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久遠の神話

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第百二話 教会にてその九

「そして」
「最後の戦いを経て」
「この気が遠くなる頃から続いていた戦いも終わります」
 大石は未来を見ていた、それは彼にとっては間違いなくそうなるものだ。それを見ながら聡美に語るのだった。
「しかし問題は」
「お姉様がですね」
「どうされるかです、声が」
 セレネーである彼女が、というのだ。
「それが問題ですが」
「その時はです」
 聡美は確かな、覚悟をきめている声で大石に答えた。
「お任せ下さい」
「貴女達がですか」
「戦いますので」
 誰と戦うのかは言うまでもなかった。
「ですから」
「そうですか、貴女達もまた」
「決めています」
 聡美達もだというのだ。
「ですから」
「辛いですね、貴女も」
「私はずっと自分のすべきことから逃げていました」
 こうも言ったのだった、聡美は。
「お姉様を止めるには私がお姉様と闘うしかないと」
「闘いたくはなかったのですね」
「はい、どうしても」
 弱さ、己のそれを見せている言葉だった。
「しかしわかっていたのです」
「あの方と闘わねばならないことを」
「お止めするには」
 自分がだ、そのことはわかっていたというのだ。
 しかしだ、それでもだったというのだ。
「ですが逃げていました」
「親しい方だからですね」
「本当の姉妹と同じです」
 聡美と彼女の関係、それはというのだ。
「ですから」
「人は戦えない相手がいます」
「どうしてもですか」
「神であろうとも。神と人の心は同じですね」
「そうです」
 このことはギリシアの神々ならばとりわけそうである。ギリシアの神々の性格は極めて人間的だからだ。
 それでだ、聡美もなのだ。
「私もまた」
「ですから」
「私の心はですか」
「わかる気がします」
 そうだというのだ。
「気がするだけですが」
「左様ですか」
「はい、そうです」
「そうですか。しかし戦いを終わらせる為には」
 声の主であるセレネー、彼女とだというのだ。
「戦わないとならないです、私もまた」
「その為にですね」
「アテナ姉様とペルセポネーも来てくれました」
 無論だ、彼女達も覚悟を決めて来ている。自分達が姉と慕う声の主と戦い彼女を止めることをである。
「ですから」
「必ず、ですか」
「覚悟を決めて」
 そうしてだと言うのだった。
「戦いに赴きます」
「そうですか、それでは」
「私達も戦います」
 大石達と同じく、というのだった。
「では」
「はい、それでは」
 大石も応えてだ、そしてだった。
 聡美は大石に一礼してから礼拝堂を後にした、そして。 
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