FAIRY TAIL 忘却の最期
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第21話 ラストVS.ジョゼ 魔剣の暴走
「姉ちゃん、平気か?」
「ううん、あなたのおかげよエルフマン」
魔導巨人に捕らわれたミラは、エルフマンによって救助されていた。そして
「ノ・・・ノン・・・」
エレメント4の一人、大地のソルも倒されていた。
「さあ、残った二人を倒しに行きましょう」
「おう!」
魔導巨人の動力源・・・煉獄砕波の魔力はエレメント4の4人から供給されている。
つまり、エレメント4を全員倒せば巨人を止められる上に煉獄砕波も阻止できる。
ミラとエルフマンは残る二人を探しに行こうとした・・・その時
「!!」
禍々しい魔力を感じ、身体が震えた
「な、何・・・この魔力」
「おお・・・漢にあるまじき寒気が・・・」
最初はジョゼのものと思った
しかし、それとはまた別の魔力も感じていた。
「誰かがジョゼと戦ってる?」
「そんなことできる奴残ってたか?エルザはまだだろうし・・・」
それは、巨人の中を進んでいた他の者も感じていた。
「んだよ、今のは」
「この魔力はマスター・ジョゼ・・・でももう片方は、ジュビアは知らない」
外で戦っているグレイとジュビア
「何だ、この魔力」
「すごい魔力だよ、もしかしてジョゼ?」
「でも戦える奴いるのかよ?エルザはあんなだし・・・」
最上階へ向かうナツとハッピーも感じていた。
しかし、その魔力を誰もラストだと知る者はいなかった。
そして、ジョゼは羅刹剣を構えるラストをどう対処するか思考を巡らせていた。
(少し様子を見る必要があるな)
ジョゼが指を鳴らすと、幽兵が続々と現れる
「くぁ!!」
ラストは無機質の床を蹴りジョゼ向けて駆けだす
「バカめ、真正面からくるとは!!」
ジョゼは召喚した幽兵を、壁を作る様に配置し迎え撃つ
ラストは、大きく息を吸い込み
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
大きな叫び声を上げ、幽兵を全て吹き飛ばした
「叫びだけで幽兵を吹き飛ばした!?」
「何なんだあいつ!?」
「妖精の尻尾にまだこんな化け物が残っていたのか!?」
「うああぁぁぁがぁぁぁぁぁ!!!」
ラストはジョゼに斬りかかり、ジョゼは寸でで避ける
しかし
その後ろの壁が、剣の風圧で大きく抉れた
「うわぁぁぁ!!」
巻き込まれそうになった幽鬼の支配者の魔導士達は一目散に逃げ出した。
「マスターがやべぇ!!」
「援護するぞ!!」
「!?っ待て迂闊に攻撃するな!!!」
ジョゼの制止は遅く
「「「食らえ、三元素合体魔法!!!」」」
火、水、土の属性が合わさった攻撃がラストに向かう
その魔法は羅刹剣の一閃でかき消され
その衝撃波は攻撃してきた魔導士を吹き飛ばす
「ぐわああ!!?」
「ば、化け物!!?」
「ぐぅぅぅぅ・・・!!」
唸り声を上げるラスト
羅刹剣を握った右腕は、木の蔦の様なモノに絡めとられていく
(まともに言葉を発していない・・・奴の言っていたのはこれか)
感情が封印され、まともに声を発していない。
まるで、闘争心を剥き出しにした獣の様
ラストは再びジョゼへと向かっていく
(こいつは危険だ!)
ジョゼは魔力の衝撃波を放ち、ラストを吹き飛ばした。
壁を突き破り、ラストは外に弾き出された
「お、おい何か落ちてくるぞ!!」
ラストは落下した直後、地を滑っていき戦場の中を突っ切っていく
「うわあ!?」
「ラストが落ちてきたぞ!!」
そのまま、ラストはギルドの壁に激突した
「ラスト!!」
「お、おい大丈夫か!?」
心配そうに声を上げるカナとマカオ
その心配を余所に、ラストは立ち上がる
「お、おい普通に立ち上がったぞ・・・」
「本当に大丈夫なのかラスト?」
ワカバは心配になりラストへ近づいていく
そのラストの右腕は、完全に羅刹剣と同化していた。
「つーかその右腕どうしたよ?何があって」
手をのばすワカバが視界に入り
ラストはワカバを左腕で払い飛ばした
「ぐわぁぁぁ!!」
「ワカバ!?ラスト、テメェ何しやがんだ!!」
怒鳴るマカオだったが
「グルルルルルルルル」
唸り声を上げ、殺意を剥き出しにするラストを見て思わず一歩後ろに下がってしまう
「な、何だ・・・様子が変だぞ」
ラストは、ジョゼのいる巨人の頭部
目の前で戦う幽兵と魔導士達を見て
(・・・・ジャマダ)
羅刹剣を振り上げ
一気に振り下ろし、剣圧を正面へ飛ばした
射線にいた幽兵が全て消し飛ぶが
「きゃあああああ!!」
その真ん中にいたビスカも吹き飛ばされた
「ビスカ!!」
アルザックがビスカの元に駆け寄る
「ビスカ大丈夫か!?」
「うう・・・」
「ラスト!!お前ビスカになんてこと」
マカオ同様に声を荒げるアルザックだった
しかし
「ぐあぁぁ!!!」
アルザックとビスカに目もくれず猛スピードで走り出すラスト
そして、右腕の禍々しいモノが二の腕まで伸びているのが見えた
「何なんだ・・・一体何が・・・」
仲間の困惑を余所に、ラストは巨人に向かって跳んだ
その跳躍力は、人間のそれを軽く超えており
「おおおおあぁぁぁぁぁぁ!!!」
一跳びでジョゼのいる頭部まで跳び
壁を粉砕しジョゼへと向かっていく
「ば、馬鹿な!!!」
巨人の頭部から落下したにも関わらず、無傷のラストを見てジョゼは思わず声を上げた
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「バカな・・・・バカなぁぁぁぁぁ!!」
そして
(誰なんだ・・・貴様は・・・!!)
ジョゼは、目の前にいるモノが何なのか分からなくなっていた。
ラストはジョゼを斬り付け、肩を掠めて鮮血が飛ぶ
「何なのだ・・・何なのだ貴様は!!!」
叫びながら怨霊を放つジョゼ
しかし、ただ突っ込んでくるだけのラストに一つも食らわず
羅刹剣の魔力に全てかき消されていた
振るわれる剣撃に何とか避けるジョゼだったが
それだけでも自身に大きなダメージを負っていく
「うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして、羅刹剣の侵食が進んでいき右腕全てを覆ってしまう
(ツブス・・・目ノ前ノ敵ヲ・・・ルーシィノタメニ・・・!!)
「あのね・・・今日・・・私の誕生日・・・!」
ジュードの執務室の前に、一人の少女がすすり泣いていた
それを見た白髪の少年は
「どうしたの、ルーシィ?」
少女・・・ルーシィに話しかけた
その少年の背中には、紫色のガンドレッドがあった。
「あ・・・ラスト・・・」
ラストは、床に潰れた白い塊を手に取る
「米・・・?」
「パパに潰されちゃって・・・お仕事頑張ってって渡そうとしたのに・・・」
再びすすり泣くルーシィ
どうにか泣き止ませようとオロオロになるラストは
潰れたおにぎりを、口に運んだ
「え!?やめてよラスト、汚いよ!」
「汚いもんか!こんなの雑草に比べればへでもないよ!」
「ざ、雑草って・・・」
雑草と比べられて冷や汗を垂らすルーシィ
「あ、そうだ・・・これ」
ラストは手に持っていた花束をルーシィに手渡す
「え・・・?」
「誕生日、おめでとう。ルーシィ!」
笑顔でルーシィの誕生日を祝うラスト
釣られてルーシィも笑顔になる
「ありがとう!」
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「この私がこんな小僧に・・・!!!」
(モウ・・・泣カセナイト・・・誓ッタンダ・・・!!!)
「ジュード様!!レイラ様!!」
ルーシィの世話係のスペットが、慌てて外で談笑していた二人の元に行く
「騒々しいぞスペット」
「何かあったのですか?」
「お嬢様が・・・!ルーシィお嬢様が野犬に襲われております・・・!!」
息絶え絶えに答えたスペット
それを聞きジュードとレイラに衝撃が走った
「何だと!?」
「今、ラストが野犬の相手をしているのですが・・・!!」
「ラストだけでは危険よ!」
「ハッシュを呼べ!!すぐに二人を助けに行くぞ!!」
「は、はい!!」
その頃、ラストは
「グルルルルル!!」
「うえーん、怖いよー!」
「この!近づくな!!」
向かってくる野犬を木の棒で追い払おうと振り回すが
飢えているのか、野犬は退く様子がない
野犬はラストに体当たりした
「うわぁ!!」
大きく後退したラスト
野犬達はルーシィにジリジリと握り寄っていく
「やだ・・・!来ないで・・・!!」
怯えるルーシィに、野犬が飛びつこうとした
その時
背後から殺気を感じ、野犬達は後ろにいたラストを見た
ラストは、背負っていたガンドレッドを抱えて叫ぶ
「ルーシィから・・・離れろぉぉぉぉぉぉ!!!」
同時にガンドレッドが輝きだし
その甲に十字架状の魔石が現れると
黒い衝撃波が、辺りの空間を包んだ
「!?」
「この魔力は・・・!」
魔力を感じ取ったレイラは、その方へ向けて走り出す
「レイラ様!」
同行していた騎士姿のハッシュがレイラの後を追いかける
辿り着いた先には、黒い半球があった。
「な、何だこれは・・・!?」
「この魔力は・・・まさか・・・!」
半球が薄れていきなくなると
その中には、気を失っているルーシィとラスト
そして、野犬がいたであろう場所に血痕が残っていた。
「ラスト・・・魔の手甲を使ったのですね・・・」
その時のレイラの表情は、何処か悲しげな顔をしていた。
「うああぁぁぁぁがぁぁぁぁぁ!!!!」
「魔力が減衰しない・・・!どころか更に増幅している・・・!!」
(約束シタンダ・・・約束シタンダ・・・!!)
ルーシィと、ラストが妖精の尻尾に入る一年前
「レイラ様・・・ジュート様とルーシィがまた喧嘩を・・・」
ラストは亡きレイラの墓で、彼女に話しかけていた
「貴女が亡くなってから、二人の溝は更に深まるばかりです・・・」
度々喧嘩をするジュードとルーシィに、ラストはどうすればいいか悩んでいた。
「ルーシィは魔の道に進み、貴女同様星霊魔導士になりました。貴女に似て星霊を愛し、星霊に愛されております。」
ラストは、自分の右腕に付けた
包帯状の呪符で封印されたガンドレッドを見て、言葉を続ける
「俺もこの魔石・・・ダークブリングを使いこなせるようになりました。しかし、使う事はないでしょう・・・この力で、ルーシィに危険な目に会わせるわけにはいきませんから」
しばらく右腕を眺め、寂しげな表情でレイラの墓石へ目を移す
「レイラ様・・・俺は」
「ラスト!!」
突然、背後からルーシィの声が聞こえてきた
「ルーシィ、どうしたんだ?一体何を・・・」
ラストは、ルーシィの手にあったトラベルバックを見て尋ねた
「あたし・・・家を出ることにしたの」
「え・・・ええ!?」
突然のことに、思わず声が漏れるラスト
「家を出るって・・・どういうことなんだ!?」
「あたし・・・決められた生活をするのにもううんざりなの。用意された服、用意された食事、用意された幸運を、あたしは望んでいない!」
「ジュード様にはなんて?」
「言ってないわよ、勝手に出るんだから」
「勝手にって・・・ルーシィ、旅にでるつもりなんだろうが外の世界はそんな甘いものじゃ」
ラストの言葉を、ルーシィは手を握ることで遮った
「だからさ、一緒に来てよ」
「え・・・?」
「あたし一人でじゃ悪い男が寄ってくるでしょ?かわいいし」
自分でカワイイと豪語するルーシィにラストは少しずっこける
「ボディガードもして欲しいし、外で生きてく術も教えて欲しいの」
「だが・・・」
「あたし達、友達でしょ?」
友達
ルーシィの言った言葉に、ラストは息を呑む
「友達だから付いてきて欲しいの。それだけじゃダメ?」
「・・・いや、断る理由がない。俺でよければよろしく頼む」
二人は笑いあった後、レイラの墓前に身体を向ける
「ママ・・・ごめんね。あたし、この家を出るわ。
そして、魔導士ギルドに入ろうと思うの。妖精の尻尾・・・最高にカッコいいギルドよ。」
「レイラ様・・・ルーシィはこの身に代えても護ってみせます。貴女と交わした約束・・・必ず果たしてみせます。」
二人は、亡きレイラに別れを告げ
ハートフィリア邸を後にした。
「うああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ジョゼと戦う内、羅刹剣の侵食が頭部まで進んでいき
ラストの脳を蝕んでいく
(戦ウ・・・タタカウ・・・ルーシィノタメニ・・・・・・・)
そして、羅刹剣の侵食で顔右半分が埋め尽くされた。
(タタカウ・・・・・・・タタカウ?ナンノタメニ・・・・・ダレノタメニ・・・・?)
自身が戦う目的を失い
ラストは、戦うだけの戦鬼へ変貌した。
「ウガァァァァァァァァァ!!!!!」
「おのれ・・・こうなれば・・・!!」
ジョゼは全魔力をラストにぶつけるため力を解放する。
「アアァァァァァガァァァァァァ!!!!」
ジョゼを殺す・・・否、目の前の物体を潰すために剣を振るうラスト
その目の前に
護るべき金髪の少女
ルーシィが、突然現れた
「!!!!!」
突如現れたルーシィを見て
ラストは目を見開き
振るわれた剣は、ルーシィの喉元で止まった。
「ルー・・・・・・シィ・・・・・・?」
羅刹剣に侵食されながら、かろうじて覚えていた護るべき存在
その姿を見て、僅かに正気に戻るラスト
しかし
「ギッヒィ!!!」
ルーシィの姿は蜃気楼のように消え失せ
その奥から、腕を剣に変えたガジルが向かってきた
「!?」
突然のことで反応できず
ラストは、振り上げられた鋼鉄の剣を
まともに顔面に食らった。
ラストの顔面が剣撃で大きく傷付き、鮮血が飛んだ
そのまま吹き飛ばされ、壁に叩き付けられると
羅刹剣に侵食された部分が煙のように消え
ラストは剣から手を離し、デカログスが魔法空間へ自動的に消えた。
「・・・遅かったじゃありませんか、ガジルさん」
「すまねえな、予想外に時間を食っちまったからよ。つーか巨人止まってんじゃねーかよ」
「まさか・・・エレメント4が倒されたのか!?」
「ま、この様子だと知る由なかったっつーのは無理ねぇがな」
自身の顔面から大量の血が流れる中
ラストは、ガジルの左腕に抱えられたルーシィを見て
震えた左腕で手を伸ばす
「映像魔水晶を使ってルーシィを投影するとは・・・まさか戦いを見ていたので?」
「横やり入れられる状況じゃなかったんでね。あいつがこの女にご執心だったのは知ってたからな。足止めになるだろうとね」
「今回ばかりは助かりましたよ。ガジルさん」
「ギヒッ」
しかし、その手はルーシィには届かず
「ル・・・・・・シィ・・・・・・・・・」
二人の声が遠のいていき、ラストは気を失った。
その直後
「がはっ!?」
ルーシィは、生きているか確かめるだけにガジルに蹴り飛ばされていた。
第21話 完
後書き
次回予告
ナツ「おいラストの奴負けちまったぞ!?」
ハッピー「でもすごい魔力だったね。うちのマスターやジョゼを軽く超えてたんだもん」
ナツ「ラストってあんなに強かったんだな~。よ~し!これが終わったら勝負だ!!」
ハッピー「・・・ナツ、今の状況考えて。ルーシィが捕まってるんだよ」
次回 二人の滅竜魔導士
ナツ「そうだった!その前にガジルの野郎をブッ飛ばさないとな!」
ハッピー「脱線しないようにナツはオイラが制御しないとね」
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