ベッドの横に
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第四章
第四章
「スタイルは油断してたらね」
「すぐにですか」
「そうよ、崩れるから」
よく言われることだが弥栄子もそうなのだというのだ。
「そういうのは注意してるのよ」
「ううん、俺は特に」
「してないの?」
「はい、別に」
そうだというのであった。
「適当に買って食べてます」
「ああ、それ駄目よ」
「やっぱりそうですよね」
「自分で作らないとね。やっぱり駄目なのよ」
「駄目ですか、それって」
「だからよ。自分で作ったりできない?」
料理はできるかというのだった。弥栄子は手でトーストを千切ってだ。そうしてそのうえでだ。真吾に対して問うのだった。
「そういうのは?」
「あっ、駄目です」
すぐに答える真吾だった。野菜ジュースを飲みながらだ。
「ちょっとそういうのは」
「そうなの。それじゃあね」
「それじゃあ?」
「私の作ったの美味しいって言ったわよね」
話はここからだった。
「それじゃあね」
「まさかと思いますけれど」
「そうよ。私が作ってあげるけれど」
にこりとした笑みになって真吾に言ってきたのだった。
「どうかしら」
「あの、それって」
真吾はここでは深読みになった。そのうえでの問いだった。
「先輩、俺に」
「昨日のことも何かの縁だし」
その昨日のこともだ。話してだった。
「だからね」
「あの、それって幾ら何でも」
真吾はベッドの時と同じだけ戸惑いながらだ。弥栄子に言い返した。
「無茶なんじゃ」
「無茶って?」
「ですから。先輩俺と」
「そうよ」
実にストレートな返事だった。
「その通りよ」
「あの、昨日のことはですね」
「いいじゃない、なったんだし」
また言う弥栄子だった。
「それじゃあね」
「ですから。それは」
「それでどうするの?」
弥栄子は戸惑い続ける真吾に対してまた問うた。
「返答は?」
「返事ですか」
「そうよ。イエスかノーか」
「どっちかですか」
「もっと言えば一つよ」
弥栄子の話はさらに言ってきた。
「一つしかないから」
「その一つは」
「イエスよ」
それだというのである。
「はい、どうするの?」
「ええと」
真吾は進退窮まったことを感じた。こうなってはだ。
それでだった。彼はこう答えたのだった。
「それじゃあですね」
「ええ、それじゃあ?」
「わかりました。昨日のこともありますし」
「そういうことでね」
にこりと笑って言葉を返す弥栄子だった。これで決まりだった。
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