小ネタ箱
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リリカルなのは
ジェイル博士とプレシア氏
前書き
・勘違い要素を入れたいなあ、と思うけれども、難しいですね。
・主人公の一人称を俺にするか私にするか考え中。
「あら、ジェイル。貴方がここに来るなんて、珍しいわね」
おどろおどろしい雰囲気も今は昔。
住みやすい環境にリフォームされたこの場所は、時の庭園と呼ばれていた。
単独で次元航行可能な、存在自体がロストロギア級の家?である。
「ウーノはいま忙しくてね。私が代わりに来た」
胸元を大きく開けたドレスを着た女、プレシア・テスタロッサは、思わぬ人の来訪に驚いていた。
いつものウーノの代わりに来た男の名をジェイル・スカリエッティという。
プレシアにとって、スカリエッティは返しきれないほどの恩がある恩人である。
不思議な男だな、と彼女は思う。
最初の出会いは最悪だった。
娘――アリシアの蘇生のために半狂乱になっていたプレシアは、生命科学の第一人者であるスカリエッティと出会う。
そのときだ。プロジェクトFというクローン技術を提供されたのは。
彼は、渋りに渋った。クローンに記憶を転写したところで、死人は蘇らない、と。
余裕のなかった当時のプレシアは、半ば脅しつけるようにして、技術を奪ったのだ。
『たとえクローンでも、命は命だ。君の娘なんだよ。その覚悟はあるのか?』
去り際に、彼に言われた言葉だ。
アリシアを蘇らすことに手いっぱいだった私は、全く耳を貸さなかった。
アリシアの蘇生に失敗し、フェイトが生まれた時も、気にもしていなかった。
彼は、そんな私のことを見通していたのかもしれない。
それゆえの忠告だったのだろう。
それでも私は、ただひたすらにアリシアだけを求めていたのだ。
狂人だった、と今ならわかる。
プロジェクトFの結果、フェイトは生まれた。
だが、フェイトとアリシアは別人だった。
失意の私は、フェイトに辛くあったていた。
そんなときだった。
スカリエッティが、唐突にやってきたのだ。
そして、取引を持ち掛けてきた。
フェイトを引き取る代わりに、アリシアを蘇らせて見せる、と。
その申し入れに私は飛びついた。
フェイトのことなんて考えていなかった。
必死だったが、もちろん半信半疑だった。
しかし、彼は、見事にアリシアを蘇らせて見せたのだ。
アリシアを腕に抱き、涙を流して喜んでいる自分に、冷めた表情で彼が言った。
『約束通り、報酬としてフェイトは貰っていく』
背筋が凍る。
このときの私はまさにそれだった。
アリシアの復活に喜び、僅かながら正常な思考を取り戻しつつあった私に衝撃を与えた。
笑顔が違う、アリシアはもっと活発だった、アリシアはもっと優しかった、アリシアは……。
フェイトのことを思い出すと、辛くあたった記憶しかない。
けれども、思い出した。思い出したのだ。
私は、母親だった。
フェイトを連れて行かないで、みっともなく叫んだ私に彼は言ったのだ。
その言葉がききたかった、と。
「ふむ、体調はいいようだね。大病を患っていたとは思えないほどだ」
いつもの無表情で淡々とこちらを診察してくる。
診察のために肌をさらけ出しているのだが、微塵も動揺していない。
50過ぎのおばさんとはいえ、一応は女だ。少しショックである。
「身体について何か気になることはないかね?」
「いえ、ないわ。調子がよすぎて、いまだに困惑するくらいよ。あなたの腕は信頼しているわ」
「それは重畳」
長年、アリシアの蘇生に関する研究を身を粉にして続けていた私は、身体を患っていた。
それこそ、余命幾ばくもなかったのだ。
首尾よく蘇生に成功したところで、ともに過ごす時間が残されていないことにすら、当時の自分は気づかなかった。
フェイトを連れて行かなかった彼は、私の病も治してしまった。
アリシアを蘇らせた件、フェイトと仲直りした件、私の身体を治してもらった件。
テスタロッサ家の誰もが、ジェイル・スカリエッティによって救われた。
何か恩返しをしたいと事あることに言ってみたが、すげなく断られている。
だが、そのまま返さないなんて、大魔導師としての矜持に関わる。
何かできないか、と考える私にウーノがやってきた。
ドクターの大望に協力をしてくれないか、と相談に来たのだ。
その内容に衝撃を受けた。
けれども、どこか納得している自分がいる。
私だって、アリシアを事故で失うきっかけを作ったアレクトロ社に思うところはある。
スカリエッティの情報提供により、自分がはめられたことも分かっている。
なら、答えは一つだ。
彼は、私たちを巻き込むことを嫌って、何も言わないのだろう。
だから、こっそり協力する。
それは、すなわち――
――管理局への反逆である。
◇
時の庭園なう。
突撃となりのテスタロッサ家。
プレシアの診察にきたよー。
ふむふむ、術後も順調なようで、何より。
スカリエッティの技術は世界一ィイイイ!
診察の時は、毎回どきどきする。
だって、この人50過ぎてるのに、20代にしか見えないんだもの。
なんというか、大人の女のエロスがある。
でも、こんなときの俺の無表情フェイスなら大丈夫。
下心があっても、表に出さない。というか出せない。
こういうときは、ポーカーフェイス(強制)でよかったな、と思う。
いやあ、でもフェイト関連では苦労したなあ。
彼女を救うために、アリシアを蘇生し、プレシアを治療した。
ひょっとしたら、原作通りにいった方が、フェイトは幸せになれるのかもしれない。
それでも、俺はテスタロッサ家を救いたかった。
この世界で「原作」とやらを唯一知る者として、俺は叫びたかった。
『原作なんて関係ない。この世界に物語なんてない。俺たちは、現実なんだ!』
ってね。
アリシアの蘇生は正直賭けだった。
俺が憑依したデータを分析した結果を用いた、魂の定着という離れ業をだった。
方法は俺と同じ。レリックを使った憑依だ。
魂が残っているのかが分からなかったが、見事賭けに成功したのだ。
ナンバーズとの関係も良好で、最近保護したギンガ・スバル姉妹とも仲良しだ。
この光景を見れただけで、俺は満足だ。
ただ、最近気になるのは、ウーノが裏こそこそ動いているようなんだよな。
いや、ウーノだけじゃない。
ナンバーズたちやプレシアまで、俺に隠し事をしている気がする。
のけ者にされたようで寂しいが、皆が明かしてくれるまで待とうと思う。
俺は空気が読める人間なんだ。
そうそう、アンデルセン神父姿のとき、孤児院で言ったんだよ。
『いいですか?暴力を振るって良い相手は犯罪者共と管理局共だけです』
いやあ、ドヤ顔で言い放ったんだが、後で思い返して悶々とした。
仕方ないようね、だってアンデルセン神父が好きだもの。
それから、頻繁に似たようなセリフを言うようになった。
ただ、面白い冗談だ、と笑ってくれるかと思ったら、ナンバーズとかは真顔で、その通りです、とか言う始末。
うーん、好きなんだけどなあ、このセリフ。
やっぱり、元ネタを知らないと共感できないのかな。
管理局をディスったのダメだったのかな。
次元世界を守る正義の組織だもね。
あんまり批判しちゃあダメってところか。
俺もいつか、管理局に就職したいなー。
後書き
・スカさん憑依ものですが、神様転生ではありません。
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