女らしくある
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第二章
「髪型だってショートね」
「そうしたところもよ」
「チェンジしていったら?」
「そうね。それじゃあね」
こう話してだ、そしてだった。
杏は女の子らしくなろうと決意した、クラスメイト達と話をして。
女の子用のファッション雑誌や料理雑誌を読んで勉強をはじめた、スカートをはく様にしてメイクもはいzめた。作る料理もだ。
家で実際に作った、そうして母親に言うのだった。
「クレープ焼いてみたわ」
「お好み焼きじゃないの?」
「そう、クレープをね」
こう母に言うのだった。
「中身はアイスと苺よ」
「あんたがクレープって」
母は娘にだ、怪訝な顔になって返した。
「またどういう風の吹き回しよ」
「女の子らしくなろうって思って」
「それでなの」
「そうなの、それでなのよ」
クレープを作ってみたというのだ。
「スイーツもね」
「そういえばあんた最近」
母は娘の今の服装を見た、そのうえでこう言った。
「スカートはくわね、今だって」
「どうかな」
今はいている白のフレアースカートを見せてだ、母に問うた。
「似合う?」
「まあね。それにメイクもしてみたわね」
「ナチュラルメイクね」
「これまでそんなことしなかったのに」
「だから女の子らしくなろうって思ってね」
それでだというのだ。
「やってみてるの」
「そういうことね、じゃあ」
「ちょっとクレープ食べてみる?」
「そうするわ」
母も娘の言葉に答えた、そしてだった。
実際にそのクレープも食べてみた、味はよかったが。
どうも娘らしくないと思ってだ、複雑な気持ちにもなるのだった。
杏はそれからも女の子らしくなろうと頑張った、ファッションに作るものも歌う歌もだ、全て変えたのだった。
女の子らしくしていった、それは部活でもだった。
今の杏の空手の動きを見てだ、女子空手部の部長が言った。
「ねえ、あんた最近ね」
「はい、何か」
「動き変わったわね」
「ちょっと流れるみたいに」
「そうした感じに変えたの」
「はい、それでなんです」
そうしてだというのだ。
「これまでの激しく動く男の子みたいなのじゃなくて」
「女の子なのね」
「そう、女の子らしくって思いまして」
それでだとだ、杏は部長にも話した。
「それでなんです」
「そうなのね」
「そうです、どうでしょうか」
「別に悪くないと思うわ」
部長から見てだ、その流れる様な動きも悪くなかった。
だが、だ。それでもだというのだ。
「あんたらしくないっていうか」
「私らしく、ですか」
「そこが違和感あるわね」
そうだというのだ、部長も。
「何かね」
「そうですか」
「また急にどうしたのよ」
「いえ、男っぽいって言われたんで」
「女の子らしくなろうって思ったのね」
「そうです」
「成程ね、確かにね」
部長はその辺りの事情も聞いたうえでだ、杏にこう言った。
「そんなに気にしなくてもね」
「いいですか」
「宝塚の男役の人だってね」
舞台では大股で歩きかつ胸を張って歌う。勿論衣装はズボンであり喋り方も男のものである。宝塚独特の死ぬ場面でもだ。
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