ベッドの横に
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第五章
第五章
二人の交際がはじまりやがてゴールインとなった。真吾は弥栄子のマンションに移り住むようになった。そうしてベッドもだ。
夜に二人であのベッドに入っている。そこで弥栄子は横にいる真吾にこう言ってきた。
「あのね」
「あのね?」
「あの時のことだけれど」
話すのはここからだった。
「あの時朝起きたらだったわよね」
「はい、あの時は本当に驚きましたよ」
結婚してもだ。年上なので真吾の弥栄子に対する口調は丁寧なものだった。この辺りに二人の力関係も出ていた。それもはっきりとだ。
「何でこうなったんだって」
「あれね。実はね」
ここでこう言う弥栄子だった。
「何もなかったのよ」
「えっ!?」
「あの時真吾君をこの部屋に連れて来てね」
それでだというのだ。
「それで飲んでね」
「飲んでたんですよね」
「ベッドに連れ込んで既成事実を作ろうって思ってたのよ」
「実際にそう思ってたんですか」
「そうよ。そのつもりだったのよ」
結婚した今だからこそ話せることだった。後になってからだ。
「それはね」
「ううん、だから一緒に飲んだんですか」
「そうよ。ただね」
「ただ?」
「あなたベッドに入ってすぐに寝ちゃったのよ」
「そうだったんですか」
「そうなのよ」
ベッドの中でだ。弥栄子は苦笑いになって述べた。
「そうだったのよ。もうそれでね」
「けれど服脱いでましたよ、俺」
「脱がしたの」
そうしたというのだ。
「それで何とかって思ったけれど」
「それでも駄目だったんですか」
「そうなのよ。それで仕方ないって思って」
それからだ。弥栄子はこう言った。
「まあ。お芝居をしてね」
「それでだったんですか」
「あの時は何もなかったわ」
弥栄子ははっきりと言った。
「それは確かよ」
「それで何で僕に朝ああして」
「だって。好きだからよ」
「好きだから?」
「そう、あなたのことが好きだからよ」
それでだというのだ。弥栄子はこう真吾に話す。
「それでなのよ」
「ううん、それでなんですか」
「策略になるけれどね」
自分でもわかっていた。わかっていてもなのであった。
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