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小ネタ箱

作者:羽田京
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東方
  共産主義という名の妖怪

 
前書き
・共産趣味に興味がある方にお勧めの小説。
①朱き帝國(小説家になろう)
②れっど あらーと~赤軍異世界革命記(小説家になろう)
③あかひま~赤き向日葵~風見幽香の革命(pixiv) 

 
『一つの妖怪がヨーロッパにあらわれている――共産主義と言う名の妖怪が』(マルクス・エンゲルス『共産党宣言』序文)





 Урааааааааааааааааааааааааааааааа!!


 地響きのように、ウラー!と大声をあげて、地平線を埋め尽くすような数の兵士が突撃してくる。
 種族は様々だ。
 人間はもちろん、妖精、吸血鬼、人狼、エルフ、ドワーフ、鬼、天狗などなど。
 ありとあらゆる種族に加えて、人間とのハーフやクオーターも多くいた。
 そろいの軍服を着こんだ彼らは、赤地に黄色の交差する鎌と槌、星を象った旗を持っている。

 
 こちらの軍勢は、執拗なまでの事前砲撃によって崩壊寸前だ。  
 アサルトライフルを構える敵に対して、こちらは刀や竹やりで武装した人間たち。
 いまだに余裕を見せている大妖怪だけが、頼りだった。
 絶望的な状況でも、彼女は諦めない。
 なぜなら、ここは愛する我が子のような箱庭なのだから。
 その箱庭の名前は「幻想郷」。
 人と妖怪が暮らす楽園は、いままさに滅亡の危機に瀕していた。
 妖怪の賢者と呼ばれた彼女――八雲紫は、必死に抵抗を続けるのだった。





 レミリア・スカーレットは転生者である。
 彼女がもらった転生特典は5つ。
 頭脳チート、身体チート、王の財宝、カリスマEx、黄金律Ex。
 彼女の願いはただ一つ。


「幻想郷を赤く染め上げたい」


 彼女は、共産趣味者だった。
 手始めに国を作った。その名も、


「ソビエト社会主義幻想共和国連邦」


 略してソ連である。
 科学的で偉大な共産主義の教えのもと、人間と妖怪の全てが平等に暮らせる国を作りたかったのだ。
 あと、そうすれば、幻想郷も革命できると考えた。
 最初、たった100人ぽっちの村でしかなかった。
 そのソ連は、500年の時を経た21世紀には、人口15億2500万人を数える世界トップの超大国になっていた。
 民族という観点でいえば、人造国家であるソ連の歴史は長くない。
 しかし、国家という観点からいえば、500年以上栄え続ける化け物国家である。


 彼女のしたことは簡単だ。
 まず、魔女裁判などで迫害された人間や孤児などを引き取って国民にする。
 人間に友好的な妖怪や、忘れ去られて消えそうな妖怪を引き取る。
 史実ソ連の支配領域に重なる様に領土をぶんどる。
 カリスマチートにより、人間と妖怪を仲良く共存させる。
 頭脳チートや金運チートによって、常に内政チート状態。
 すると、あら不思議。
 笑っちゃうくらいの勢いで、国は成長し、人口が増えていった。
 さらに、妖怪や混血児は寿命が長かったことも拍車をかけた。


 妖怪の持ちたる国。
 ソ連が、世界で唯一の妖怪の国であることは、誰もが知る常識である。
 国内では、人間と妖怪が共存し、繁栄している。
 しかし、周辺の人間諸国にとっては脅威だった。


・資本主義を否定する共産主義。

・民主主義を否定する一党独裁。

・宗教を否定する科学的社会主義。

・人類の脅威となる妖怪たち。


 敵対する理由としては十分である。
 また、建国以来鎖国を続けたことも不気味だった。  
 資本主義陣営、民主主義国家、宗教勢力、人間至上主義者。
 周辺諸国は、団結し、対ソビエト包囲網を形成した。
 世界一の国土をもつソ連は、敵対国家にぐるりと囲まれている。


 それでも、大規模な戦争にならなかったのは、ソ連の国力が圧倒的だったからである。
 過去に何度も、侵略されたが、すべてにおいてソ連は圧倒的な勝利を収めてきた。
 それなのに、彼らが賠償を請求したことは一度もない。
 だからといって、友好的でもない。徹底的に外との交流を禁止していた。
 ゆえに、ソ連の実情を知る者は少ない。
 各国は、必死になってスパイを送り込もうとしたが、全て失敗した。
 CIAやMI6(現SIS)ですら、一度たりとも成功しなかった。
 彼らは、この恐るべき防諜力を「モスクワの赤い霧」と呼んだ。


 それとは反対に、ソ連は世界中にスパイ網を構築していた。
 民衆は、KGBの諜報員たちによって意図的に流布された「ソ連は恐ろしい国である」という噂を信じた。
 かくして、ソ連VS世界という構図が描かれたのである。
 この奇妙なにらみ合いを、人々は「冷戦」と呼んだ。
 

 実は、ソ連は、裏で人間国家や宗教勢力が敵対するように仕向けている。
 その理由は、ソ連への「恐れ」を、妖怪の糧とするためだった。
 文字通り、「地上の楽園」となっているソ連をそのまま紹介すれば、恐れなど吹っ飛んでしまうだろう。
 だからこそ、ソ連は外国との交流を禁止し、「閉鎖的で恐ろしい国」だと思わせるのだ。
 そのような裏事情など知らず、今日も世界は、ソ連を、妖怪を、恐れている。
 いつか世界が革命されてしまうのではないか、と恐怖するのだ。
 恐れを食べた妖怪は力を増し、強くなった妖怪をさらに恐れる。
 そんな、好循環が出来上がっていた。


「お姉さま、また妖怪の失踪事件が発生しました」


 扉を開けて、クレムリンの執務室に入ってきたのは、10歳ごろの容姿で、背中の羽に無数の宝石を下げた少女。
 500歳を超える吸血鬼、フランドール・スカーレットKGB長官である。
 人間ならばとんでもない長寿といえるが、妖怪の中では若手と言えた。


「はあ、またなの?私たちソ連に喧嘩を売るなんて、いったいどこの誰かしら?被害者が、無事に帰ってきているのだけは、不幸中の幸いね。記憶を失っているけれど」


 フランドールに答えるのは、ソ連のトップ、レミリア・スカーレット書記長である。
 彼女も吸血鬼であり、背中には蝙蝠のような翼があった。
 ソ連を建国したカリスマ的独裁者である。
 「赤い皇帝」と畏敬を込めて呼ばれていた。
 妹のフランドールを猫可愛がりしている彼女は、妹の姿に目を綻ばせるも、すぐに、きりりとした表情を作った。


「あなたたちKGBでもわからないのね?」

「ダー(そうです)。目撃者が大勢いる中、こつ然と姿を消すそうです。おそらく、何らかの魔術によるものだと思われますが、痕跡が残されておらず、調査は難航しています」

「同士パチュリーは何と言っているのかしら?」

「転移魔法とはまた違うようだと言っています。いま、現場を回って詳細な調査をされています」

「同志こいしの方は?」


 古明地こいし内務省(NVD)長官。
 彼女は、人の心が読める、さとり妖怪である。
 紆余曲折を経て、フランドールの忠実な下僕となっていた。
 彼女に褒められたいがために、秘密警察を率いて、国内の反乱分子を嬉々として粛清している。
 心の声が聞こえる彼女は、尋問にぴったりである。
 が、あえて拷問することも多い。
 レミリアは密かに、隠れサド、と呼んで恐れている。
 トラウマなんてなかった。


「やはり調査中です」


「そう、ありがとう。苦労をかけるわね」


 苦笑しながら、ねぎらう。


「ニェット(いいえ)。そんなことはありませんわ、お姉さま。いまの仕事には、やりがいを感じています」


 ふわり、と笑いながら頼もしい言動をするフランドール。 
 フランも立派になったわね、と、レミリアは、訳もなく嬉しくなった。
 泣く子も黙るスパイ機関である国家保安委員会(KGB)の長官である。
 対外諜報活動を一手にになっており、レミリアに次ぐ権力をもっている。
 少しでも彼女の機嫌を損ねれば、ルビヤンカの地下送りかシベリアに流刑にされるといわれ、恐れられていた。
 とはいえ、あまり粛清しすぎないように、レミリアは気を付けるようにしている。


 そのフランドールは、生まれたときから強力すぎる能力を持っていた。
 さらに、悪いことに狂気におかされてもいた。
 両親は、そんな彼女を殺そうとした。だから――


「もう、家を出て500年かしらね」


 ――家出した。フランドールを連れて。
 楽な旅路ではなかったが、妹とともに根気強く狂気を抑えようとした。
 旅の途中で仲間になった魔女パチュリー・ノーレッジや武闘家である紅美鈴の協力を得て、やっと日常生活を送れるようになった

のだ。
 100年以上かかったが、嬉しそうに笑うフランをみて、彼女は幸せだった。
 フランドールも、常に自分に味方してくれた優しい姉を心から愛していた。
 

 というか、愛しすぎていた。


 レミリアの失くしたぱんつが、フランドールの部屋から大量に見つかったり。
 配下のKGB職員に命じて、四六時中レミリアの盗撮と盗聴をさせていたり。
 部屋の壁という壁にレミリアの盗撮写真を貼っていたり。
 レミリアを批判した人間や妖怪を、ルビヤンカの地下に送って拷問したり。
 どうもてもヤンデレです。本当にありがとうございました。
 ちなみに、ブラはなかった。理由は(察し)。


 当のレミリアは、前世でヤンデレ好きだったために、意外とこの状況を楽しんでいた。
 フランドールの行動を咎めるどころか、愛なら仕方ないね、といって周囲を呆れさせている。
 誰もが認める仲良し姉妹だった。
 それでも、レミリアにも悩みはある。
 前世は男だった。だから、男と付き合う気は毛頭ない。
 じゃあ、女は?というと、ありかも知れない。
 が、相手が妹というのはNGだ。近親趣味はない。
 フランドールの性的なアプローチとの戦いは、まだまだ続きそうだった。 


「あっという間でした。偉大なるソ連を建国してからは、もう無我夢中で」

「ふふふ、まさかここまで大きくなるとは思ってなかったけれどね」


 しみじみと昔話に花を咲かす。
 仕事の疲れが癒されるのを感じながら、自分の選択は間違っていなかったと再認識した。
 その最中、水を差すような言葉が耳に入ってきた。


「あと、世界革命までもうすぐですね!」

「あー、同士フラン?別に、私はいまのままで満足しているわ」

「お姉さまは優しすぎます。資本主義の豚どもや、資本主義に魂を売った修正主義者という悪魔どもを粛清し、革命を輸出することで、いまこそ万国のプロレタリアートの楽園を作るべきです!世界の全てはお姉さまの前にひれ伏し、真の救済を得るのです!世界は全てお姉さまのもの。お姉さまが何をしようと誰が咎められるでしょうか」


 思わず頭を抱えそうになった。
 あくまでも、共産趣味者だったレミリアは、共産主義に幻想を抱いていない。
 しかし、さすが史実で世界を二分した麻薬のような思想だけあって、共産主義に傾倒するものは多かった。
 このソ連という共産主義によって栄えた大国があるのだから、無理もない。
 無理もないが、妹が共産主義にここまで傾倒するとは、予想外だった。
 KGB長官として辣腕をふるう彼女は、過激派の元締めになってしまったのだ。


 さらに、史実のスターリンやレーニンのようにレミリアへの行き過ぎた個人崇拝も加わる。
 ソ連の都市には、必ずレミリア像が立っている。学校の教室には、必ずレミリアの肖像画がある。
 独裁者の宿命かもしれなかった。


 この過激派が、フランドール一人だったらまだよかった。
 問題は、彼女以外のソ連の幹部にも過激派が多いということだ。
 下僕、あの花妖怪やきゅうりマッド、バカ妖精のせいで、妹が染まってしまったのだ。
 と、彼女は思っているが、実際はフランの方が感染源である。
 事あるごとに過激な主張をするようになったフランドールを見て、レミリアは、ひっそりと涙を流した。





「最近、外からの妖怪が多いわね」


 博麗霊夢は、縁側でお茶を飲みながら、のんびりとしていた。
 脇がない巫女服というパンクなスタイル――つまりいつも通りだった。


「ああ、『拉致だ』とか『国に返せ』とか言う連中ばっかりだよな」 


 つぶやきに答えたのは、とんがり帽子をかぶったいかにもな白黒魔女、霧生魔理沙である。
 ここ最近、幻想郷に入ってくる妖怪が急増していた。
 外と内を隔てる博麗大結界の維持に関わる霊夢は、嫌な予感がしていた。


「外の国、えっと、なんだっけ」

「『ソビエト社会主義幻想共和国連邦』だってさ」

「そうそう。よくそんな舌をかみそうな名前を憶えているわね、魔理沙」

「里に行ったとき、外来人に聞いたんだ。なんでも、人妖が共存している珍しい国らしい」

「勝手に国民を浚って大丈夫なのかしら」

「だめだろ」


 人間と妖怪が暮らす楽園。
 それが、幻想郷であり、霊夢は、「楽園の素敵な巫女」の役割を担っている。
 すなわち、幻想郷を守ることが彼女の仕事といえた。
 その幻想郷が危機に瀕しているような予感が、ずっとするのだ。
 突然増えた外の妖怪。これが原因かもしれない。


「その通りですわ」

「うおっ、びっくりした。突然出てくるなよな」

「何の用かしら、紫」


 突然、姿を現したのは、八雲紫。
 幻想郷の創始者にして管理者であり、神出鬼没の隙間妖怪である。


「最近、外からの妖怪が急増しているのは、知っているわね。博麗大結界はどうなっているのかしら?」

「誤作動しているわね」

「……なぜそう思うのかしら?」

「勘よ」


 にべもない答えに面をくらう紫だが、いつものこと、と流した。
 それに、この巫女の勧はよく当たるのだ。


「そうね。この問題は、私の愛する幻想郷の存亡の危機なのよ」

「そんなヤバイ話なのか!?」


 いきなり始まったスケールの大きい話に、魔理沙は驚く。
 そんな彼女に、やんわりと紫が言う。


「迷い込んだソ連人は、記憶を消したうえで、私の手で帰しているわ。だから、いまはまだ大丈夫」

「でも、いつか気づかれる日がくる。でしょう?」

「霊夢の言う通り。ソ連にバレたら――」


 ごくりと唾を飲んで、魔理沙が問いかける。


「――バレたら?」

「幻想郷は滅亡するわ」 
 

 
後書き
・幻想郷がどうなるかって?ワッフルワッフルとお書きください(白目)
・Ураа!(ウラー)=万歳。
・作者は素人共産趣味者。にわか臭がぷんぷんします。申し訳ありません。 
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