| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百八話 最後の戦いその四

「全くな」
「そうですか」
「そうだ、俺は戦うか掃除が出来ればそれでいい」
「そのどちらかが出来ればですか」
「充分だからな」
 それでだというのだ。
「誰の言うこともやることも否定しない」
「人は人ですか」
「もっと言えば俺は俺だ」
 つまり自分は自分だというのだ。
「そういうことだ」
「そうですか」
「そうだ、だから君の考えも主張もだ」
「否定されないですか」
「そう思っているのなら思えばいい」
 そして言えばいいというのだ。
「それに俺はこの戦いがなくともだ」
「別の戦いを、ですか」
「楽しむ、そうするだけだからな」
「そうなんですね」
「しかし戦うからには勝つ」
 これは絶対のことだというのだ。
「それが最高の喜びだからな」
「勝つことはお好きですか」
「最高にな、だが負けてもいい」
 それも構わないというのだ。
「楽しみたいだけだ、剣士の戦いも」
「何か加藤さんが少しだけでもわかった気がします」
「そうか」
「はい、少なくとも悪い人ではないと思います」
 むしろある意味純粋なものを感じた、加藤に。
「お話したことは殆どありませんでしたが」
「そうだったな、会うことも少なかったな」
「そうでしたね」
「俺も君が少しわかった」
「僕のことが」
「悪人ではない、純粋だ」
 上城のそうしたことがわかったというのだ。
「もっとも俺にはどうでもいいことだが」
「僕のことも」
「どうでもいい、ただ悪人でないことはわかった」
 このことは、というのだ。
「でははじめよう」
「わかりました、それじゃあ」
 こう応えてだった、上城も加藤も。
 十二時になったことが直感的にわかった、それで二人共剣を出した。
 上城も加藤も出した剣を構えた、ここで聡美は二人を見て言った。
「はじまりましたね」
「ええ、これがね」
「最後の戦いですね」
 智子と豊香もその聡美に応えた。
「いよいよ」
「終わらせるべき戦いが終わる戦いが」
「そうですね、では」
 それではと言ってだ、そしてだった。
 女神達は上城と加藤の戦いを見守った、聡美はまだ不安そうだったが。
 樹里は落ち着いていた、その顔でだった。
 二人特に上城を見ている、上城は今は加藤と構えを取ったまま対峙している。
 そうしてだ、二人共だった。
 それぞれの力を全身に及ぼさせた。上城は水を、加藤は魔を。上城はその水の温度を下げて氷にしてだった、その氷達を。
 蜘蛛の巣の様に周囲に放った、特に加藤に。
 その無数の氷の柱が上城を突き刺そうとする、だが。
 加藤はその氷の柱達を手に持っている剣で次々に砕いた、そして今度は。
 彼からだ、剣から魔を出してだった。
 魔の力をビームの様にして繰り出した、それで上城を撃つ。だが。
 上城もだ、その魔の一撃をだった。
 剣を一閃させて氷の壁を作った、それをバリアーとして防ぐだった。
 その一連の攻防を経てだ、上城はまた言った。
「お見事です」
「君もな」
 加藤もこう言葉を返す。
「素早い攻防だ」
「有り難うございます」
「しかしだ」
 ここでだ、こうも言った加藤だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧