久遠の神話
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第百八話 最後の戦いその三
「それが適えばいいのですが」
「大丈夫ですよ」
不安を見せる聡美にだ、受理が落ち着いた声で言った。
「上城君は」
「大丈夫ですか」
「はい、上城君ですから」
微笑みさえ浮かべての言葉だった。
「大丈夫です」
「貴女は彼をそこまで」
「信じています」
だからこそだというのだ。
「そしてわかっています」
「この最後の戦いの結末が」
「上城君は勝ちます、そして」
そのうえでだとだ、樹里は微笑みつつ言葉を続けていく。
「この戦いを終わらせてくれます」
「そうしてくれますか」
「ですから」
全てのことはわかっている、だからだというのだ。
「私達は今は見ていましょう」
「では」
聡美は樹里のその確かな笑顔の横顔、それを見てだった。
彼女も確かな顔になった、それで言うのだった。
「私も」
「ええ、見ていましょう」
「ここで」
「そうします」
聡美は満月、最後の戦いの場を照らすそれを見上げた。自分のものであり彼女のものでもあるそれをだ。
そしてだ、十二時を待った。時間は間もなくだった。
二人はまだ剣を出していない、しかし。
対峙してだ、上城は加藤に対して言った。
「では」
「楽しませてもらう」
加藤は身体を左右に揺らしながら上城に返した。
「これからな」
「貴方はそれだけですね」
「君と闘ったことはな」
「あまりなかったですね、そういえば」
「少なくとも徹底的にやり合ったことはな」
「なかったですね」
「しかし今回は違う」
これから行われる闘いでは、というのだ。
「この戦いでは最後だ」
「剣士の戦いでは」
「最後だからな」
それ故にというのだ、加藤の場合は。
「楽しませてもらう」
「本気で、ですね」
「殺すことに興味はないが」
これも加藤だ、彼は戦うことは好きでも相手の命には興味がない。戦闘狂であるが殺人狂ではないのだ。だからこれまでも人を殺したことはないのだ。
「若しもの時は恨まないことだ」
「はい、わかっています」
上城も加藤にこう返す。
「僕も」
「そういうことだな、では後腐れなくな」
「僕は終わらせます」
戦いをとだ、上城は加藤に告げた。
「そうさせてもらいますから」
「終わらせるか」
「こんな戦いは」
絶対に、というのだ。
「そうしなければならないと思っていますから」
「無益だからか」
「はい、だからです」
彼のこの考えを加藤にも言うのだった。
「そうさせてもらいます」
「それならいい」
加藤は上城の言葉を正面からそのまま受けて言葉を返した。
「俺はな」
「否定はされないんですか」
「俺は誰も否定しない」
やはり素っ気なく述べる。
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