とあるの世界で何をするのか
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第九話 今後の展開を考えて下準備 その2
レベルアッパーを入手してから一週間、何とか木山先生の論文を読み終わって、いくつかの対策案を考えることは出来たのだが……、この世界の科学は、俺が最初に暮らしていた世界の科学と微妙に違っているということに気付かされた。
例えば、確かアニメではレベルアッパー使用者の脳波の一部が、無理やり木山先生の脳波と同じにさせられてしまうといった表現があったのだが、俺の元居た世界での脳波は、感情や脳の活動状況によって常に変化し続けるものであり、まるで指紋のように一人一人を識別するため使うようなものではなかったのだ。
次にキャパシティダウンについての情報だが、レベルアッパー入手の翌日にはアリスが見つけ出していて、すでに対応策も考えてある。アリスの能力から言えば時間が掛かりすぎと言えなくもないが、学園都市のシステム把握と同時進行で探していたのと、キャパシティダウンの情報がネットワークと繋がっていない場所に保管されていたようなので、時間的には妥当なところだろう。
キャパシティダウンの対策に関しては、ある特定の周波数さえカットすれば効果を示さないことが分かったので、サイレントという本来なら全ての音を消してしまう魔法を応用することによって、その特定周波数のみを無音にしてしまえば簡単に無効化できるのである。このサイレントという魔法、その範囲内の空気の振動に対して効果を発揮する魔法なので、掛けてしまえば自分以外の能力者もキャパシティダウンの影響を受けずに済むことになる。
超電磁砲ストーリーの最初に出てくるクレープ屋に関しての情報はまだ見つけていない。一応ネットの検索サイトに[るぶらん クレープ オープン]で何度か検索を掛けてみてはいるのだが、それっぽい情報は何も引っかかってこなかった。
しかし、クレープ屋に関しての情報は見つからなかったが、懸命に記憶を辿って思い出した[学園都市見学会]で検索を掛けてみると、6月の上旬に4日間の日程で開催されることが分かった。そして、さらに柵川中学と常盤台中学の能力測定の日を調べると、学園都市見学会と重なる日があり、アニメ版超電磁砲をベースにしているなら恐らくその日が開始日になるはずである。
俺はキャパシティダウンが存在していることで、アニメをベースにしていると思っているのだが、もしかしたら漫画のほうにもキャパシティダウンが出ているのかもしれない。漫画の超電磁砲は7月16日が開始だったはずなのだが、漫画のスタートはどういう状態なのかをはっきりと覚えてないのだ。覚えていると言えば銀行強盗が出てきてから、アニメでは佐天さんが蹴られて御坂さんが怒る部分が、銀行強盗にぶつかられた時にクレープが服について怒るという展開だったことぐらいだ。
取り敢えず、超電磁砲の原作開始日は漫画ベースになるのかアニメベースになるのかは、6月上旬に分かるとして、禁書目録のほうは小説ベースでもアニメベースでも開始が夏休み前日の夜で、実際にインデックスが出てくるのは夏休み初日の朝なので、開始日に関しては特に考える必要が無いだろう。
禁書目録のほうで考えないといけないことは、やはり魔術。この世界の魔術に関することは知っておかなければならないだろう。
(シェーラ、この世界の魔術に関しての調べはどの程度進んでる?)
(はい、最初に大まかな部分を調べて、現在は十字教に関する部分を重点的に調べています)
(なるほど、それなら当面は十字教のイギリス清教に関して調べて欲しい。禁書目録という存在に関してと、インデックスという少女について重点的に頼む)
『禁書目録という存在』と『インデックスという少女』は基本的に同じなのだが、俺は『禁書目録』のほうを『10万3千冊の魔導書の記憶と、首輪や自動書記などの枷』という意味で使い、『インデックス』のほうを『一人の少女』という意味で使っている。
(はっ、かしこまりました)
やはり禁書目録のストーリー上、魔術側として最初に重要になるのは、インデックスの所属するイギリス清教だろう。出来ればインデックスに付けられた魔術的な枷を最初の段階で全て取り除いておきたいところだが、その後の展開にも大きく影響を及ぼす部分でもあるので慎重に運びたい。その為にはインデックスに掛けられた枷を正確に把握することと、魔術界でのインデックスの禁書目録としての立ち位置というか、位置付けのようなものを正しく理解しておく必要がある。
(騎龍、そのインデックスっていう少女、現時点でこの街に居る)
そこでアリスからインデックスについての報告をうける。原作の小説はアニメ終了後になる15巻ぐらいからしか読んでないので、インデックスが学園都市に来た時期は知らなかったのだが、すでに居るなら直接調べることも出来そうだ。
(そうか、ありがとうアリス。それならシェーラ、禁書目録について……いや、インデックスに付けられた枷についてを最優先でたのむ。近いうちに聖人がこの街に入ってくることは間違いないはずだから、それについての報告は後回しでも構わないというか、しなくてもいい)
シェーラから聖人が学園都市に入ってきたという報告は受けていないので、神裂さんはまだ学園都市の外に居るのだろう。恐らく学園都市の近くに居るという聖人が神裂さんのはずだ。そして、すでにインデックスが学園都市に居る以上、そう遠くないうちにステイルと共に学園都市へ侵入してくるに違いない。
(了解しました、最優先で取り掛かります)
(頼むぞ)
(はいっ!)
シェーラが勢い良く返事をする。すぐにシェーラの気配が周囲から消えたので、恐らくイギリスに行ったのだろう。
しかし、ここで一つ重要なことを思い出した。土御門さんは学園都市の暗部組織の一員であり、なおかつイギリス清教から学園都市に送り込まれたスパイだったはずである。というか、アニメを見ての感想を言えば、学園都市とイギリス清教のパイプ役のように見えたのだ。
すでにインデックスが学園都市に居るという事は、土御門さんが動いている可能性も大きい。しかし、グループの一員となったはずの俺のところへは今のところ連絡が無い。
そんなことを考えている時にケータイが鳴り出した。物凄くタイミングが良いというか、見事に暗部連絡用のケータイである。
「はい、もしもし」
『この街の生活には慣れたかにゃー?』
やはりというか当然と言うか、相手は土御門さんである。
「ええ、おかげさまで」
『こっちに掛けたってことは、どういう事か分かってるな?』
急に土御門さんの声がシリアスモードに切り替わる。
「勿論」
当然こちらもシリアスモードに切り替える。
『今から2分でそこに着くから、すぐに準備して出てくれ』
「了解」
もしこれで本当に、ステイルや神裂さんが学園都市に侵入するのを助ける仕事とかだったら、タイミングが良いにも程があるだろうと思ったりもしなくはない。というか、二人を学園都市に侵入させるのが暗部の仕事とも思えないし、もし二人が侵入するのを手伝うのであれば、暗部としての活動ではなくイギリス清教所属としての土御門さんの仕事になるはずだ。
上着を羽織る程度で支度を済ませてアパート前の道路に出ると、ちょうどそこに一台の高級そうなミニバンが止まった。
「早かったな」
「あ……土御門さん」
その高級そうなミニバンの助手席から顔を出したのは土御門さんだった。いつもの車は商用にでも使われていそうなワンボックスだったのだが、今日の車は全然違っていたのである。
「乗れ」
「はい」
とりあえず、すぐに車に乗り込む。シートに座るとほぼ同時に車が動き出すが、動き出しはスムーズで乗り心地もいつもの車とは段違いだった。
「今から人を迎えに行くぜい」
土御門さんから伝えられた仕事内容は、俺の想像していた暗部組織の活動とはかけ離れていた。
「迎えに?」
思わず聞き返す。確かにいつもと違う高級そうな車で来たのだから、そういう方面の仕事もあるのかもしれない。
「ああ、学園都市の外からの来客だ。と言っても、俺の知っているやつだから、お前さんもそれほど気を張らなくて大丈夫だぜい」
「そうですか」
そこでようやく気が付く、これから迎えに行くのはステイルと神裂さんだ。と言うことは、二人は無断で学園都市に侵入してきたわけではないのか。しかし、アニメで見た時は上条さんが記憶喪失となってから、カエル顔のお医者さんがインデックスの他に後二人ほどIDを持ってない進入者が居る、みたいな事を言っていたと思ったんだけど。
「今回迎えに行く相手には、お前さんの事を紹介しときたいと思ってな」
「分かりました」
神裂さんやステイルを俺に紹介するということは、この世界の魔術を俺に教えるつもりがあるということだろうか、もしくは逆に俺の魔法を調べさせろということだろうか。まぁ、もしかしたら二人とは全く関係のない、ただのお客様を迎えに行くだけという可能性もまだ否定できない。ただ、その場合は俺を紹介する意味が全然想像できないが……。
そんなことを考えている間に、車は学園都市の正門前に到着する。運転手の人は車の中で待機して、土御門さんと俺が正門の外で迎えに出る。正門では土御門さんが何か書類を何枚か提出し、俺の身分証を提示すると手続きは完了した。
学園都市の外に出ると、土御門さんはすぐ近くにあるバス停のような場所でベンチに座った。
「ここで待ってればその内来るはずだぜい」
「はい」
俺も土御門さんの隣に座り辺りを見回してみたが、誰一人としておらず車が走っている様子も全くうかがえなかった。
「そう緊張するな。つっても初仕事は緊張するもんだけどにゃー」
「あー、いや、そういうわけではないんですが……、学園都市の正門前なのに全然人が居ないんだと思って」
周囲を見回していた俺を緊張していると捉えたらしい土御門さんに、俺の正直な感想を言ってみる。
「基本的に学園都市への出入りはかなり制限されるからにゃー。朝の早い時間だと生鮮食品なんかの搬入とかあるから、そこそこ人の出入りは見られるはずなんだが、このくらいの時間だとまず人が出入りすることなんてないんだぜい」
「へぇ、そうなんですか」
「あー、けどな、あと1週間もすれば正門前は大混雑になる予定だぜい」
「あっ、新入生ですか」
「そうだにゃー」
あと2~3日もすれば大体の小学校は卒業式を迎えるはずだ。そして、幼稚園や保育園といったところの卒園式も、1週間以内には大体終わっているだろう。そうすると、中学校や小学校へ上がるという時を契機に、学園都市へやってくる人間が多いはずなので、当然4月になる前までには学園都市に来ておかなければならないだろう。
「そう言えば、能力開発を受けてからレベルによって行く学校が決められるんですか?」
「まー、そんなところかにゃー。けど、レベル的に無理とかじゃなければある程度は本人の希望も受け付けるらしいぜい」
「らしい……ですか」
学園都市の外でも、公立の小学校や中学校に通う場合は、どこに通うことになるのかがだいたい決まっている。だが、入学試験さえ通ればではあるが、少々遠くの私立に通う事だってできるのである。
「ああ、実は俺も良くは知らないんだにゃー」
「なるほど」
流石に土御門さんでもその辺のシステムまで把握してるわけではないらしい。
「どこか、行きたい学校でもあるのか?」
「そうですね、柵川中学が良いなーと思ってるんですけどねー」
超電磁砲のストーリーに絡みたいなら、やはり柵川中学に通うのが一番だろう。禁書目録ストーリーのほうは、すでに土御門さんと知り合いであり、恐らくこれからステイルや神裂さんと会うことになるので、そのままでも絡んでいけるはずである。
「ほぉ、柵川って言えばあまり能力レベルは高くない学校だったはずなんだが、それでもいいのか?」
「ええ、もちろんです」
柵川中学の能力レベルが高くないことは当然知っている。問題があるとすれば、俺のレベル4というのが学校で一番だったりすると、学校内では目立ってしまうということぐらいだろう。
「それなら、確実に行けるかどうかは分からないが、手配だけはしておこう」
話の流れそのままに、土御門さんがさらっと言った。
「……え? そんな権限あるんですか!?」
あまりにも普通に言ったので、理解するのに少し時間を要した。これは暗部としての権限なのだろうか、それともアレイスターに頼むということだろうか、しかし土御門さんがアレイスターに頼むというのは想像できない。
「権限って程でもないから、確実ではないんだにゃー」
「そうなんですか……」
やっぱりそういう権限があるというわけではないようだ。それでも、土御門さんが何か手配をしてくれるということは、何もしないより柵川中学に行ける確率が高くなるということだろう。
そして、待っている間に土御門さんと他愛もない話をしていた時、俺は大きなミスを犯してしまった。なんと土御門さんに好きな女性のタイプを聞いてしまったのだ。そして俺はその失敗を、出迎える相手が来るまでの間ずっと後悔し続けることになったのである。
後書き
2012/11/17 電話の話し相手のカッコを『』に変更
2015/01/30 カレンダー変更に伴う学園都市見学会の日程を変更
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