東方魔法録~Witches fell in love with him.
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19 卒業~The scars left by the affair were still visible.
俺はおもむろにマロウの手帳を取り出して開いた。そこには数多くの手品がかかれている。マロウはどんな思いでこの手品を書き綴ったのだろう。
ページをめくり、やがて手帳を閉じた。紅魔館を整理していると出てきた手帳だが、マロウの過去をレミリアから聞かされた俺は何だか捨てる気になれなかったのだ。
銀時計で確認すると集合時間になりかけていたので時計と一緒に手帳を魔法を使って仕舞い、自室を後にした。
ウェネフィクス。かつて魔法の街として栄えてた街だが、マロウのせいで壊滅状態にある。具体的に言うと更地。ある場所を除いて何もかも、建物ですらマロウによって魔力に換算されてしまい、以前のような活気の面影すら残っていない。
そんな中、唯一マロウの影響から逃れた学園では生き残った学生の生存者確認が行われていた。
「生存者は名前をお書き下さい!二重処理を避けるため本人が書いてください!」
生存者リストを作るため俺達は列に並ぶ。そもそも生き残った学生が少なかったのですぐに順番がやって来た。
「あ、明希君にパチュリーちゃん。君たちの名前を書いてもよかったんだけどやっぱり本人が書かないといけないって」
「あ、ベベさん。マロウ家の後片付けで忙しいのにお疲れさまです」
「ベルです!親子そろって間違えないで下さい~!これも仕事の内…って言うか元々こういった書類整理の方が本業なんだけどね…」
「冗談です。いや、なんかお約束な気がして」
紙に自分の名前を書いてペンをパチュリーに渡す。パチュリーも名前を書いたところで俺達はベルさんに挨拶してその場を後にした。
それから俺達はレイレウ、エリーと合流してこれからどうするか話し合った。
「俺とパチュリーは紅魔館に住むとして、お前らはこれからなにするんだ?」
「わ、私、く、薬屋を作る!」
俺の質問に真っ先に答えたのは意外にもエリーだった。実にエリーらしい答だった。
「間違ってすけこましになる薬とか売らないでよ?」
「う、うぅ。わ、わかってるよー…」
「レイレウはなにするの?」
このお調子者の達は何をするんだろう?
「俺達はこの街を復興させるぜ」「後のことは復興させたら考えるさ」
こちらも意外だがまともな考えだった。
「そうか、俺達もたまには手伝うからさ」「頑張りなさいよ」
「この熟年カップルめ」「マネするなよな」
アハハと笑い合いそれきり俺達の間に沈黙が訪れた。話題がないのだ。苦楽を長い時間共にしたからこそ、お互いに何について話せばいいかわからないし、この状況下で話題を振るのは難しい。
「これから魔法使いの世界はどうなってしまうのかな…」
出てくるとしたら暗い話。だが、お調子者のレイレウがそれを好むはずがなかった。
「シケた面すんなよ」「どうせならパーっといこうぜパーっと」
「例えば?」
俺がそう言うと二人は同時に悩みだすこと五分。お互いに会話をしてないのに答えがハモった。
「「卒業式!」」
「「「…はぁ?」」」」
俺とパチュリーとエリーも打ち合わせてないのにハモった。
レイレウが手配して先生達に俺達が卒業式を出来るようにした。レイレウが何かやらかすそうだが先生達は「この暗い雰囲気をどうにか出来るならいい」と言っていた。先生ェ…
だが、先生はこの許可を出すことに少しだけ後悔することになるのだった。
卒業式は翌日に行われた。対象は全員。学園は廃校になるそうだ。レイレウはいつか復校させると意気込んでいた。
先ずは普通に入場。各々指定された席に座る。言うまでもないがパチュリーは隣だ。
開式の辞や司会進行はレイレウが務める……とっても嫌な予感がするのは気のせいだろうか…?
「えー皆さん。こんな状況に集まってもらってありがとうございます」「今日は湿気た雰囲気なんてぶっとばしますので」「「覚悟してください!」」
以上で開式の辞は終わりらしい。早いな。
「時間や文字数も押してますので」「卒業証書授与!」
おい。メタいぞ。そんな俺の気持ちなど梅雨にも考えずいきなり卒業証書授与が始まった。
校長役のレイがハゲのカツラを被ってステージに上がった。レウは補佐役だ。
始めに呼ばれた人達は昨日レイレウとこそこそしていた人達だった。
「○ョセフ・○ョースター!「お前の次のセリフは『卒業証書授与!』という!」卒業証書授…なにっ!」
……なんだあいつら?
「私、前田○子はAK…「言わせねぇよ!?」を卒業します!」
おいおいおいおい!なに漫才やっているんだよ!
こんどは突然パンツ一丁になった人が壇上にあがってレイに向かって言った。
「俺は学園生活でとても地味でした。どうすればいいですか!?」
とか叫び出して、レイはそれに
「知らん。君、その程度でめだてると思ったのか?」
と返した。
…………なんなんだよこいつらは…。俺とパチュリーはあきれ返っていたが周りは大爆笑。エリーですら笑っている。…あいつらの目論見は成功したってことか…
「次!明希・へルフィ・水原!」
今度は俺の番らしい。何が起きるかわからないがステージの上に上がるしかない。
「独身卒業証書授与!」
「俺はまだ結婚してねぇ!」
「さっさとパチュリーと結婚しちまえよ~。しょうがない。童貞卒業証書じゅ……」
パコォォン!!
俺は思いっきりレイの頭をひっぱ叩いた。それに兆が一に受け取るとしても俺はまだ童貞だ。チラッとパチュリーの方を見ると顔を赤くしていた。……あ、目が合った…気まじぃ……
俺はレウから卒業証書を引ったくってステージを後にした。
このあとも全校生徒の方に振り返って証書を足元に置きつつ「ふつうの女の子にもどります!」と宣言したり、卒業証書をもらった瞬間に破り捨てるといったことを一通り終えて卒業証書授与は終了した。
「盛り上がって来たところで!!」「卒業の歌!!」
すると昨日レイレウと一緒にこそこそしていた奴らがステージに上がり、歌を歌い始めた。
「逆らい続けあがき続けた早く自由になりたかった~♪」
「信じられぬ大人との争いの中で~♪」
「役に立つかもわからないことを詰め込まれ~♪」
「疑心暗鬼になりいったい何を解りあえただろう~♪」
「げんなりしながらそれでも過ごした~♪」
「だけどひとつだけ解ったこと~♪」
「この支配からの卒業~♪」
「やかましいぃぃぃ!!」
俺の魂の叫びは会場中に響き渡った。
「「うはははははははぁぁ!!!!ちょーー面白かった~!!」」
卒業式が終わって俺達は集まって駄弁っていた。
「全くよ…明希に…その…あんな物を渡そうとするなんて…」
「なに?パチュリーも欲しかったの?」「ならあげるよ処女卒業しょ……」「「痛っ!!叩かなくてもいいじゃないか~」」
何処からか取り出した卒業証書を俺は破り捨てレイレウの頭をひっぱ叩いた。
「ははっ!ふひぃ!あははっ!」
「エリーは何時まで笑ってるのよ…」
エリーはどうやらどツボに嵌まったようでずっと笑い続けいた。明日は筋肉痛確定だな。
「あははっ……はぁ……こ、これでわ、私達は卒業出来たんだね」
「そうさ学園に通わなくなるなら」「これをしなくちゃと思ってね」
「そうね…これからはもう会うことは少なくなるでしょうね…」
パチュリーの一言でちょっとしんみり。だけど今の俺達はそれをはね除ける勇気を持った。
「で、でも!は、離れていても!」
「そうだね。俺達が過ごした時間は消えないしここに残り続ける」
そう言って俺は自分の胸を叩いた。
「離れていてもこの空の下にいるならまた会えるさ」
「明希、何時からそんなロマンチストになったのかしら?べ、別にいいんだけどねその…かっこ……ゴニョゴニョ…」
「パチュリーなんか言った?」
「何も言ってないわ」
「…さて、」「そろそろ潮時だ」
レイレウの言葉で皆は笑顔になり声を揃えて叫んだ。
「「「「「またいつか会おう!!」」」」」
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