女らしくある
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第三章
「女の人でね」
「普段は、ですね」
「凄く女の人らしいから」
「そうですね、けれど」
「それでもなのね」
「私女の子らしくなります」
なりたいという望みを適えて、というのだ。
「乙女になります」
「乙女、ねえ」
「そうなりますから」
「それで空手も女の子らしくね」
「そうしてみてるんですけれど」
「それでもいいと思うけれどね」
だがそれでもとだ、部長は戸惑いを隠せない顔で杏に言うのだった。
「別にね」
「別に、ですか」
「ええ、自然体でもいいでしょ」
「自然体っていうと」
「これまでの杏ちゃんらしくね」
部長は杏を普段呼ぶその言い方で呼んで言った。
「別にいいでしょ」
「そうですか?」
「ええ、杏ちゃん確かに男の子っぽいけれど」
部長もこのことは否定しない、やはり杏はそうした感じなのだ。
しかしだ、それでもというのである。
「それはそれでいいから」
「魅力ないって訳じゃないんですか」
「私的にはそう思うんだけれど」
「そうですか、けれど私は」
「杏ちゃんはなのね」
「女の子らしくなりたいです」
絶対に、という口調での言葉だった。
「どうしても」
「そうなのね」
「はい、だからやってみます」
「わかったわ、杏ちゃんのやってみたいようにね」
すればいいとだ、部長も強くは言わなかった。
杏は空手も料理もファッションも女の子らしくあろうと努力していった、髪型も髪の毛を徐々に伸ばしアクセサリーも付けてだった。
それで何とか女の子になろうとした、そうしてだった。
その結果クラスメイト達からだ、こう言われる様になった。
「いいんじゃない?女の子よ」
「女の子らしくなったじゃない」
「もう何処からどう見てもね」
女の子だというのだ。
「その格好だとね」
「美少女よ」
「美少女ね、それまで言われたことなかったわ」
その美少女という言葉にだ、杏はにこりとして答えた。
「いや、本当にね」
「努力のかいがあった」
「そう言うのね」
「ええ、本当にね」
そうだと言うのだった。
「よかったわ、じゃあこのままね」
「努力していくのね」
「女の子らしくなっていくのね」
「もっとね」
これまで以上にというのだ。
「なってくわ」
「じゃあ目指すは誰なの?」
「誰になりたいの?」
「ティーンズアイドルかしら」
具体的には誰とは言わなかったがそうした存在になるというのだ。
「そんな感じになりたいわ」
「ティーンズアイドルねえ」
「そうなりたいのね」
「そう、お姫様っていうかね」
こうも言う杏だった。
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