最高のダイエット
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第一章
最高のダイエット
ニュージーランドのオークランドに住んでいるキャシー=ミルワードは悩んでいた。
そしてだ、そのことを友人達に言うのだった。
「幾ら運動しても食事を考えてもなのよ」
「痩せないっていうのね」
「充分に」
「私太る体質なのよ」
難しい顔での言葉だった、普通のコーヒー砂糖もクリープも入れていないそれを飲みながら喫茶店で彼女達に話す。
見れば栗色の豊かな腰まで伸ばした髪に長い睫毛を持つアイスブルーの切れ長の目にだ。大きめの薄い紅の唇に高めの鼻。細面の顔は彫りがある。背は一六四程である。ただキャシーが意識している通りやや太めか。
顔は整っていると言っていい、しかしやはり顔にも少し肉が見られる。その彼女が困った顔で友人達に言うのである。
「どうしてもね」
「何をしてもなのね」
「走っても泳いでも」
「食事を考えても」
「「必死にダイエットしても」
「そう、お菓子を食べなくてもね」
それでもだというのだ。
「食事も和食主体にしても」
「和食痩せるからね」
「日本人って太ってないからね」
このことはニュージーランドでも知られている、日本人は太っていてもそれは彼女等からしてみれば太っているうちに入らない。
「御飯にね」
「お魚にお野菜」
「あれは痩せるわね」
「確かにね」
「お酒も控えてるわ」
こちらもだと言うキャシーだった。
「そっちもね」
「それでもなのね」
「思った通りにはいかないのね」
「ダイエットは順調でない」
「そうなのね」
「そうなの、ちょっとね」
キャシーは困った顔で言う、今も。
「何とかならないかしら」
「キャシーって確かにダイエット必死にしてるからね」
「真面目にね」
「それでもね、ぢょっとね」
「太めかしら」
「すらりとしたスタイルになりたいのよ」
自分の切実な願いも言うキャシーだった。
「本当にね」
「ううん、難しいわね」
「そこまで努力してなれないのは」
「あと一押しの感じだけれど」
「それが出来ないのはね」
「どうしたらいいかしら」
切実な顔でだ、キャシーは言うのだった。
「ここは」
「難しいわね、本当に」
「そこまでして太れないのは」
こうしたことを話してだった、そうして。
キャシーはダイエットをしてもそれでもだった、自分が望む様なスタイルにはなれなかった。どれだけ身体を動かしても食事を考えてもだ。
それで困り果てている時にだ、不意に。
彼女の職場に一人の青年が来た、彼はというと。
黒髪に黒い瞳はアジア系のものだ、だが。
その顔立ちはコーカロイドのそれだ、百八十をすらりと超える長身がスーツによく似合っている。物腰も紳士的であり。
話も丁寧で落ち着きがある、そして。
仕事は抜群に出来た、人当たりもよくまるで学者それも非常に優れたそれの様だった。その彼を見てだった。
キャシーは驚く顔でだ、友人達に言った。
「凄い人が来たわね」
「ええ、中途採用のあの人ね」
「黒髪と黒い目の」
「あの人よね」
友人達もキャシーにこう応える。今彼等は日本から進出しているビーフカップの店でそのビーフカップを食べながら話をしている。ビーフカップとは牛丼のことだ。
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