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久遠の神話

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第百八話 最後の戦いその五

「これはほんの準備体操だ」
「そうですよね」
「今の俺にとってはこれ位の技はな」
「大したものではないですね」
「君と同じだ」
 今の上城と、というのだ。
「かなりの数の怪物を倒してきたな」
「はい」
「そうだな、しかしだ」
 それは、とも言う加藤だった。
「俺も同じだ」
「数多くの戦いを経てきてですね」
「それだけ力を備えてきた、ではその力を全て見せる」
 こう言ってだ、不意に。
 加藤はその手に持っている剣を円月で回した、すると。
 その剣を中心にしてだ、戦いの場に。
 幾人もの加藤が出て来た、だがその加藤はどれも濃紫の彼の力である魔の色をしていた。剣は持っていても。
 その加藤達が上城に殺到する、そして。
 全員で攻撃を仕掛けてきた、その攻撃もだ。
 魔のビームを放ちだ、それに。
 瘴気も放ち剣自体でも激しく斬って突いてくる。野獣の様だが正確な動きだ。
 その魔が出した加藤達にだ、上城はというと。
 一旦上に跳んだ、防ぎきれないと見て。
 そして上からだ、追って飛んでくる彼等に。
 剣を一閃させ無数の氷の矢を降らせた、それでだった。
 彼等を貫き倒した、大技だった。
 その大技の後でだ、二人は。
 今度は宙で斬り合う、それぞれの力を帯させた剣で。樹里はその二人を見て言った。
「これまでの戦いとは」
「ええ、全くね」
「違いますね」
 こう智子にも返した。
「本当に」
「何もかもがね。ただ」
「ただ、ですね」
「五分と五分よ」 
 智子はその二人の闘いを見て言った。
「まさにね」
「上城君と加藤さんは」
「完全にね、力と技と速さは」
 その三つは、というのだ。
「何もかもがね」
「互角ですね、確かに」
「そうよ、ただ」
 ここでだ、智子はこうも言った。
「完全に互角ならね」
「それならですね」
「後はね」
「気力ですね」
 それだとだ、樹里は言った。
「気力がある方が」
「そう、勝つわ」
「そうなりますね」
「だから、後はね」
「気力ですか」
「気よ」
 それだというのだ。
「気が少しでも乱れなかった方が」
「勝ちますか」
「二人共気についてもね」
 それに関してもだとだ、智子は冷静に述べていく。
「互角ね」
「そちらに関しても」
「そう、だから」
「乱れないことですね」
「若し僅かでも乱れた方が」
 そちらが、というのだ。
「敗れるわ」
「それが互角と互角の闘いですね」
「ほんの僅かでもよ」
 気が乱れれば、というのだ。
「それが結果になるわ」
「勝敗の」
「二人共本当に互角だから」
 それ故に、というのである。 
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