旧エクリプス(ゼロの使い魔編)
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第19話 ルイズ生誕
ブリミル暦6226年 ウルの月 ティワズの週 虚無の曜日
皇紀2784年 5月25日 トリステイン王国 ラ・ヴァリエール公爵領 本邸
Side ラ・ヴァリエール公爵
応接室にて、椅子に座る一人の30代の男性がいた。彼こそがトリステインの重鎮であるラ・ヴァリエール公爵である。金髪に口髭をはやし、左眼に片眼鏡をはめ、威厳に満ちていた。
この度、三女のルイズが生まれ、トリステインの貴族の方々が御祝いに多数、駆け付けているのであった。
光輝もその一人である。
「コウキ・イチジョウ様お見えになりました。」
執事のジェロームが公爵に、用件を伝える。
「ここに、通せ。」
今まで、辟易していた公爵の表情が消え、普段の表情に戻った、いや少し楽しげに見える。トリステインの貴族は、ゴマすりをする者が多くて、下心があからさまで、うんざりしていたのである。
その点、光輝は違う。自分の利益ばかり追求する者達と違って、共に繁栄する様に考えて、行動しているのが分かるのだ。
「コウキ・イチジョウ様をお連れしました。」
ジェロームが光輝を案内して来た。
「おぉ入って其処に、座ってくれ。良く来てくれた。
会うのは昨年のアンリエッタ様がお生まれした時、以来だな。」
「はい、公爵様もお元気で何よりです。この度は、三女のルイズ様がお生まれた由、お祝いを申し上げます。こちらがお祝いの品になります。」
贈物の目録が渡される。
「いつも、気を使わせて、すまんな。特に紙オムツを妻のカリーヌがいたく気に入ってな、その後にエクリプス商会に、注文したら平民でも買える値段に驚いていたぞ。ククッ・・。」
公爵は、妻が驚いた顔を思い出し、笑いを堪える。
「我が国では、身分に関係なく人気商品です。」
「其方は、変わっておるなぁ。普通の貴族なら、あんな安物を贈らん。」
「はい、そうですね。金額の安い高いは、気にしません。贈って喜ばれる物を贈ります。我が国では、身分の差がありません。高貴な者は、それだけ責任がありますが、身分をひけらかすことは、ありません。」
「何となく、得心が行った。其方は、高価な贈物しても貴族の様に、媚び諂う事も鼻に掛ける事もしない。しかし、高貴さを持っておる。そうだ、其方は独身か、いや妻がいても問題ない。儂の娘を側室でも構わん。貰ってくれんか。」
「私には、孫が居ります。それに我が国では、親が決めた許婚も在ることは在りますが、我が家系では、本人の自由にさせております。」
「孫ッ、其方は何歳だ。孫がいる様には見えん。」
「80歳を越えております。我が家系は、長寿です。文献によれば500歳を越えた者も、過去にはいたと記されております。この度の贈答品の中にも、王家に献上品と同じ長寿の秘薬が含まれています。この秘薬は、300歳ぐらいまで、寿命を延ばします。しかし、不死ではありません。病気や怪我もします。それが原因で亡くなる事もあります。
これは、ご内分にして下さい。王家の血筋を守る為の献上品で御座います。国王陛下にも内密にお伝え下さい。」
「・・・分かった、伝えよう。それで、相談があるのだが・・・。
次女が病がちでなぁ、長寿の秘薬がある、其方の国なら病に効く秘薬はないか?」
「万能な薬は、存在しません。しかし、病によって薬はあります。」
「私くしの孫が、病気の専門家です。水系統のスクェアメイジです。
孫にカトレア様を診察させましょう。本日のパーティーに連れて来ています。」
「あぁブリミル様のご加護か。なんたる天の配剤。」
「早速、執事かメイドに呼ばせましょう。」
「分かった。」
公爵は、呼び鈴を鳴らす。
「はい、旦那様。」
執事のジェロームが現れて返事をする。
「光輝殿のお連れのお孫さんを呼んでくれ。」
「はい只今、直ぐに呼んできます。」
ジェロームは返事をすると、控え室に呼びに戻って行った。
暫くして、孫を連れて来る。
「旦那様、只今お連れしました。」
ジェロームの後には、3名の男女が立っていた。
「公爵様、紹介します。一番上が今、話しをしていました。長男の晃・一条です。15歳でこの年でも医者の免状を持っています。
二番目は、長女の望・一条です。12歳です。
最後は、次男の司・一条です。8歳です。
晃は、公爵様の次女のカトレア様の診察を。望は、その手伝いを。司は、控え室に戻っていなさい。」
光輝は、孫達を紹介しながら指図をする。
3人は、挨拶を済ませると、ジェロームの後に続いて退室をする。
「儂も行ってくる。」
「公爵様、男親が子供とは言え女の子ですよ。診察の邪魔でしかありませんよ。直ぐには治療しませんし。ここで待ちましょう。カトレア様には、望も付いているし、メイドも側に付いているでしょうから、大丈夫です。それから、公爵様へ私くしからのお願いもありますから。」
公爵は、渋々納得する。
「それで、其方の願いとは、何だ。」
「まずは、これを見て下さい。」
光輝は、一枚のハルケギニアの地図を出す。
「これは、ハルケギニアの地図だな。詳細に書かれているな。この青く塗られているのは、何だ。儂の領地も青く塗られておる。」
「はい、これは上空から観測した。風石鉱脈の分布図です。」
「何と!この地の地下にも風石鉱脈があるのか、喜ばしい。」
「そんな単純な話では、ありません。まず風石鉱脈は、地下の1,000メイル(約1,000m)の深くにあります。また、地震などで風石鉱脈が一斉に励起したら、アルビオン王国の様に、ハルケギニアが浮遊する可能性もあります。」
「そっそれは、大変じゃないか!」
「慌てないで下さい。今すぐに起こるとは、限りません。幸いな事に、アルビオンより、地下深くにあります。大地が重石となって、6,000年無事じゃありませんか。1,000年単位の話です。もしかすると、1,000年後に浮き上がるかもしれません。という事です。それに我が国には、1,000メイルの深さでも採掘出来る、技術があります。」
「・・・そうか。」
「採掘は、エクリプス鉱業が行います。採掘の権利を売って下さい。7割でどうでしょう。」
「風石の相場は、5割何だが仕方ないか・・。」
「いえ、7割が領主の取り分で、3割がこちらの取り分です。余剰分があれば、適正な相場でこちらで買い取ります。そのまま市場に放出すると、風石価格が暴落します。こちらで買い取りますので、トリステイン王国の国力増加になります。
その余剰金で国土の開発を行えば、今の国力の何十倍かになります。風石をただ売れば、一時的に収入が増えますが、国土を開発すれば、永続的な収入になります。」
「惜しいな、其方の才覚があれば、トリステイン王国は、繁栄出来るのに・・・。」
「いえ、公爵様が率先して開発を行えば、他の貴族達も見習いましょう。」
「分かった、国王陛下にも進言しよう。」
話が一段落した所で、晃達が戻って来た。
「旦那様、晃様達がお戻りになられました。」
執事のジェロームが報告をする。
「どうであった。」
公爵は、期待する表情で晃に、問い掛ける。
「結果から申しますに、カトレア様は良くなります。」
「おぉそうか!」
公爵は、威厳に満ちた様子から、一変して親として歓びを表す。
「遺伝病です。簡単に言うと、生まれ付きに病弱でした。
秘薬を使うと一時的に、症状が良くなりますが、暫くするとまた悪くなります。例えるなら、生まれ付き目が見えない子供は、高価な秘薬を使っても治りません。あくまで、秘薬と魔法は健康な体にするのではなく、元の体に戻そうとするだけなのです。
お祖父様、公爵様、フネに戻って薬を調合してきたいと思いますが、パーティーの時間までには、戻ります。」
晃は、光輝と公爵に許可を貰い一時退席をする。
Sideout
その後、治療が済み、ラ・ヴァリエール公爵一家は、歓びに包まれるのである。晃は、その後も暫くラ・ヴァリエール公爵家に滞在して、料理人に栄養指導をし、マザーのデータベースから料理のレシピをダウンロードして、美味しくヘルシーな料理を教えた。
晃は、カトレア・フラグを立てたか、立てなかったのか。
後書き
ルイズ生誕の話でした。
序でに、カトレア病弱フラグとハルケギニア厄災フラグを折りました。
原作開始まで、後16年です。
ハルケギニアの1メイルは、約1メートルです。
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