頷くのだった。
「その通りだよね」
「そうよね。じゃあそっちも楽しいのね」
「うん」
 その通りだった。
「楽しいよ。身体も動かせるし」
「それがいいのよね。家でも普段からランニングしてるけれどね」
「へえ、家でもなんだ」
 純はそれを聞いて少し驚いた感じになった。意外といった感じだった。
「それはまた真面目だね」
「二人でいつもね」
 さりげなくそのことも話す。
「走ってるのよ」
「そちらの人と」
「ええ」
 今答えたのは多恵ではなかった。千恵であった。
「そうなのよ」
「あっ、双子の人だね」
 純にはすぐにわかったのだった。誰かも。
「もう一人の」
「そうよ」
 千恵は急に話に入ってきた。そんな感じだった。
「千恵っていうの」
「千恵ちゃんだね」
「そうよ。よかったら」
「そうだね。宜しくね」
 彼女に対しても明るい声をかけるのだった。だがその声の色もそれを出す表情も多恵に向けたものとは少し違う。微妙な違いであった。
「それでさ」
 また多恵に顔を向ける純であった。
「多恵ちゃん」
「ええ」
 彼女に顔を向けてその名を呼ぶのだった。
「そのピザ美味しい?」
「ピザなの」
「うん、どうかな」
 それを彼女に尋ねるのだった。見れば千恵も同じようにピザを自分の席の前に置いている。カルピスチューハイがあるのも同じだった。
「美味しい?」
「うん」
 純のその言葉に頷く。多恵がであった。
「とてもね」
「そう。だったらさ」
 多恵にまたピザを出してきた。それを食べるように勧める。
「じゃあさ。もう一枚どう?」
「もう一枚なのね」
「そうだよ。もう一枚ね」
 またそれを勧めるのだった。ついでにカルピスチューハイも。
「これもね」
「チューハイも」
「今度のピザはね」
 話はピザに移る。見れば今まで彼女が食べているピザとは具が違っていた。さっきのはトマトとベーコンだったが今度のは海老のピザだった。
「海老なのね」
「そうだよ。海老いける?」
「ええ」
 今度も答えたのは多恵だった。千恵はその横で俯いていた。見れば彼女は自分で海老のピザを取り寄せていた。それを一人で食べている。
「海老も好きなのよ」
「海老もね」
「そうなの。シーフード好きだから」
 それを純に話すのだった。
「だから。有り難う」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。さあ」
 そう言いながらそのピザを勧める。
「食べて。それで飲んで」
「飲むの」
「カルピスチューハイもいいよね」
 そちらにも話がいく。やはり多恵は飲むのならカルピスチューハイだった。他にも好きなものはあるが実はどれも甘いお酒である。これは千恵も同じ好みなのだが。純が見ているのは彼女だけだった。
「ええ。有り難う」
「どんどん楽しんで。さあ」
 言いながら今度はマイクも差し出してきた。
 
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