儚き運命の罪と罰
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第四話「ジュエルシード」
前書き
さて...日常ほのぼのは唐突に終わりを告げる...
…で?これが『全てはガイアスの為に』か?」
「ええそうです。」
あれから数日がたった今でも相変わらずリオンは(様々な意味で無駄な)勉強をしていた...ここ数日ですっかり気に入った菓子パンを片手に。
「傍目に見れば熱心なんだけどね...」
「だけどあれじゃあ意味ないんじゃあ...」
「(聞こえているぞ、二人とも。)」
怒った口調の念話をリオンが二人に対して飛ばしてきた
「うわっ!?」
「(いきなり送らないでよ!びっくりするじゃないかい!)」
とアルフも同じように返した
この数日の間に判明したことだがリオンは魔道士ではないがリンカーコア・・・Bランク位だろうか?があったことだった、それも驚くに値することだったが
(もう並列思考も完璧...念話は割とすぐに誰でもできるけど魔法に触れたての人間が三つもの並列思考ができるなんて...信じられない)
(とんでもない才能だよ。しかも三つて言うのはあくまでも『魔法』関連だけだからねえ。アイツの得意な剣術とあのとんでもない魔法みたいな奴...『晶術』だったっけ?そっちの方ならもっと使えるわけだろ?)
今はリオンにはデバイスは無いが、もしまともなデバイスがあったとしたら...無論それだけでフェイトに並ぶことは有り得ないだろうがそれでも即席の魔道士とは思えない程の強さを持てるだろう。
それは才能と言うよりリオンがどれほど多くの死線を潜り抜けたかと言うことだ、さっきも言った様にそれだけで魔道士としての才はフェイトに並ぶべくも無いがその『経験』において絶対的なアドバンテージがリオンにはある、
リオンは15歳でフェイトは9歳。
その差6年は人生80年から見たら決して長いわけではない、だが仮にその差をフェイトががむしゃらに努力をしたとしてもその間リオンが今と同じ場所で立ち止まっている保証は無い。否、リオンの性格を省みれば怠けて立ち止まっていることのほうが確立として低いだろう。
現に今も(無駄かもしれないが)言葉の勉強をしている。
(それが先輩ってことなのかな?すごいなあ...)
感情を表に出すことは・・・と言うか物事を深く考える事の経験がまだ少ないフェイトも舌を巻かずにはいられなかった。
…そろそろ休みをいれましょうか。ジュエルシードを探す必要もありますし。」
「ん...そういえばもうこんな時間か、ほら。」
そういってバルディッシュをフェイトに渡した。
「あ、どうも...。」
「さて...僕が来てからまだ反応が反応が無いんだったか?」
「探しちゃあいるんだけどね...この所中々見つからなくて。」
肩をすくめながらアルフが言った
「そうか。」
無感動にリオンが言ったその時
「!...噂をすれば何とやらってことかい?これは」
「ジュエルシード...!」
薄目でいたリオンはシャルティエを腰に指した。
「そうか...この違和感がか。」
彼にまだ探知はできない、それでも培ってきた勘がその違和感を教えていた。
「さて、行くとするか。遅れをとるな...よ?」
「?どうしたんですか?リオンさん。」
「...いや、何でもない。」
「そうですか、それでは行きましょう。」
この間も言っていた通り時間が無いんです、と言ってスタスタと歩いていった。
フェイトの声はどれも余りに平淡だった。
「...あれは、どう言う事だ?」
確かにリオンもこれまでフェイトのことを無表情だとか思ってはいたが
あのような声を聞いたのは今が初めてだった。
「アンタが来て少しはマシになったと思ったんだけどねえ。」
「...ふん、どうでもいい。僕たちも行くぞシャル。」
「了解ですよ、坊ちゃん。」
リオンも後について行くように歩いていった。
「あれが暴走体か...?」
「ええ...そうみたいです。」
目前と言うか...頭上に居たのは巨大な鳥、そいつはよもや『怪鳥』とでも言うべき巨大さでその巨体に似合わぬ優雅さで空を舞っていた
「イメージとしては大差ない...か。」
ジュエルシードの暴走体の話を聞いたリオンが思い浮かべたのはかつて自分が戦っていた『魔物』だった。
「まあいい、行くぞシャル。」
「任せて下さいよ、坊ちゃん。」
ここに来るまでにフェイト達と相談して決めた事がある。それは探索、封印が出来ない(と言うよりまだ覚えていない)代わりに戦闘能力の高いリオンが戦闘を行い残りの二つをフェイトに任せると言う役割分担だった。それにのっとって
「キェェェェェ!」
「フン、僕の前に立ちはだかる事、後悔するがいい。」
開戦、その直後
「キェェェェェェ!」
一陣の暴風が吹き抜ける。はばたいて高空に飛び急降下してリオンに襲い掛かった、
それに対抗してリオンは
「双牙斬!」
素早い空中に対する二段の斬撃でもって応戦する。
(攻撃一つ一つはさして対したことは無いな。)
イクティノス、シャルティエと同じソーディアンで風の晶術を得意としていたのだがそれに比べれば先の風もそよ風だった。
一応様子見としてかなり手加減して戦っているが、
「これでも僕が優位か、もういい、その程度でしかないのならこの戦いはもう終わりにする。」
そう言って鳥の上に飛んだ。・・・その動きはこの地で『天狗』と呼ばれる者のように恐ろしく俊敏だった。
深々とシャルティエをつきたてた。
「キェ!?キェェェェェ!!!」
暴走体は悶え苦しんだ、
それを見て楽しむような趣味はリオンは持ち合わせていないので
「終わりだ...月閃光。」
三日月の軌跡を描く剣であっさりと終わらせた。
「終わったぞ、さっさと封印したらどうだ?」
「あ...はい。」
フェイトが歩いていった。それを傍目に見つつシャルティエと現状を確認する
「鈍ってはいない見たいですね坊ちゃん。」
「まあな...しかし拍子抜けだ。まさかあの程度とは。もう少し強いと思っていたがな。」
まあフェイトが今まで滞りなく集めていたようなので自分が苦戦することはないとリオンも思っていたが
「下手をすればセインガルドの辺りの魔物の方が手強かったぞ。」
「まあそれだけ平和だって事ですよ坊ちゃん。」
話に熱が入り始めた・・・・・・
そんな時
「フェイトちゃん!?」
純白の服を着た少女...いや魔法をかじった程度のリオンでもわかる溢れんばかりの魔力が彼女が只者でないことを示していた。そしてその存在を象徴する服の如き鎧...バリアジャケット。
まぎれもない、魔道士が其処にはいた。
予想外の登場にリオンは少しばかり顔をしかめる。遠目に見てもフェイトの体に若干の力が入るのが解る。
どうやらフェイトと顔見知りで、向こうが自分を見てキョトンとしているのが気にはなったがそれによって与えられる時間はリオンにとって有効活用できるものだった。
答えなど聞くまでも無いがそれでも一応念話で聞く
「(オイ、あれはなんだ?お前の味方か?)」
「(私と同じジュエルシードを集めてる魔道士で...私の敵。)」
それだけ聞ければリオンに取っては充分だった...が
「(待って。)」
そうフェイト本人が待ったをかけた。
「(何?)」
思わず聞き返す、
「(彼女とは...わたしにやらせて。)」
振り返りもせずにリオンは言った
「(ふざけるな。さっき決めたことすらも守れないのかお前は。三歩歩けば忘れる鳥と似たようなものではないか。)」
だとしたらお前と僕の間に信頼関係など有り得んな...もしこれが念話での会話でなければリオンはそう吐き捨てていたかも知れない。
「(ちょっとアンタその言い方は)」と言うようなことをアルフが言った気がした
その時にはすでに黒い残影が敵対するもう一人の魔法少女に襲い掛かっていた
「きゃああ!?」
ガキィッと無機質な感触がリオンの手に伝わってきた、少女は勢いよく後方に吹き飛ばされた
「...防御の魔法か。」
余談だがリオンに魔法を教えていたのはフェイトだ。彼女もまた魔法に触れ始めたから解ったことだが強大な魔力を持っていた、そのため実に様々な魔法をリオンにも披露してくれた...その中には魔力で障壁を張る防御の魔法も存在した。今リオンの手に伝わってきた感触はその時フェイトに言われてためしにその障壁を(勿論弱い力で)攻撃した時のそれに瓜二つだった。
「強度はアレより強いみたいですね坊ちゃん。」
「ああそうだな。」
どうも動きはフェイトに比べて素人臭いのがリオンには引っ掛かったが防御魔法の強度だけを見ればフェイトより優秀だった、油断無く構え下手な追撃をしないで身構える。
「坊ちゃん!」
無数の桃色の魔力弾がリオンに襲い掛かった
「い...いきなり何するの!」
いきりたった口調でリオンに吹き飛ばされた少女は言った。
「何と聞かれてもな、敵にそれを言ってやる義理は無い。」
再びシャルティエが閃いた、魔力弾は力を失って弾ける。
「なっ!?」
計らずも少女の目は大きく見開かれる。
ガキィッ
さっきと瓜二つな音が響いた、
「つぅ...ありがとうレイジングハート。」
咄嗟に障壁を張ったのは彼女ではなかった。
「礼はいりません...それより、来ますよ。」
すでにリオンは次の攻撃の態勢を整えていた
(ショートレンジじゃあ絶対に私が不利...ううんそうでなくてもそもそも間違いなくフェイトちゃんや私よりも強い。)
そう悟った彼女は大きく交代して距離をとり
「アクセルシューター!」
さっきと同じように数発魔力弾を飛ばす。
「!」
「坊ちゃん!」
ダァン、ダァン、
そう小気味いい着弾音をあげた
「ふぅ...」
少女は安堵したのか息を少し吸う
それが命取りとなった
「どこを見ている?」
真後ろからそんな声が聞こえた
「なっ!?」
「遅い...魔人闇!」
凄まじい勢いで紫の光線がシャルティエから放たれた
最初の一閃からその次の一撃まで防いだ障壁...プロテクションも『魔人闇』のまえには紙切れのように無力だった、それを相手に直撃させないよう当たる寸前で止めて燕のように身を翻して右手の短刀の柄で一撃を与える。
ガッと言う鈍い音を立てて突き飛ばされた少女は近くの金網に叩きつけられた。
「僕の勝ちだ。」
命のやり取りの経験がないものにとってゾッとするほど冷たい刃で彼女の首を撫でた
「ヒッ!ああ...」
(やはり...か。)
防御の魔法の錬度が高いのに動きが妙に素人臭かったのもこれで納得した。
「・・・・」
「ほう、主人よりもデバイスのほうが物分りがいいとはな。」
レイジングハートと先程少女に呼ばれていた杖はジュエルシードをリオンに渡した(その体から出した)
「持っていけ。」
短く言ってそれをフェイトに放った。
「え...あ。」
少しぼんやりしていた様だったが、それでもしっかりとそれを掴んだ。
「バルディッシュ...。」
「了解です、サー。」
既に用も無くなった其処から去ろうとした、その後姿に
「待って!」
まださっきの恐怖が残っていて足は震えている様だったがレイジングハートを文字通り杖にして立っていた。
「話を聞かせて!」
一瞬だけフェイトが振り返ったが...直ぐに彼女に背を向け去った。
「話を...聞かせて...。」
その声に応じるものは既に其処には誰もいなかった。
後書き
ふう...やっと更新できた...
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