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久遠の神話

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第百一話 託すものその十三

「後はな」
「自分でどうにかしてくれと言うしかないよ」
 こう言ってだった、二人は。
「あんたのことだ」
「だからね」
「私は決めていますので」
 揺るぎない言葉だった、声の返事は。
「ですから」
「だからか」
「動じないんだね」
「そうです」
 もう、というのだ。
「あの人と。必ず」
「永遠にか」
「生きるつもりなんだ」
「そうです、私はあの人と永遠に生きる為に」
 神話の頃から願っているこのことの為にというのだ。
「何があろうともです」
「この戦いで力を集めてか」
「そうして」
「あと少しでそれだけ力が集まります、ですが」
「この戦いで集まらなければか」
「また俺達の魂を戦わせて」
「力を集めます」
 執念、いや妄執だった。その声は。
「何としても」
「やはり悲しいな」
「全くですね」
 二人はまたこの言葉を出した、声の言葉を聞いたうえで。
「そこまでするとは」
「どうにも」
「私は何を言われ何を思われようともと決めています」
 これもだ、神話の頃からだった。
「ですから」
「そうか、ならな」
「俺達は今の人生のことしかわからないから」
 人の魂は同じでも人格、記憶、器は違う。だから彼等にしても次の人生のことはわからない。例え戦いの中にあっても。
 だからだ、こう言うのだった。
「何とも言えないからな」
「このことはね」
「そうですか、それでは」
「後は彼に任せる」
 工藤は最後に声に告げた。
「上城君にな」
「では俺達はこれでね」
 高橋も言った、そしてだった。
 二人は声に背を向け戦いから去った、そうして。
 一佐に対して報告した、同時に何をご馳走してもらいたいのか。一佐は自身の席で全て聞いてから微笑んでこう言った。
「わかった、ではな」
「はい、後はです」
「彼が果たしてくれます」
「その少年に任せよう」
 微笑んでこう言うのだった。
「後はな」
「彼ならやってくれます」
 工藤が確かな声で一佐に言った。
「上城君なら」
「相当な強さだな、話を聞く限り」
「そうです、私以上にです」
「剣士として強いか」
「ですから必ず」
 この戦いを終わらせられるというのだ、上城なら。
「そうしれくれます」
「そうか、ではな」
 一佐は工藤の言葉を聞いて頷いてだ、こうも言ったのだった。
「一度会いたいな、彼に」
「上城君にですか」
「自衛隊は常に人手不足だ」
 募集率は高くなっている、しかし慢性的な人手不足にも悩んでいる。質を選ぶ組織であるのは日本軍以来の伝統でありどうしてもこうなるのだろうか。 
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