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久遠の神話

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第百一話 託すものその十二

「焼き鳥だな」
「工藤さんもですか」
「ああ、それだな」
「焼き鳥でビールか焼酎ですね」
「あの組み合わせはな」
「相当なものですよね」
「暴力的ですらある」
 そこまで美味いのは確かだ、焼き鳥はビールや焼酎と最高の組み合わせを見せる料理の一つであるのだ。
「焼きそばやお好み焼きもだがな」
「ですよね、じゃあ今回は」
「焼き鳥だな」
「一佐にもお話しましょう」
「それでいいとな」
「そういうことで」
「ではです」
 声がここで二人にあらためて言ってきた。
「これで貴方達は自由になりました」
「戦いが終わった」
「それでだね」
「そうです、これで貴方達とはお別れになります」
 自分から言った声だった。
「剣士としては」
「あんたは嫌いじゃない」
 工藤は声がする方に顔を向けて言った。
「今でもな」
「貴方達を利用していてもですか」
「気持ちはわかる」
 だからだ、嫌いではないというのだ。
「それに約束も守ってくれる、悪いものも感じないからな」
「だからですか」
「ただ。道を誤っている」
 そこが問題だというのだ。
「そのことに気付いているか」
「私自身が」
「それはどうなのかだがな」
「気付いているとしても」
 それでも返した声だった、彼女の言葉を。
「もうすぐなのです」
「だからか」
「そうです、止めません」
 絶対にという口調での言葉だった。
「これまで。何とか力を集めてきましたから」
「だからか」
「はい、何があろうとも」
「悲しいものだな」
 同情は向けなかった、声の心を知って感じた感情をありのままに出した言葉だ。工藤が今言った言葉は。
「それは」
「悲しいですか、私が」
「そう思う」
 こう言うのだった。
「実にな」
「そうですね、俺もそう思います」
 高橋も言った、ここで。
「今の女神さんの言葉を聞くと」
「同情はしないがな」
「それでもですよね」
「悲しいな」
「本当に」
「だが、だ」
 悲しみは確かに感じる、しかしだった。
 それでもだとだ、工藤は声に対して言った。
「俺達はもうこの戦いから降りた」
「それならですね」
「あんたに関わることはない」
 剣士でなくなった、それでだ。
「あんたのことはあんたのことだ」
「そして剣士のことだからな」
 高橋も言う。 
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