MUVLUVにチート転生者あらわる!?
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第二十六話
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悠斗side
1998年8月15日
京都、ビッグトレーバターン号
「以上で報告を終わります」
「ご苦労だ、イルマ中尉」
俺は今、イルマ中尉から報告を受けていた。
既にギニアス大佐は、東北地方で難民達の仮設住宅等の受け入れ等の、任務に当たっている。
俺が現在京都に残って居るのは、斯衛第二連隊と共に殿部隊として京都を守っているからだ。
やはり正史通り、7月14日から、帝都防衛第一師団、斯衛第二連隊と俺が率いる第四師団が防衛戦に参戦する。帝国軍はメビウスのおかげで、民間人の誤爆の可能性が無くなったことから、今まで投入を躊躇していた、艦砲射撃、軌道爆撃などの支援を受けて総反撃を開始する。一時は、大阪まで進行したBETA群を、押し戻す程の戦果をあげる。
しかし、7月末に九州方面部隊が、弾薬が底をついたため戦闘続行不能になり、メビウスの第一師団と共に沖縄に脱出することとなる。この時帝国軍は、貴重な人材を多く逃がせることとなり、結果として大規模な戦力低下を免れた。
尚、第一師団は沖縄に帝国軍部隊を避難させた後、日本帝国から撤退して、太平洋上で先に撤退していた潜水艦艦隊と合流後、秘密基地に帰投した。被害は一切なかった。 総反撃が開始された頃、帝国政府とアメリカ政府の間で、防衛線を巡る話し合いがあったらしいが、結局どちらの国も折り合いがつかず、決裂に終わったらしい。
(まあ、京都は単なる首都だけではないからな。皇帝や五摂家など、日本の象徴の方々いる神聖な場所たがら、帝国政府も本気で守もろうとしたのだからな。まあ、アメリカからすれば、防衛に向かない土地で戦って、極東の島国で兵を死なせる方が、無駄だって言いたいんだろうがな)
ひと悶着あったおかげで、両政府の関係が悪化したのは間違いなかった。8月10日には、すでに東京に退去を完了していた、帝国政府が先の会談でアメリカ政府からの意見を採用して、琵琶湖運河ライン以東に帝国軍の撤退を命令した。これに先立ち、帝国政府は在日米軍、国連軍に京都破棄と東京への正式な遷都を通達した。
この通達を受けた在日米軍や国連軍も、琵琶湖運河ライン以東に撤退を開始した。
「やはり、皇帝や五摂家はやはり京都を離れるのを、拒んだか」
「はい。最初は、京都で散華するつもりのようでしたが、半日以上の話し合いの末に、京都破棄及び皇帝と五摂家の京都撤退に同意したようです」
「その話し合いの時間稼ぎの為に、撤退戦の貴重な時間が失われたかを、考えて欲しいものだ」
「はい。十数時間の時間があれば、今頃京都は灰塵になっていたでしょう。一部の政治家などからは、政治的なパフォーマンスと揶揄されています」
確かに、政治的なパフォーマンスと受け止められても仕方がないな。
しかし、民草からしてみれば、日本の象徴である皇帝等がいなくなれば、それこそ帝国の再興は不可能になるな。
それくらい大切なんだよな国の象徴って。
「まあその話は置いといて、殿に参加するうちのビッグトレーは二隻だけだな?」
「はい。ビッグトレー2隻に、MS2個大隊だけです。第二師団と第三師団は、民間人を輸送完了後 日本から撤退して、秘密基地に帰投しました。第四師団は、ビッグトレー250隻の内、日本に30隻を残し撤退しました。此処にある2隻以外は、ギニアス大佐と共に東北地方で、避難させた民間人達の為に炊き出し等の活動を、行っております」
報告書を読み上げるイルマ中尉。現状では、俺も出撃した方が良さそうだ。俺は、椅子から立ち上がり斜め前の席に座って指揮をとっている、副長の元に移動する。
「少佐」
「はい?どうかしましたか?」
少佐が此方を見る。金色の瞳が綺麗で、尚且つ銀髪ツインテールで可愛い美少女だ。
「俺は出撃する。後の指揮を頼んだぞ」
「分かりました。無理はしないように」
「分かってるよ」
少佐の頭の上に手を置いて、撫でる。髪の毛がスベスベしてて、触り心地が凄く気持ちいい。
「・・・・か、閣下。嬉しいのですが、戦闘中ですので」
「そうだったな。では、出撃する。後を頼んだぞ」
少佐から手を離し、ドアまで移動する。
「イルマ中尉」
「(羨ましいな~)は!はい!」
「管制、頼むぞ」
ニッコリと微笑んでイルマ中尉に、管制を頼む。イルマ中尉の管制能力はピアティフ中尉程ではないが、充分な管制の能力を持っているから、俺の専属オペレーターになってもらっている。
「・・・は!はい!お任せください(その微笑みが、カッコ良すぎですわ)」
「じゃあ行ってくる」
敬礼してドアをくぐり、艦内通路を走って格納庫に向かう。ノーマルスーツに着替えずに、格納庫に着いた。
急いで自分の機体に乗り込み、機体の電源を入れる。
カチカチ、カチカチ
ブォォォォォと音がして、機体の電源が入りコックピットが閉まり、全周囲モニターが映しだされる。丁度、MSが出撃して行く所だった。
「ジョニー・ライデン、出るぞ!」
真紅のザクⅡRー2型がカタパルトから射出されて出撃していった。
待っていた、次のザクもカタパルトに移動した。
「白狼のシン・マツナガ、出撃する」
真っ白で肩のシールドに白狼のマークを入れた、ザクⅡRー1型が出撃していった。
モニターに、イルマ中尉の顔が映る。
「不動准将。現在の状況をお伝えします。斯衛第二連隊の部隊が、京都手前地点で防衛線を引いて、応戦を続けていますが余り長く持ちそうにありません。急ぎ救援に向かってください」
「了解した」
グフカスタムをカタパルトに乗せる。
「ご武運を」
イルマ中尉の顔が消える。何時でも出撃出来る状態になった。
「不動悠斗。グフカスタム、ヴァイス・ローゼ出撃する!」
カタパルトから一気に射出された。ブーストジャンプとブーストダッシュを行い、戦闘地域に向かうのだった。
悠斗sideout
真那side
「でりゃゃゃゃぁぁ!」
近付いてきた、要撃級を74式近接戦闘長刀で、真っ二つにする。
どのくらいのBETAを殺したか分からない位周りは、血の池になっていた。私の乗る瑞鶴は、機体の色が赤いので分からないが、恐らくかなり真っ赤になっているだろう。また、BETAが近付いてくる。
バババババ
左手に持った、87式突撃砲で要撃級を蜂の巣にする。全くキリがない。
「月詠中尉!無事ですか?」
通信回線から、男の顔が映しだされる。白の瑞鶴の衛士だ。
「大丈夫だ。そちらはどうだ?」
「此方はなんとか防いでいますが、陽動部隊の不動少佐の部隊が、かなり劣勢になってます」
京の都にBETAを侵入させないために、不動少佐が陽動を引き受けてくれたおかげで、此方にくるBETAの数は少なくなっだが、陽動部隊は絶望的な状態で戦闘を続行している。
「誰か援軍に行けないか?」
「無理です、月詠中尉。現状でやっとの状況なんですよ。友軍部隊が完全撤退するまで防衛しなければなりませんから、救援は不可能です」
部下の意見は最もだ。しかし、同じ斯衛としてなんとか助けに行きたい。仲間を見捨てることは、出来ないからな。
「月詠中尉、聞こえるか?」
画面に男性が映しだされた。青い髪の毛で、キリッとした目が特徴の方だ。私が仕える、御剣冥夜様と同じ色だ。煌武院家の血が流れるお方である。色こそ山吹であるが、由緒正しい家柄である。また、家は軍の名門であるので軍事に置いては絶大な信用があるお家柄の方だ。現在は、陽動部隊を率いてBETAを誘き寄せて、奮戦されている最中だ。
「不動冬馬少佐。ご無事で何よりです」
「無事か。私を残して部下は皆死んでしまった。私の機体も、長刀が折れ突撃砲の弾も尽きかけている。こうなった以上、私はBETAを巻き込んで自決する!一体でも多く道連れにしてくれる!」
決意の宿った瞳で私を見る不動冬馬少佐。有無を言わさぬ眼光の力が宿っていた。
「分かりました。恐らく説得しても意志は変わらなそうですね」
「すまないな月詠中尉。これは、私なりのケジメだ。部隊長である私がのうのうと生き残っては、死んでいった部下達に、会わせる顔が無くなってしまうからな」
「分かりました。後はお任せください。我々が必ずBETAを、この日本から追い出してみせます」
「ああ。すまぬが日本を頼んだぞ!我が魂!日本の礎になろう!必ずや、若人達が我等の仇を取ってくれると信じて!」
ドッッッカァァァァーーーーーーーーーーーーン
通信回線が切れ、南の方角で大きな爆発が起こる。
不動冬馬少佐が自爆スイッチを押して、BETAを巻き込んで自決なされたのだ。
「月詠中尉!この爆発の方角は、陽動部隊が戦闘を行っている方角です!」
「見れる者は、見ておけ!不動冬馬少佐の武人としての生きざまだ!」
今は戦闘中だ。私は、思考を切り替え直ぐに戦闘に集中する。
(悲しむのは、後ですればよい。
今は生き残る事を、考えねばならん!)
87式突撃砲を連射して、要撃級を射殺する。
先程の不動少佐の自決で、かなりの数のBETAが巻き込まれたようだ。此方に向かってくるBETAの数が少なくなってきた。
「月詠中尉!BETAの数が減少してきました。これなら行けますよ!」
「お前達、不動少佐の死を無駄にするな!一気にBETAを殲滅するぞ!」
「了解」×7
部下を激励して、周りを確認する。他の部下達は、問題なく戦闘を続行していた。
「月詠中尉!左です」
「え?」
何時の間にか、要撃級の接近を許していた。迎撃するために、長刀を構えようとするも、要撃級の前腕衝角が目の前に迫っていた。
「クッ!間に合わん!南無三!」
まさに当たるその瞬間だった。突如として、要撃級の体から赤い血しぶきが上がった。
「大丈夫か?真那?」
八年前に聞いてから、久しく聞いていない懐かしい男の声が聞こえた。
「ああ。大丈夫だ悠斗」
純白の機体が、私の横に着陸する。盾に薔薇の花束をリボンで包んだ、エンブレムが目に入る。
国連軍外郭独立機動戦隊所属、不動悠斗准将だ。私の婚約者であり、一番会いたかった人だった。
真那sideout
悠斗side
ビッグトレーから出撃後、南の方角で爆発が起きた。
「自爆か!間に合ってくれよ!」
恐らく、誘導を行っていた部隊が自爆したのだろう。原作通りだと京都防衛戦では、斯衛第二連隊の生き残りは、8機だけだったはず。月詠真那中尉も参戦していたはずだから、生き延びてもらわなければならない。
ブーストを吹かして、京都の街並みを通り越すと、前方に戦っている部隊が見えた。1機の赤い瑞鶴が要撃級の攻撃に当たりそうになっていたため、ガトリングシールドを構えて発射した。
ダンダンダンダンダン
発射された弾丸は、要撃級に命中して絶命させた。上空から、赤い瑞鶴に通信を繋げる。恐らく月詠真那中尉だろう。
「大丈夫か?真那?」
「ああ。大丈夫だ悠斗」通信画面に、月詠真那中尉の顔が映しだされる。エクストラと同じく、髪をお団子にしている。あくまで、戦術機に乗るときだけお団子にするのであって、普段はおろしているのである。まあ、どちらも似合う人だから、問題無いんですけどね。機体を月詠中尉の隣に着陸させる。
「久しぶりだな、真那」
「ああ!八年ぶりだぞ!どうして日本に来たとき、会いに来てくれなかった!!真耶から聞いたぞ、私や冥夜様を除く他の方とは会ったと!ましてや、篁唯依とは逢い引きしていたとな!」
いきないり、大量の質問が飛んできた。
ガトリングシールドで、BETAを射殺しながら答える。
「日本に来たとき会いに行きたかったが、真那の仕事の邪魔をしたくなかったから、行かなかったのさ。あと、唯依ちゃんとは、逢い引きなんてしてないぞ?唯依ちゃんの両親の墓参りに、行っただけだ」
「嘘を申せ!じゃあ、なぜ和菓子屋で二人で茶をしていた!」
74式近接戦闘長刀で、要撃級を真っ二つにしつつ、文句を言ってくる月詠中尉。だがいに背中を合わせながら、戦闘を続ける。
「あの時は、帰る迄に時間が余ったから、和菓子を食べに行く事になったから、食べに行っただけだ」
「フン!口では調子の良いことを言っても、どうせ私を除け者にするのだろう?」
やたらと突っかかる月詠中尉。何でこんなに突っかかるんだ?
「真那、どうしてそんなに突っかかるんだ?」
「フン!貴様の胸に聞いてみろ!」
ヒートサーベルで要撃級を切り裂き、頭部バルカン砲で戦車級を蜂の巣にする。月詠中尉は、120㎜滑空砲で要撃級を、吹っ飛ばした。
「ウ~ン、分からんな。真那機嫌を直せよ。俺に出来ることならなんかしてやるからさ」
「!!本当か?!」
「ああ。本当だ!ただし、俺に出来ることの範囲だからな」
「その約束忘れるなよ!」
「おう!」
ニッコリりと笑って、返答をする。
「約束したからな!忘れるなよ」
「大丈夫だ。約束は守るからな」
そんな会話をしなが、BETAを倒していると、通信が入った。
「不動准将、京都に火の手が上がりました」
「なに?!」
イルマ中尉からの、報告を受けて京都の方を見ると、街全体に火の手が廻っていた。
「遂に、火の手が上がったか。京都の美しい街並みが焼けていく」
月詠中尉の言葉に、周りからも「我々は護れなかった」「くそ!我等の故郷が!」など、様々な声が上がる。
「不動准将。友軍部隊の撤退が完了しました。戦闘地域から脱出してください。繰り返します」
イルマ中尉から、撤退するように求められる。
「全員聞け。友軍部隊の退却が完了した。我々も京都を脱出する」
「クッ!了解しました」
「了解」×7
斯衛軍の衛士達は、しぶしぶながら従ってくれた。ブーストジャンプして、上空に上がり京都の街並みが見える山の上で止まる。ついてきた斯衛軍の衛士達も近くに着陸した。
「不動准将?どうなされた?」
月詠中尉の瑞鶴が、隣に着陸する。
「見ろ。京の都が燃えてゆく様子を」
「ええ。美しかった京都の街並みが、燃えていきます」
既に火の手がかなり上がっている。帝都城にも火の手が回っているのか、大きな火柱を上げて城が燃えている。
誰も喋らずに、京都が燃えていく様子をただ見つめることしかできなかった。
ここに、1,200年の歴史を持つ世界有数の古都は、炎に包まれその歴史に幕を下ろした。
悠斗sideout
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