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東方変形葉

作者:月の部屋
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変化と不変の入り乱れ
  東方変形葉11話「裕海、人里へ行く。」

 
前書き
裕海「そういえばさ、この屋台って俺のほかに人間が来るの?」
ミスティア「う~ん、里の人間は滅多にこないね。でもたまに妖怪みたいな人間が来るわよ。」
裕海「?」
ミスティア「巫女とか、魔法使いとか。」
裕海「ああ、なるほど。・・・話が変わるけど、今度この屋台に来るときは、ミスティアのおすすめ料理を出してよ。」
ミスティア「いいわよ。じゃあ、たまにのっている魚がドジョウになったりする、ヤツメウナギの蒲焼ね。」
裕海「え、ヤツメウナギ?俺夜盲症じゃないぞ。」
ミスティア「そんなのじゃなくても、美味しくなくても栄養だけは満点なんだから。それに夜盲症にかかりたかったら、私がいくらでもしてあげるわよ。」
裕海「いや、俺は自力で治せるから意味ないね。俺の能力で。」
ミスティア「あら残念。」
 

 
朝になった。日が昇ろうとしている。そしてこの時間に決まってやってくる人がいた。
「いやあ~、やっぱり朝は和食よね。」
そう、博麗霊夢だ。別にこの説明はするだけ損するのだが、まあ気にしないでおこう。それにしても、朝には洋食と和食、どっちがあうのだろうか。
「ごちそうさま。じゃあね。」
そしてすっと食べてすっと帰っていく。何かの旅人みたいだな。さて、俺もそろそろ出かけよう。



人里。幻想郷唯一の人が多く住む場所。
「どこの店に入ろうか・・・ん?」
鈴奈庵と書いてある看板を見つけた。どうやら貸本屋らしい。
「いらっしゃいませ~。」
俺と同い年ぐらいの少女がいた。
「おすすめの本はあるかな?」
「おすすめ!!はい!!」
あれ?目が輝きだした。どうやらよっぽど紹介したいものらしい。
「これです!!」
そして出てきたのは・・・
「・・・暗号?」
「いえ、妖魔本です!」
妖魔本?初めて聞いたな。
「簡単に言えば妖怪が書いた本ね。人間には読めないのですけど。」
この子は読めるのか?
「君は読めるの?」
「いいえ!!」
あっさりばっさり。読めないんかい。まあいいや、俺は読めるから。頭の中で言語を変化させ、読み解くことができる。ぱらぱらとみていくと、案外面白いことが書いてある。
「えっ!?あなたは読めるの!?」
「ああ。俺は妖怪じゃないけど、俺の能力で読めるようにしたんだ。」
というか読めないのになんでおいてあるんだ?
「へ~。妖魔本が読める人がいて助かったわ。あなた名前と年は?」
「葉川裕海、15歳。」
「ふ~ん、年は私と同じくらいね。私は本居小鈴。よろしくね。」
「ああ。よろしく。」
お互いに少しだけ微笑む。
「そういえば、里では見ない顔だけど、あなたもしかして外来人?」
「ああ、よくわかったね。」
そしてさらに目の輝きが増す。
「外の世界ってどんな感じ?」
「う~ん、どんな感じ~?えっと、幻想郷より近代的なところかな。」
「たとえばたとえば?」
興味津々だな。子供みたいに聞いてくる。
「自動で開くドアがあったりしてね・・・」
この後、30分くらいこの話は続いた。






「おじゃまするわよー・・・あら?」
客が来たようだ。
「へーすごーい!!そんな進んだ技術があるんだー!!」
「ああ。あ、来客だぞ。」
「え?あ、いらっしゃ~・・・って阿求かい。」
どうやら知り合いのようだ。
「借りていた本を返しに来たんだけど、その子は誰?里では見ない顔だけど。」
人里って狭いのかな?見たことがないって。
「2か月前にここに来た外来人なんだって。」
「外来人!?早速取材しなきゃ!!」
「え、取材?君は新聞記者か何か?」
「いいえ、幻想郷縁起を書いているの。」
「幻想郷縁起?」
なにそれ、聞いたことがない本だな。
「幻想郷に住む力ある住民の情報を載せて、万が一人間がその住民に襲われても対処できるようにするために書いているのよ。もっとも、今の幻想郷は平和だから、ただの読み物となっているわね。」
「人里にも、人を襲わない約束でやってくる妖怪がたくさんいるのだけどね。じゃなくて取材よ!!」
取材も30分くらい続いたとさ。






「じゃあ、少しだけ借りていこうかな。」
借りた本は2冊。結構面白いことが書かれてある魔導書と、妖魔本だ。
「はい!ありがとうございます!!」
「ふむ、これでよしっと。取材に協力してくれてありがとう。“変化の現人神”さん。」
「・・・え?今なんと?」
よく聞こえなかったのかな?今、変化の現人神って聞こえたけど。
「あなたの二つ名を考えたの。」
「あらいいじゃない!!神様だって!ありがたや~ありがたや~。」
「なんとも恐れ多い二つ名だね。まあいいか。あ、腹減ったな。2人とも、どこかいい店とかある?」
もしあったら行きつけの店にしようかな。
「それなら美味しい蕎麦屋があるわよ。せっかくだし一緒に行きましょ。ね、小鈴。」
「そうね、あそこの蕎麦を食べるのは久しぶりね~。ちょっとまってて、お母さんに言ってくる。」



「おや阿求、偶然だな。」
「あ、慧音さん。こんにちは。」
「上白沢先生だ!こんにちは!」
いい店に行く途中、寺子屋と書いてある建物の前で知人と思われる人と話を始めた。
「この人は誰?」
「ああ、裕海は知らなかったね。寺子屋の先生の上白沢慧音先生だよ。」
先生?教師をしているのかな?たしかに、見た目は博識っぽい感じがするが。
「あれ?君は里では見たことがないぞ?外来人か?」
「ああ。葉川裕海だ。あ、敬語の方がいいかな?」
紫に、敬語は別に気にしなくていいといわれたのであまり使ってないが、さすがに目上に生意気な態度は見せられない。
「気にしなくてもいいぞ。勉強したかったら、いつでも我が寺子屋に来るといい。」
勉強ねえ、ここに来てから全くしていないから少しぐらいはするかな?
「お、慧音。偶然だな。」
「ああ、妹紅。」
白い長髪で、赤い瞳の人が現れた。
「先生、この人は誰?」
「私の友人の、藤原妹紅だ。阿求はもう知っていると思うけど。」
「ええ。幻想郷縁起に載せるために取材をしたからね。」
長髪もんぺの人がこっちを向いた。
「おい慧音、その子は誰だ?」
「葉川裕海という外来人らしい。」
「そいつ、妙な力を感じるぞ?能力持ちか?」
「ええ、この人は“変化”を操る程度の能力をもっているのよ。」
小鈴が答えた。
「へえ~、かなり怖い能力だな。まあ、よろしくな。」
「ああ、よろしく。」
握手を求めたので、しっかりとその手を握る。・・・なぜかその手は妙に熱かった。





慧音と妹紅に別れを告げ、歩くこと数分。蕎麦屋に着いた。
「親父さん、天ぷらそば3つね。」
「へいまいど。おや、少年。彼女が2人もいるのかい?大胆だねえ。」
「い、いや、そういうのじゃないよ。」
蕎麦屋の親父さんがからかってきた。
「ははは、冗談だよ。とびっきり美味しいそばを作ってやる。」
なんだか、人里の人たちはとても人がいい。なかなかいいところだ。
「そういえば仕事とかしているの?」
「ああ。この近くの店で、作った人形を売っているよ。まあ人形師といったところかな。」
自分でも、なぜこんなにあっさり職に就いたのか謎だ。
「へ~、こんど私にも作って!」
「あ、私も欲しいわね。」
「ああ、いいよ。メモメモ。」
いつも持っている、緊急用のメモにペンを走らせる。そして書き終えたと同時に蕎麦が来た。
「へいおまち!天ぷらそば3つだよ!」
「わあい!」
蕎麦は、ダシの上品な香りと天ぷらの香りが合わさって、絶妙な匂いになり、食欲を増進させた。
「「「いただきたーす」」」
一口食べてみると、思わず目を全開させるほどおいしい。ダシと天ぷらと麺が絶妙にあい、バランスが取れている。文句なしの蕎麦だ。
「どう?おいしいでしょ。」
「すごいおいしい。こんな美味しいそばをたべたのは初めてかもしれないな。」
外の世界であまりそばを食べていないけどね。でもうまいのは確かだ。
「そうでしょ?この店特製の秘伝のダシを使っているらしいよ。幻想郷縁起のおまけコーナーに載せようかと思うくらいよ。」
「へへへ、そんなに褒めるなって。」
親父さんが照れくさそうに自分の頭に手を乗っけた。



蕎麦屋を出ると、ある声が聞こえた。
『大変だーっ餓えた妖怪の大群がおそってきたぞーっ』
「えっ!?」
その声は、悲鳴にも近かった。
「たいへん!!どうしよう、避難しよう!!」
「・・・いや、俺は妖怪を止めにいってくる。」
すぐに行かなければ。こんなにいい人里が妖怪の手で支配されるのはつまらない。
「危険だよ!!ああっ、走って行っちゃった・・・」
「追いかけましょ!!」
「え、あんた本気!?」
「彼になにかあったらどうするのよ!とにかく行くわよ!!」
「あ、ちょっと・・・もう!」



―人里近くの森―
『にんげんはどこだ~っ』
「くそっ!なんて数だ。慧音と私じゃあ手におえない!!」
「博麗の巫女を呼ぶか。それまで抑えててくれ!」
「成敗」
「「?」」

異変「異次元空間の大量発生」

”麻痺の変化”をいじり、反則級の弾幕を撃ちつける。当然、勝負の時はこんなに弾を出してはいけないけど。
「あの妖怪共を一瞬でひるませた!?」
慧音と妹紅が驚きの声を上げていた。
よしよし、妖怪達の動きが止まったな。
「さて、もう一泡吹かしてやろうかな。“痛覚の変化”をいじって・・・」

天変「局地的大彗星豪雨」

超痛い光線を放つ。
『ぐああああ!!人間ごときにぃぃぃぃ!!』
妖怪たちは山のように積み重なっていった。
「裕海!?なぜここに!?」
「ああ、あんな大群を一瞬で倒すなんて・・・」
「さて、どこに送ってやろうか。そうだ!」
スキマを開き、妖怪たちをその中へ放り込む。



「尾行してきたのはいいけど、一瞬で倒しちゃったね。」
「え、ええ。すごい力ね。」
あれ、いたのか。あの子たち。
俺が二人の存在に気が付いたそのとき、その二人を残っていた妖怪が襲った。
「わっきゃあああああっ!!」
「きゃあああっ」
あぶないあぶない、まだ残っているやつがいたのか。
「そいっ」

神変「建御雷命のお怒り」

2人に当たらないようにするのは結構厳しいが、まあ何とかなった。
「おまけして、“痛覚の変化”をぎりぎりまでいじるっと。」
『がああああああああああ!!!』
「「!!」」
「ふう、二人とも大丈夫?」
「「うわ~ん!!」」
二人とも思いっきりとびかかって抱きついてきた。思わず体勢を崩し、地面に倒れこむ。どうやら相当怖かったようだ。
「裕海、助かったよ。ありがとう。」
「お前、スキマを開くことができるのか。驚いたよ。そういえば、あいつらをどこに送ったんだ?」
妹紅が聞いた。そして俺は少し不気味に笑いをこぼす。
「無縁塚。ああ、万が一暴れても対処できるように、力をかなり小さくしたから。」
「容赦ないな・・・」
うん、俺も思った。だけど、このぐらいはしないとね。


―無縁塚―
「すこしやりすぎな気もしますが、まあいいでしょう。あなたたち、死んでいないことをあの人間に感謝しなさい。」
力を束縛され、ついでに体も縛られた妖怪たちがいた。
『だれが人間なんかげふぅっ』
「おっと、暴れちゃあいけないよ。といってもあの人間が気を遣って力を出せなくしたみたいだからよわよわパンチしか出せないだろうけどね。」
「その妖怪たちの処分は決まりました。ついでに、小町のサボりのお仕置きも決まりました。」
「ええ!?」






(取り乱しちゃったとはいえ、抱きついちゃった・・・しかも今日知り合った人に・・・これは鈴奈庵の娘として情けない・・・でも・・・うぅ~・・・)
「ん?どうしたの?」
「い、いや、なんでもないの、えへへ。」
「?」
あの後、小鈴が驚いた拍子に腰を抜かしてしまって、こうしておんぶをして鈴奈庵に送っている。ちなみに阿求はなにか考え事をしながら帰って行った。顔が真っ赤だったけど大丈夫なのだろうか。
「よし、着いたよ。」
「うん、ありがとう・・・おかーさーん。」
「何?ってどうしたの小鈴!?」
母親と思われる人は、驚いていた。
「腰を抜かしちゃった。で、この人におんぶしてもらったの。」
「まあまあご親切に、ありがとうございます。」
「いえいえ。よいしょっと。」
「ありがとうね、裕海くん。」
「ああ、じゃあね。」



「で?」
「でって?」
「あの子は彼氏?」
「ち、ちちちがうわよっ。」
「ふ~ん?青春っていいわね~。私も若いころは・・・」



―裕海の家―
「はあ~い」
空間が裂け、紫が現れた。
「あ、紫。どうしたの?こんな夜に。」
「差し入れよ。はい、外の世界の店で売っていたのよ。」
「へえ、あっチーズケーキじゃないか。ありがとう。」
上品なチーズケーキの香りが、袋越しにわかる。
「ふふ、そういえば人里で活躍したそうじゃない。」
「ん?ああ。あんなのちょっと痛めつけただけだよ。」
「人里で英雄みたいな扱いになってるわよ。やるじゃない。」
英雄?というか、噂流れるの速いな。
「そんな恐れ多い。あ、そういえば藍と橙は元気?」
「ええ、2人ともあなたに会いたがってるわ。たまにでもいいから、顔を出してね。」
「ああ、そうするよ。」
「ふふ、それにしても、早速二人を落としちゃうなんて。」
「ん?なんか言った?」
「いえ、なんでもないわ。」



続く 
 

 
後書き
11話書き終えました!!疑問に思われた方がいらっしゃると思うので説明しますが、小鈴はまだこのときは能力に目覚めていません。目覚めるのはもう少し先の話になります。ちなみに、裕海の二つ名は悩みに悩んだ末、変化の現人神になりました。他にも考えています。では!! 
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