ロード・オブ・白御前
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オーバーロード編
第7話 共闘! 紘汰と裕也の絆
裕也はポケットで鳴ったスマートホンを取り出し、液晶画面を見た(ユグドラシルのライダーになった時、スマートホンは返却された)。
着信は呉島貴虎だ。裕也は電話に出た。
「はい、角居」
《呉島だ。エマージェンシーコールだ。ベースキャンプがインベスに襲撃を受けた》
「了解。クラックのラボ行けばいいですか?」
《ああ。私も向かう》
「すぐ行きます」
裕也はスマートホンの通話を切った。
「インベスですか」
「ん、ベースキャンプのほうにな。てなわけで、悪いな、ミッチ。話の途中なのに」
「裕也さん、僕も」
「呼ばれたのは俺だけだからダ~メっ。碧沙ちゃん、兄ちゃんが無理しないよう見張っててやってくれよ」
「はい」
「え、碧沙、そっちに肯いちゃうの?」
「わたしも、今の光実兄さんは休むべきだと思うわ」
碧沙が光実と腕を組んでがっちり固定した。これで光実は動けない。
「気をつけてくださいね」
「ん。いってくる」
「いってらっしゃい」
裕也は笑って手を挙げ、部屋を出て、走った。
ベースキャンプは上級も低級もインベスが入り乱れ、混乱状態にあった。斬月が先陣を切って、黒影トルーパー隊を率いて戦っている。
『来るのが遅い!』
「すんません!」
といっても、医療棟からここまで全力疾走して、貴虎の直後に着いたのなら、充分早いほうなのだが、どちらも気づいていない。
裕也は量産型ドライバーを腹に装着し、オリーブの錠前を開錠した。
“気をつけてくださいね”
――好意でなくとも、他人が身を案じてくれるのは嬉しい気分になれる。そして、角居裕也は気分を戦う気力に変えられる男だった。
錠前をバックルにセット、ロックし、カッティングブレードを落とした。
「変身」
《 ソイヤッ オリーブアームズ 雷・電・エキサイティング 》
草色のライドウェアが全身を覆い、上からオリーブの黒紫の鎧が被さった。手には電気ショックを流す警棒。アーマードライダーシャロームとしての裕也の姿だ。
シャロームは腰の無双セイバーを抜き、警棒と二刀流にして戦場に飛び込んだ。
『――っふ!』
まずは研究員を襲っていたインベスを体当たりで押しどけた。
間髪入れずインベスを警棒で突き、電流を流す。インベスは歯切れのよい断末魔を上げて倒れ、散った。
『早く逃げろ!』
息つく間もなく次のインベスが襲ってくる。シャロームは無双セイバーでインベスを斬り払った。そしてそのインベスが斬撃にたたらを踏む隙に警棒を突き立て、電流を流して爆散させた。
(こちとら伊達に耀子さんにしごかれてねえんだよ)
次に倒すべきインベスを求めてふり返ったシャロームは、いち早く「それ」に気づいた。
『貴虎さん! 上!』
警告と同時、紅いオーバーロードが現れた。紅いマントを翻し、杖剣で斬月に斬りかかっている。斬月はその斬撃を辛うじて弓で防いだ。
『何だこのインベスは…!? 武装しているのかっ』
『貴様ガ、サルどもノ長だナ!?』
『言語を…!?』
『赤イ奴、ドこダ! 教えなケレば、貴様ヲ殺ス!』
あちゃー、とシャロームはフェイスマスクを叩いた。駆紋戒斗をけしかけたのが相当まずかったらしい。いずれ貴虎にもバレる日が来るとは思っていたが、こんな形でとは。
斬月は紅いオーバーロードに押されている。武器を操る、すなわち思考する敵。今までのインベスとは次元が異なる相手だ。いかに訓練を積んだ貴虎でも苦しい戦いだ。それを、ライダーとなって日の浅いシャロームが介入した所で劣勢は変わるまいが。
『しゃーないか。あの人が帰らないとミッチとヘキサが泣くもんな』
カッティングブレードを一度落とす。
《 オリーブスカッシュ 》
『どぉ――りゃあ!』
シャロームは地面を蹴り、上からライダーキックを紅いオーバーロードに食らわせた。
だが、紅いオーバーロードに攻撃を仕掛けたのは、シャロームだけではなかった。
《 オレンジスカッシュ 》
『セイ、ハー!』
二人分のライダーキックを食らって、紅いオーバーロードはベースキャンプから離れた平地へと転がった。
『紘汰!?』
『ふぅっ――あ、裕也! いたのかよ!』
『お前こそ何で……あ、お前もオーバーロード探してたんだっけ』
光実に狙撃されてそう間を置いていないのに、大した回復力だ。ドライバーの治癒促進もあってだろうが。
(そういやチームにいた時、長丁場のダンスぶっ通しでやっても平然としてんの、こいつだけだったっけ)
リーダーとしてチームメイトの個々の能力はしっかり覚えている裕也である。
『まあ何でもいい。ユグドラシルになった俺が言えた義理じゃないが、手伝ってくれ。キャンプの人の避難が終わるまででいいから』
『手伝うに決まってんだろ。人の命が懸かってんだ』
『……そーゆーとこ変わんねえなあ、お前』
シャロームたちが話し合う間にも、紅いオーバーロードは立ち上がっている。
シャロームは警棒を、鎧武はソニックアローをそれぞれ構えた。
鎧武が先に弓で紅いオーバーロードと切り結んだ。そして、紅いオーバーロードの集中が鎧武に向いた時を見計らい、シャロームが死角から警棒で叩き、電気ショックを与える。
そのくり返しで、シャロームと鎧武は紅いオーバーロードにダメージを蓄積していった。
紅いオーバーロードが大分姿勢を崩してきたところで、二人は必殺の構えに入った。
『お前は上! 俺は下!』
『! オッケー!』
シャロームはカッティングブレードを3度切り、鎧武は弓にソニックアローを番える。
これだけで通じ合える。不安も心配もない。
角居裕也と葛葉紘汰が組んで、できなかったことなど一つもないのだから。
《 オリーブスパーキング 》
《 ロック・オン レモンエナジー 》
『『はああああああ!!』』
オリーブ色の雷撃が地面を走り、レモン色の光矢が宙を翔け、一瞬のズレもなく紅いオーバーロードを貫いた。
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