久遠の神話
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第百四話 最後の戦いの前にその十一
「だからこそ」
「強いですね」
「けれどね」
「それでもですか」
「今の貴方なら」
剣士として多くの戦いを経てきた彼ならというのだ。
「勝てるわ」
「そうですか」
「そう、だからこそ出すのよ」
そのテューポーンをだというのだ。
「そうするから。いいわね」
「それでは」
「明日、勝つことよ」
「負けることはですか」
「許さないわ」
スフィンクスは上城にはっきりと告げた。
「わかったわね」
「わかりました」
「では明日ね」
「またお会いしましょう」
「この戦いは間もなく終わるわ」
「僕が終わりを言って」
「ええ、そうなるわ」
こうも言うのだった。
「この無益な戦いもね」
「完全にですね」
「そうするのは貴方だから」
こう告げてだった、そのうえで。
スフィンクスは姿を消した、後に残ったのは上城と樹里だけだった。上城はスフィンクスとのやり取りを終えてだった。
樹里に顔を向けてだ、彼女にも言った。
「じゃあね」
「明日ね」
「勝ってくるから」
「まずはよね」
「テューポーンに勝ってね」
「それからよね」
「加藤さんにもね」
彼にもだというのだ。
「勝ってくるから」
「お願いね」
「わかってるよ。それでだよね」
「お祝いの用意は考えているから」
戦いを終わらせたそれのだというのだ。
「だから楽しみに待っていてね」
「うん、それじゃあね」
「本当にもうすぐ終わりなのね」
しみじみとした口調でだ、樹里は言った。
「この戦いも」
「うん、そうだよ」
「随分長いと思ったけれど」
「一瞬の様でね」
「うん、長くも感じるわね」
「神話の頃からの戦いだしね」
何度も転生してだ。
「長い筈だよね」
「そうよね、けれどその長い戦いも」
「終わるんだ」
遂に、というのだ。
「そうなるからね」
「楽しみにしてるから」
樹里は終わりその後のことも切実な顔で言った。
「お願いね」
「そうしておいてね。じゃあ」
「帰ろう」
家にだというのだ。
「そうしよう」
「夜だしね」
「夜にずっといるのもね」
「よくないからね」
「何があるかわからないし」
闇夜に紛れておかしな者が出て来る、このことは昔から変わらない。
「だからね」
「そうだね、じゃあね」
こう話してだ、二人でだった。
家に帰った、その夜もだった。
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