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FAIRYTAIL転生伝 ~ 黒き魔王は妖精と共に ~

作者:ラドゥ
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第五話『エルザ救出』

 
前書き
連投です。 

 


楽園の塔の地下には『懲罰房』と呼ばれる部屋がいくつかある。


それは主にこの塔から脱走を企てようとする奴隷たちが連れてこられる部屋で、その奴隷たちはこの部屋で懲罰という名の拷問をうけることになっている。この房を出た者はみな見るも無残な状態になることからこの塔の奴隷たちには恐怖の象徴のように見られており、好んでこの部屋に近づく者はいない。


しかし、現在この懲罰房に二人の奴隷が侵入していた。


「なんだきさ、ぶべらッ!?」
「はい失礼」


「きさまらなん、がッ!?」
「少し黙れ」

この二人の名はジェラール・フェルナンデスとユウト・ベラトリックス。現在彼らは神官たちにこの懲罰房へと連れてこられた仲間であるエルザの救出のために動いていた。


この二人は元々正義感が強く、仲間のことを第一に思っている人間。だからこそ彼らには教団の今回のおこないはどうしても許さなかった。自分たちの仲間を害さんとする彼らの行いを。


だから彼らはここにいた。支配者と闘う決意をその胸に秘めて。









サイド:ユウト


「ユウト!!」

エルザが入れられている房を探している途中、ジェラールの声に反応し、彼の視線の先を見ると、そこには一つの房があり、その中にはボロボロの状態で地面に横たわっている少女の姿が。その少女は俺たちが探している人物と同じ、緋色の髪の持ち主だった。


「え、エルザッ!!!」


目的である仲間の少女を発見した俺は急いでその房へと走る。


「あ、おいユウト!!」


後ろから出遅れたジェラールが急いで近づいてくるのを感じるが、それには構わず急いでその房の扉を開けると中で倒れているエルザに駆け寄った。


「おい!おい大丈夫かエル・・・ザ・・?」


そこで俺は気づく。ぼろぼろでぴくりとも動かない彼女の顔に、









右の瞳が欠けていることに。





「あ・・・ああ・・・な、なんで?」


ユウヤはなぜこのようなことになってしまったのか理解できなかった。いや、理解したくなかったのかもしれない。

彼はいくら中身がある程度成熟しているとはいえ、平和な現代日本で育った人間。そんな彼は決死の覚悟でエルザを助けに来たがどこかで考えていたのだ。いくらなんでもまだ幼い少女にそこまでひどいことはしないだろうと。




だがそれは大きな間違いだったと思い知らされた。



そこでユウトを追いかけてきたジェラールがユウヤに続いて房の中に入ってきた。


「おいどうしたユウト!エルザは無事な・・の・・・」


そこでジェラールの言葉は途中で途切れさせ、代わりに息を飲んだ。彼も気づいたからだ。エルザの無残な現状に。


自然と瞳から涙が溢れてくる。体も震えてきた。恐怖ででも痛みででもない。




ただ純粋な『怒り』によって。




「な、なんでこんなことができるんだ。同じ人間がなんでこんなことを!!!」


ユウヤは感情のままにそう叫ばずにはいられなかった。そうしなければあまりの怒りでどうにかなってしまいそうだったからだ。


そんな裕也の耳にか細い少女の声が聞こえてきた。



「ユ・・・ユウ・・ト・・なの?」
「「!?」」


その声に急いで俺はエルザの口元に耳を近づける。その口からは頼りないながらもしっかりと呼吸が感じられた。


(生きている・・・ッ!!)


それを理解した俺は、エルザの意識を途絶えさせないよう必死で呼びかける。


「ああ、俺だ。ユウトだ。ジェラールもいるぞ!」
「ジェ・・ラー・・・ルも・・・?」
「ああ。ここにいる。ここにいるぞ!!」

ジェラールも俺と同じようにエルザの手をとりながら彼女の声にこたえる。


「もう大丈夫だ!!助けに来たから!!!」
「ど・・・・どう・・やって?」


エルザの疑問も当然のことだ。この懲罰房への通路の途中途中には見張り役の神官が立っていたはずなのだから。もっともそれらは全てユウトたちの手によってもう無力化されていたのだが。


それを思い出した俺は一端ジェラールへと視線をむける。そのジェラールは俺の視線に気づくと真剣な顔で頷いた。それで俺は確信した。


ジェラールが俺と同じ決意をしたことに。


俺はなるべく明るい口調でエルザに語りかける。自分のした決意について。


「ここにくるまでの通路にいた神官たちなら俺たちがもう倒した」
「・・・え・・・?」
「エルザ。もう後戻りはできない」





「もう戦うしかないんだ」





そうそれが俺たちの決意。これ以上教団(やつら)の好きにさせないためにも。


「たたか・・・」

エルザが俺のその言葉に反応して言葉を返そうとしたそのとき、



ガン!
「いぎッ!?」


「!?ッジェラール!?」


なにかを殴る音と共にジェラールの苦悶の声が聞こえてきたので振り向くと、そこにはいつの間にかいたのか数人の武装した神官たちがいた。

俺は急いで武器を取ろうとするが、その前に神官が手に持っている手で俺の顔を殴り飛ばす。


ドゴン!!
「ガハッ!?」

痛みで思わず声を漏らすが、それに構わず神官どもたちは俺とジェラールを囲みなんども殴り蹴り痛めつける。。


「このガキどもだ!!!」「五人もやりやがった!!」
「ちくしょォォ!!!ガキのくせに!!!!」「簡単には殺すな!!!」

「見せしめにするんだ!!!!」

ドゴォン!!!!!

絶え間なく与えられる痛みに耐えられなくなり、徐々に意識がなくなってくるのがわかる。


(ああ・・ちくしょう。・・・しくじった)


神官どもがやってくる前にこの房から逃げ出すはずだったが、エルザのあまりにひどい状態にそんなことはすべて頭の中から吹き飛んでしまっていた。


朦朧とする意識の中でも体が神官たちによって痛めつけられているのを感じるが、もうそれになんらかの反応を返すこともできなくなっていた。


(これが・・・俺の・・・さいご・・か)


神官たちは決して俺たちのことを許さないだろう。脱走だけなともかく、俺とジェラールはやつらの仲間を手にかけている。見せしめにすると言っていたからすぐには殺さないだろうが、やつらの気が済むまで嬲られて最後には結局始末されてしまうだろう。


ならばと彼は最後に祈る。今まで会ったこともない、信じたこともない『神』という存在に。





せめてほかの仲間たちだけは無事でいられるようにと。




そして彼の意識はとうとう深い闇の中へと完全に沈んでいった。





『おや?やっと見つけたと思ったら絶体絶命みたいじゃないか。まあなんとか間に合ったみたいだが』



最後にそんな言葉を耳に残して。 
 

 
後書き
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