| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

明日の日記

作者:PC眼鏡
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

今更ですよ


「 お腹減った~ 」

とつぶやいてみるが、誰も反応してくれない

僕は学食に1人で来ている

机の端っこの方に座って、周りの目を気にしながらカレーうどんを食べている

周りの目を気に・・・してるのかなぁ・・・



普通は、女神と会ったり自分が人間じゃないと分かったら
大学なんてどうでもよくなるのだろう

しかし僕は違う。

僕が大学に通えているのは、両親が一生懸命働いて学費を払ってくれているおかげだ
周りがどんなに遊びほうけようが、パチンコしようがギャンブルしようが
僕には関係ない

自分の正しいと思う道を進むのみ

その判断が正解か不正解かというのも大した問題ではない

重要なのは、その判断が自分の意志であるかどうかというところだ

自分で考え、自分で行動し、自分で決めることが出来ればそれでいい

僕はそんな事を考えながら生きてきたんだ

これまでも、これからも




そんなことを考えていると、僕の座っている近くのイスに女子のグループが座った

なにやら雑談に夢中のようで、僕のことなんて見向きもしない

・・・実際見られたら恥ずかしいのだが



しばらくすると、今までの話し声より小さい声でひそひそと話し始めた

なんとなく、ほんとになんとなくなのだが 僕の話題のような気がした

聞き耳を立てていることがばれたのだろうか?



とりあえず文句を言われる、もしくは冷たい視線を向けられる前に僕は席を立った









研究室に戻り、研究のノルマをしっかりと消化してから

僕は帰宅の路についた





--------------






今日もやっと昼休みかー

私は仲のいい友達何人かと学食に来ていた

90分の講義で疲れた頭に栄養を補給しないと

「 今日の気分はチョコチップメロンパンかなー 」

「 ランっていつもそれだよね?ww 」

「 飽きないの~? 」

「 てか、毎日そればっか食べて何で太らないの? 」

「 そう! 飽きない! 運動してるから! 」

私はみんなの質問に一気に答えて、レジに並んだ

右手にはチョコチップメロンパン、左手にはコーヒー牛乳を持っている
いつもの昼食だ

人が少ないレジを見つけて、みんなより早く支払いを済ませる

さて、どこが空いてるかなーっと

そろそろ人が多くなってきたので空いてる席も少なくなっている

と、ふと目に入ったのは1人でご飯を食べている男子学生












・・・のとなりの空いている席だった






-----------------






バイトを終えて家に帰る頃には、お月様が顔を出していた

車を駐車場に停めて、自分の部屋までの短い移動の間に空を見上げる

空は晴れ渡っていて、煌々と輝く満月が僕を見下ろしている

お月様はどんな気持ちで僕を、人間を、地球を見ているのだろうか

この限られた地面をめぐって争う人間たちは、さぞかし滑稽に見えていることだろう



月はひとつ

誰のものでもない



そんな事を考えていると、なんだか月と自分が似ていると思えてきた

誰からも干渉を受けずに、誰のためでもなく輝く月は



「 まるで僕のようだ・・・ 」




ってのはさすがに言いすぎか

自分で言ってて恥ずかしい



誰にも聞かれていないことを確認して、一安心した後

僕は部屋に向かった


そして、自分の部屋のドアノブに何か引っ掛けてあることに気づく


「 ? 」


ビニール袋に何かが入っているのが見えたとき、僕は立ち止まった


「 誰だ? 」


犯人の見当が全くつかない

同じ研究室の2人はもういないし、それ以外の友達などいるはずもない

だったら・・・・

最近流行のストーカーだろうか「 あなたをずっと見てますよ 」的な

もしくは、通り魔が爆弾でも仕掛けていったのだろうか



いやいや、あの出来事は発生前に回避したはずなので、今も逃走を続けている犯人は
僕の顔を知らないはずだ

あれは僕の記憶にしか存在しない出来事だ

最近は何故か命の危険にさらされることが多かったので、被害妄想が激しいのだろうか



「 中を見てみるしかないか・・・  放置するわけにもいかないし 」


考えるのが面倒になった僕は、軽い気持ちでビニール袋を手に取った

そこに入っていたのは・・・






「 ポテトサラダ・・・か? 」






タッパーに入っていたので、食べることができそうだ

それと手紙が一通



『 この前のお礼です よかったら食べてください  大井 』






・・・・




・・・・・


・・・・???




・・・・ナニコレ?

全く理解できない状況になってるぞコレ



てかなんでポテトサラダ?   まぁ確かに好きなんだけどさ

ってなると、なんで僕の好物を知ってるのかも疑問に思えてきた

「 誰かに言ったかなぁ?  というか大井さんって誰だっけ 」









謎の差し入れを手に、その場でいろいろと思案していたので

僕が部屋に入ったのは、それから30分後の事だった





--------------







思い出せない

大井さんって、誰だっけ?

たまねぎをスライスしながら考える

大井さんおおいさんオオイサン・・・・



油をひいたフライパンでたまねぎを炒める



大学関係なのは間違いない。 高校までの交友関係は全てリセットしている

大学となると、研究室かバイトか

どちらにも大井さんなんて人はいない


「 それ以外か? 」


僕の記憶に残らないで、僕を記憶に残す方法なんて・・・



フライパンに豚肉を加えて、さらに炒める



この前のお礼ってことは、一方的に顔を知っているとかじゃなくて
何かがあったってことか

最近かぁ・・・



仕上げに焼肉のタレと生姜で味をつける



僕が無意識にやったことに恩を感じているのか、それとも僕が覚えていないだけなのか

出来上がった生姜焼きとご飯で夕食をとる

シャワーを浴び、布団に入る



「 考えてもわからないなら考えなくていいかー・・ 」


もやもやした気持ちを振り払い、瞼を閉じた







---------------------








あの夜のことははっきりと覚えている

私は大学から歩いて家に帰る途中、怪しい人を見かけた

そろそろ春も終わろうというこの時期にハンチング帽を目深に被り
黒のロングコートを着ている



いかにも・・・・な、感じだったので

路地に入り、すれ違わないように遠回りをして帰ろうとした

・・・が、何故か道の先にはあの黒コートが立っている



私はもう一本奥の路地に移動したが、そこにも黒コートがいる



すれ違うだけ

それだけの行為のはずが、頭の中のもう1人の自分がそれを拒否する

私は立ちすくんでしまった

向こうが近寄って来るわけでもなく、ただこっちを見ているだけなのが逆に不気味だ



家に帰れる気がしない



とりあえず大学に戻ろうとすると、後ろにも同じ格好の人物がいる



途端に体中から嫌な汗が吹き出る

こんなにも非日常がいきなり現れるなんて、思ってもいない事だった

・・・思ったところでどうにもならないのだが



今までのぬるい日常があっけなく終わりを迎えた瞬間だった

自分の命って、意外と無用心だ

胸にナイフが刺されば、それで人生オワリ



足が震えだす

声も出なくなる

心臓が口から飛び出すくらいに激しく脈打つ




死ぬかもしれないという極限の精神状態下では、冷静な判断ができるはずもない

そのときの私は考えるのを止め、無心で歩き出していた





黒コートが近づく





そしてすれ違う瞬間、体が引っ張られた





地面に転がされて頭を打ったが、冷静さを取り戻しきれていない頭が
現状を理解しようとフル回転する

さっきまで棒立ちだった黒コートが、手にしたナイフを振り切った体勢で止まっている

切りつけられたと分かり自分の体に傷が無いか探すが、どこにもない



「 これヤバイでしょ! 」



気づくと自分の後ろに立っていた男が私を強引に立たせる

おそらくこの人が私を引っ張って助けてくれたのだと思った

そして手をにぎり走り出す



「 とりあえずウチに! 」



・・・・・






その人の部屋はキレイに片付いていた

震える私に、あったかいコーヒーを渡した彼はいろいろな話をしてくれた
好きな食べ物、自分の非凡でいて妙なところ

朝が来るまで私の側にいてくれた。   



         うれしかった



今度何かお返ししないとな








・・・何がいいかなぁ 
 

 
後書き
ランさん登場 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧