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戦国異伝

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第百六十五話 両雄の会同その一

                第百六十五話  両雄の会同
 義昭の和睦を受け入れた信長はすぐに都に上がった、その際信行、信広に摂津を任せ五万の兵を預けることも忘れなかった。 
 その際だ、信長は弟達に告げた。
「和睦の後で付城を築くとしよう」
「付城をですか」
「築かれるのですか」
「うむ、本願寺だけでなくな」
 ここで信長は西の方を見た、そのうえでこう言うのだった。
「毛利に備えてもな」
「毛利は徐々に勢力を伸ばしておりますな」
 すぐに信広が応えてきた、やはり軍略は信行より彼の方が優れている。その為ここでは彼が言ったのである。
「それでは毛利に備えても」
「播磨には入らせぬ」
 この考えからのことだった。
「本願寺、そして毛利に備えられる城じゃ」
「ではその城は」
「播磨に築こうぞ」
 その国にだというのだ。
「姫路の辺りがよいか、そして奉行は」
「どの者にしますか」
「猿かのう」
 信長は羽柴の名を出してそのうえで彼に顔を向けた、そうして羽柴に対して確かな顔でこう告げたのだった。
「御主に出来るか」
「姫路によき城を築くことがですか」
「そうじゃ、既に安土、北ノ庄に築くことが決まっておるがな」
「姫路にもですな」
「本願寺と毛利への抑えじゃ」
 その二つの目的を果たせる城をだというのだ。
「出来るか」
「必ずや」
 羽柴はその猿面を明るくさせて信長に答えた。
「してみせましょうぞ」
「その言葉偽りはないな」
「面白い考えがありまして」
「面白いとな」
「はい、安土には天守閣なるものを築かれてますな」
「本丸の真ん中にな」
 まさにその通りだとだ、信長も答える。
「そして北ノ庄にもな」
「さすればです、姫路にもです」
「築くか」
「そう考えております」
「左様か、それではな」
「はい、それではその姫路城さながら鳥の様に美しき城にしてみせまする」
「鳥か」
 信長は鳥と聞いてだ、興味を感じ羽柴に問い返した。
「それではどんな鳥じゃ」
「はい、白鷺を」
 その鳥をだとだ、羽柴は言うのだ。
「それを考えております」
「白鷺か。では白じゃな」
「左様です。これ以上はないまでに白く美しい城を考えておりまする」
「面白い、それではな」
「さすればですか」
「その城築いてみよ」
 是非にと告げた、こうしてだった。
 信長は羽柴に姫路への築城も命じそのうえで都に向かった、この際羽柴も同行しているがこれはまだ急がないからだ。
 都にはすぐに着いた、信長はここでまずは兵達に言った。
「御主達も交代で休め」
「休んでよいのですか」
「そうして」
「これまであちこちで戦ってきたのじゃ、休まなくてはな」
「都で、ですか」
「そうして」
「交代でな。風呂に入るなり酒を飲むなりせよ」
 そうして休めというのだ。
「ただ、狼藉はならんぞ」
「はい、わかっております」
「そのことは」
 信長が狼藉を嫌うことは彼等が最もよく知っている、それこそ一銭でも盗めば首が飛ぶ程である。だからそれは彼等も避けることだった。
 こうして兵達を休ませてだ、そうしてだった。 
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