東方虚空伝
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第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十四話 巡り会し者
暗く広大な石造りの空間に松明の光に照らしだされるのは玉座の如き椅子に腰掛ける一人の鬼 百鬼丸。彼の視線の先は松明の光が届いていない闇色の影がかかっている石壁。しかしその影の中には一人の人物が壁に背を預け佇んでいた。
影の中薄っすらと映し出されるのは山吹色のエアリークラウドマッシュの髪をした見た目は二十歳ほどの男。鼻眼鏡をかけておりレンズの奥には見る者に理性的な印象を与える藍色の瞳を覗かせる。
袖の長い青色の太極服を身に纏い服の胸辺りには金色の刺繍で熊の頭部があしらわれているが今は腕を組んでいる為目にする事は出来ない。
彼の身から発せられているのは紛れも無い神気であり、妖怪の根城であるこの空間では異彩を放っている。しばし続いていた沈黙を破ったのは彼だった。
「折角のデュラハン五十体を失ったそうですね、大口を叩いておきながらこの様とは―――――」
彼の台詞に込められているのは明らかな侮蔑、言葉だけではなく口元も歪ませている。そんな言葉を吐かれた百鬼丸は意外にも冷静で表情を変える事も無く淡々とた口調で返す。
「あぁそうだな今回の事は俺の落ち度だ。だが別に無くても計画には支障はねぇから安心しな覇夜斗よ」
百鬼丸の言葉に男神 曽根 覇夜斗(そね はやと)は眼鏡を押し上げながら薄ら笑いを浮かべていた。
「計画には支障は無い、ですか……まぁこれ以上の失望はさせないでくださいね?百鬼丸殿」
「そのつもりだ。それよりそっちの方はどうなんだよ?」
「こちらは何の問題もありませんよ、我々熊襲の準備は殆ど整っています。後は我が主の号令を待つのみ」
“我が主”と語る辺りで恍惚とした表情を浮かべる覇夜斗を百鬼丸は冷めた瞳で眺める。百鬼丸は彼の主である熊襲の王と合った事が無い、それ故に覇夜斗が心酔する存在に多少の興味はあるが正直その程度である。
「では僕はこの辺りで失礼しますよ、重ねて言いますがこれ以上の――――」
「いらない心配してんじゃねーよ」
覇夜斗の言葉を遮りそう語る百鬼丸を一瞥し覇夜斗は暗闇へとその姿を消して行った。そして百鬼丸一人となり静寂が訪れた室内に今度は別の声が響き渡る。
「今のは一体誰だよ百鬼丸?」
まるで霧が集まるかの様な現象が起こるとそこに二本の角を持つ鬼の少女 萃香が現れる。彼女は咎めるような視線で百鬼丸を射抜くが当の本人は何処吹く風、と言った感じで気にも留めない。
「テメーにゃ関係ねーよ、それより言い付けた事はどうした?何か使えるネタでも見つけたのか?」
「……それは…まだだよ」
萃香の言葉に百鬼丸はさして失望した感じも見せず淡々と言い放つ。
「まぁいいさ何かあれば儲けもの、って位だからな」
百鬼丸の反応に萃香は逆に違和感を覚える。正直咎められ馬鹿にされるものだとばかり思っていたのだ。こいつは本当に何を考えているのか?萃香の疑念は募るばかりだ。
「……百鬼丸……あんた一体何を―――」
「さっきも言っただろうが――――テメーにゃ関係ねーよ、分かったらとっとと戻れ」
何もいう事は無い、萃香に言葉と態度でそう示し百鬼丸は椅子に頬杖をつきその目を閉じる。萃香は歯噛みしながら再び霧となって空間に散っていった。
萃香の気配が消えたのを確認した百鬼丸は閉じていた目をゆっくりと開く。
「……ふんくだらねー、神も妖怪も人間も―――――はははッ!あと少しだ、あと少しで全てがこの俺に屈服する!全てを超越した俺が支配する世界が!はははッ!はーーーははははははッ!!」
広大な石の空間に百鬼丸の嗤い声が幾重にも反響していた。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
七枷神社の居間で虚空、綺羅、天魔の三人が机に並べられている書類の山と格闘していた。書類の中身は柳杉屋と繋がっていた各種の組織・個人の情報やその他の人妖売買・禁品取引等を行っていた者達の取調べ報告書と百鬼丸の本拠地調査の報告書だった。
「あ~~~進展無しか~~~」
そんな声を上げながら虚空は畳へと大の字に転がりそれを見ている綺羅と天魔は苦笑いを浮かべている。
殿朗の確保から一週間が過ぎるがそれ以降有力な情報が入ってこなくなっている。百鬼丸の勢力もなりを潜めしまい足取りどころか手掛かりすら発見できていない、手詰まり状態だ。
「この地方から手を引いて移動した可能性もありますよね?」
「…多分無いね」
綺羅の言う通り本拠を移動した可能性もあるが虚空はそれを否定する。
「何故です?盟主殿?」
虚空の発言に天魔も疑問を感じたらしく読んでいた書類から目を離し虚空にそう問いかけた。
「百鬼丸が熊襲と手を組んでいるとしたら大和の本拠地の伊勢(今の三重県)からそんなに離れる事はしないと思うんだよ」
虚空の言う事はあくまでも勘だ。しかし今持っている情報から推測出来る中でもっとも可能性がある。しかし可能性があるとしても捜索範囲が絞れなければどうしようもない。
「なるほど、奴等の本拠が結界などで隠されている可能性もありますしね」
虚空の言葉に納得した天魔が自身の憶測を口にするがそれを聞いた綺羅が渋面になり頭を下げる。
「結界が張られているのならそれは僕が造った結果石を使っている可能性が高いです。それなら僕の責任に――――」
「はいそこまで。そんな事言い出したらきりがないよ」
囚われている時に結果石を幾つか造らされたのだろう、責任を感じるのは理解できるがそれを咎めた所で問題は解決しない。
虚空の意図を理解した綺羅は無言で頭を下げ作業に戻る。そして虚空が再び書類に手を伸ばそうとした所で部屋の入り口の襖が開かれ外から神奈子が入室してきた。
「虚空、急で悪いがすぐに出かける準備をしておくれ」
「出かけるって何処に?」
神奈子が唐突にそんな事を言ってきた為不思議に思い問い返すと神奈子は手に持っていた一通の手紙を虚空に渡す。手紙には―――
『大和の長 天照が命じます。神奈子及び七枷虚空は可及的速やかに我が都である伊勢神宮に参上するように。なお今回七枷虚空には拒否権等は認めぬ旨を伝えておきます』
「……ねぇ神奈子…僕何かしたっけ?」
「……逆じゃないかね?何もしてないから、かもしれないよ」
虚空の問い掛けに神奈子は苦笑いを浮かべながらそう答える。
実は虚空と天照の仲は非常に微妙で危うい関係になっている。
大和に属する神には一年に一度石見(今の島根県)にある出雲大社に集まり親睦を深める行事がある。普段は自分の管轄からあまり動かない神々を交流させる為の宴だ、とは須佐之男の弁。
もちろん七枷の祭神である虚空や諏訪子、神奈子もこの宴に参加しなければならないのだが虚空は祭神になった年の一回しか参加していない。
理由は宴に参加した折り虚空に対し天照が一つの提言、いや命令を課したからである。その命令とは“自分の管理する都より穢れを排斥する事”であった。
天照の妖怪嫌悪は周知の事実であり大和の方針としても至極当たり前の命令だった。加えて天照は虚空が妖怪である紫を娘として扱っている事を知っていて尚虚空にそう命令したのだ。
虚空の事情を知っている神奈子、諏訪子、月詠、須佐之男等はそんな天照の命令に虚空が逆上するのでは、と警戒したが当の本人は、
「ははっ!この七枷虚空、ありがたく拝命いたします!」
天照に頭を下げたのだ。特に諏訪子は驚き七枷神社に戻るまでずっと虚空を罵り続けたが虚空は全く意に介さなかった。
だがどれだけ経っても虚空は天照の命令を実行しようとはせずそれ以降出雲の集会に出席する事もなくなる。
そんな事を続けていれば天照からは催促状の様なものが送られてくるのは必然、時には天照直属の部下が催促状と共に七枷の郷を訪れる始末。だが虚空はその度に―――――
「郷の人手不足解消の為妖怪を使っているのです、用済みになれば町の者達が自ら郷より追い出すでしょう。僕はそれを待っているだけです。多分もう少しですよ、多分」
何時もの胡散臭さがあるヘラヘラ笑いを浮かべながらそんな風にのたまうのだ、そんな事をのらりくらりと百年も続けている。神奈子が言った何もしていない、とはそういう事だ。
「遂に天照がキレたかな?」
「……止めておくれよ恐ろしい」
虚空の能天気な発言に神奈子は自らの身体を抱きしめながら軽く身震いする仕草をした。もし虚空と天照が諍いを起こせば間違い無く神奈子が板挟みに遭うのだ、本人にしてみればたまったものじゃない。
「行きたくないな~」
「拒否権無しって書かれているだろう、駄々捏ねてるんじゃないよ!」
やる気無く畳に寝転がる虚空を神奈子は一喝し虚空の襟を掴むと引きずりながら部屋の入り口に向かう。
「そういう訳だから後の事は頼んだよ二人共。諏訪子が帰ってきたら説明しておいておくれ。後は……何時帰れるか分からないから神社の事は任せるよ、とね」
部屋を入り口で神奈子は綺羅と天魔にそう言付けると二人は律儀に神奈子に向き直り了解の意を示すように頭を下げる。
それを確認すると神奈子は未だにブツブツと文句を口にしている虚空を引きずり部屋を後にした。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
雲一つ無い青空が広がる空間に突如不思議な黒い線が走りそしてその黒は楕円形に広がり奥に見える摩訶不思議な色合いを見せる空間から虚空と神奈子と紫が姿を現した。
三人の視線の先には七枷の郷よりも広大で見る者に只ならぬ威厳を与える都が存在している。
天照が祀られている伊勢神宮が建つ大和の本拠の都である。目視できるほどの強力な対魔結界が折り重なるように四層に張られており並みの妖怪など触れる所か近づくだけで消し飛ばされてしまうだろう。
移動時間短縮の為に神奈子は紫にスキマで送ってもらう事を頼んだがスキマを開くのは伊勢の都から離れた場所を指定していた。
頼まれた本人である紫は何故離れた所に開かなければならないのか不思議に思っていたが実際に自信の目で確認した時神奈子の配慮の理由を理解した。もしあの中にスキマを開いていたらどうなっていたのか想像したくない。
「初めて来たけど……なんか堅ッ苦しいそうな所だね」
「堅苦しいのは当たり前だよ、何て言ったって天照様のお膝元なんだからね」
見ただけで都の雰囲気を察した発言をする虚空に神奈子が呆れ半分で答えた。見ただけでそう感じるのだから中に入ればどれ程だと言うのか。
「まぁ此処まで来てウダウダ言っても仕方ないし…行こうか神奈子。あぁそれから紫――――」
「?何かしらお父様?」
虚空に唐突に呼ばれ頭の上に疑問符を浮かべる紫に、
「僕が居ないからって寂しくて夜鳴きしちゃ駄目だよ」
真面目な顔でそう言い放つ虚空。その言葉に神奈子は笑いを堪え紫は呆れた表情をしながら半眼で虚空に視線を向ける。
「……お父様……私の事をどれだけ子供扱いしているのかしら?」
静かにそして若干の怒りを込めながらそんな言葉を吐く紫に虚空は何時も通りの能天気そうな笑顔を浮かべ、
「親にしてみればどれだけ経っても子供は子供だよ。…いや待てよ良く考えたら僕の方が寂しくて夜鳴きするんじゃないのか?それは困るな、という訳で出発前に寂しさを紛らわせよう!さぁ愛し娘よ父の胸に飛び込んでおいで!」
「それじゃぁ神奈子、私は戻るわね」
「あぁ助かったよ、神社の方は任せたよ」
大きく両手を広げる虚空を無視し紫は神奈子に声をかけスキマを開くと振り返る事無くスキマを閉じた。両手を広げた格好のまま固まる虚空と神奈子の間に一陣の風が吹き沈黙が流れる。
「……まぁ此処まで来てウダウダ言っても仕方ないし…行こうか神奈子」
「コイツ認めたくない事実を無かった事にしたッ!!」
「えっ?ナンノコトカナー?ボクニハワカラナイナー?」
「……後で団子でも買ってあげるから元気だしなって」
ボケたフリをする虚空の背中を神奈子は優しく叩きながらそう慰める様に言葉をかけ、虚空の頬を一筋の涙が光を反射しながら流れたのは割りとどうでもいい話である。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
伊勢の都の大通りを進む虚空が抱いた印象は『厳格』。まるで天照の気質を体現しているかのような都である。
賑わいはある、しかし七枷の郷や他の都の賑わいと比べると違う感じが否めない。都の管理者でこうも変わるものなのか、と虚空は素直に感心するが真似をしようとは微塵も思わない。
虚空は七枷の郷の前諏訪の都から受け継がれているあの雰囲気が好きだし、なにより自身に厳格や威厳などある訳も無い。幾ら考えても虚空と天照は相容れないようだ。
伊勢の都も七枷の郷と同じ様に中心に神の御所を建てている。暫く歩き目的地である伊勢神宮の鳥居を前まで辿り着いた虚空と神奈子。
七枷神社より広く何より鳥居すら潜っても居ないというのに伝わってくる荘厳さと神々しさ。流石は大和の長が座す場所である。案内するかのように前を歩む神奈子に追随し虚空達は境内へと足を踏み入れた。
神宮の敷地内では格の高そうな神官や巫女が行き来し神奈子や虚空を目にすると深々と頭を下げ去っていく。よく見ると何やら慌しい感じを受け虚空と神奈子は不思議そうに顔を見合わせる。
「?何かあったのかな?」
「……気になるね、虚空悪いけど先に行ってておくれ。あたしはちょっと話を聞いてくるから」
「えぇ~一人で行かないといけないの~」
「天照様は此処の一番奥の建物にいらっしゃる筈だから」
虚空の文句を無視し神奈子はそう言うと神官達が集まっている社殿へと足早に向かっていき、残された虚空は仕方なく神奈子が指差した方に見える建物を目指し歩を進めるのであった。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
途中で会った巫女に天照の所在を聞き建物まで案内された虚空は一人廊下を進んでいた。巫女に部屋まで案内して欲しかったのだがどうやらこの建物は神以外の出入りを禁止しているらしい。
どの部屋に居るのかも分からない為虚空は廊下を適当に進んでいた、勘頼りともいう。そして暫く彷徨っていると少し奥の部屋から女性と思われる複数人の声が聞こえてくる。
声がする部屋の前にまで辿り着き襖に手をかけようとした瞬間、内側から勢い良く襖が開かれ一人の女性が現れた。
「此処で論じていても仕方ないでしょう!無駄かもしれないが私はこの周辺を探してみます!――!?貴様何者……だ……えっ?……ッ!!」
女性は襖を開けた先にいた虚空に問い詰める様に言葉を放つがその目は次第に驚愕したかのように見開かれていく。
腰までありそうな薄紫色の長い髪を大き目の黄色いリボンでポニーテールにし、白い半袖のシャツに赤いロングのサロペットスカートを身に付けその手には刃渡り七十cm程の装飾が施された鞘に収められている刀が握られている。
虚空を捉えるその赤い瞳は動揺を露にし女性と虚空の間にはなんとも言えない沈黙が訪れていた。
女性の反応に困っていた虚空は部屋の中に視線を向ける。そこにはもう一人女性が座布団に鎮座しており目の前の女性同様に虚空を見つめ驚愕している。
腰まであるロングの金髪に金色の瞳、長袖の白いシャツと目の前の女性と同じ種類と思われる青いサロペットスカート、膝元には青いリボンが巻かれた全周につばがある白い帽子がある。
女性二人の反応に困った虚空は仕方なく二人に問いかけた。
「え~とごめんね、何処かで会った事があったっけ?」
虚空は苦笑いを浮かべながら問いかけるが二人は口を動かすだけで言葉を吐かない、いや動揺しすぎて言葉が吐けないのだろう。虚空自身何故この二人が自分を見て驚愕しているのか全く検討が突かずどうしていいのか分からない為部屋の入り口で棒立ちのままだ。
「……邪魔よ、退きなさいウスノロ」
虚空の背後から突然そんな辛らつな言葉がかけられる。
「あぁごめんね」
謝罪の言葉を口にしながら虚空は振り向き部屋の入り口から離れようとして声をかけてきた人物と向き合った。
そこに居たのは手入れなどされていないのか腰よりも長いボサボサの銀色の髪と少し濁って見える瑠璃色の瞳、薄紫色のスキニースーツと所々汚れている白衣に身を包んでいる女性。
その女性も先の二人と同じ様に、否それ以上に驚愕の表情を浮かべ、そしてその女性を目にした虚空はらしくも無い何処か夢見がちな表情を浮かべたまま固まっている。
暫しの沈黙の後二人は同時にそれぞれ一つの単語を口にした―――――
「……永……琳……?」
「……お兄……様……?」
――――――それは一つの願いの成就と一つの決断の始まりの合図。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「厄介な所に入ってくれるよ全く」
伊勢の都を遠めに眺めながら萃香はそう呟いた。流石の萃香の能力でもあの結界は越える事が出来ない。七枷虚空が何時あの都から出てくるか分からない以上此処に残るかどうか萃香は迷っていた。
そんな風に思案していた萃香の首元に突然奇妙な裂け目が現れると同時にその裂け目の中から萃香の喉首目掛けて鉄扇が突き込まれる。
萃香は反射的に右腕でその一撃を防ぎ後方に飛び退く事で襲撃者から距離を取る。すると小さい切れ目は大きく楕円形に開き奇妙な空間から一人の女性が現れる。
「最近お父様の周囲で感じていた薄い気配はあなたよね?見た所鬼の様だけど――――もしかして百鬼丸の関係者かしら?」
鉄扇を広げ口元を隠しながら紫は萃香に問いかける。
「……あんたは確か七枷虚空の娘とか言われてた妖怪か」
「私の事はいいわ、それでどうなの?」
「……あんたの言う通り、って言ったらどうするんだい?」
挑発的な表情でそう問い返す萃香に紫は冷めた視線を向けながら、
「決まっているでしょう?貴方を叩きのめして百鬼丸の居所を吐かせるのよ」
やり返すかのように挑発的な笑みを浮かべそう言い放つ。
「――――は……はははははははッ!!!……舐めてんじゃないよあんた!!」
紫の言葉に萃香は声高に笑い声を上げ、そしてまさに鬼の形相で紫を睨みつける。その怒りに呼応するかのように妖気と怒気が迸った。
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