機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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desire 9 カガリ・ユラ・アスハ 4
前書き
これで最後です。
私は宇宙から流された映像を信じられない思いで見つめていた。
キラが、ラクスが…死んだ。
何で?
何で何で何で何で何で!!?
どうして助けなかったんだアスラン!!?
私は呆然となり抵抗も出来ずに拘束された。
その後、私は拘置所に収容され、数ヶ月経った後だった。
アスラン達が面会に来たのだ。
ポタリ、ポタリと幾重に重なる頬の跡を追うように、水滴がまた1つ落ちた。
カガリ「どうして…どうして止めなかったんだ!!あいつらは…あいつらは世界のために戦ったのに!!」
アレックス「俺達も、ザフトも世界のために戦った。そしてデスティニープランで世界を平和にしたんだ」
カガリ「あいつらが戦いを望むような奴らじゃないっていうのは、知っていただろアスラン!!なのに、なんでっ!!どうしてあいつらを殺したんだっ!!答えろっ!!!!」
カガリが激情のまま叫んだ。
シンは思わず、眩暈がしそうになった。
分からないとでも言うのだろうか?
想像すらつかないなんて、一体どこまで。
シン「敵だったからだ。ザフトにとってはキラ・ヤマトもラクス・クラインも敵で、倒すべきものだったからだ。」
彼らはザフトにとって、倒さなければならない敵だった。
そしてAAもエターナルも同様に。
カガリ「そ、そんな理由で…!!?」
シン「憎しみの連鎖、哀しみの連鎖。武器を持つな、戦ってはいけない…なぁ、あんたはどれを守ったんだ?仲間が殺されて憎くて哀しいんだろ?」
クレア「仲間が死ぬかもしれないって、それでも平和にしたいって、そんな覚悟で宇宙に上がったんじゃないの?それとも、自分達なら殺されないから大丈夫なんて保証もない自信で気軽に上がってきたっていうの…?いつ死ぬかも分からない戦場に!!?」
命がいつ奪われるかもわからないような場所に。
平和にしたいっていう主張だけ持って、覚悟も責任も全部放り投げて。
ルナマリア「ふざけないでよ!!戦場はあんた達の遊び場じゃないのよ!!」
だって、だってだってだってだって!!
キラは望んでいない戦いを、平和のためだからと戦ったのに!!
辛い思いをして、それでも、平和のために、あいつは一生懸命に頑張ってくれたのに!!
レイ「俺達に憎しみを持ってはならないと言いながら自分達は憎しみを持っても構わないというのは勝手なのでは?」
シン「結局あんた達は自分達の都合を綺麗な言葉で尤もらしく言ってるだけじゃないか!!俺は殺したよ。それで、民間人の家族に、被害者に責められるなら俺は何も言わない。言い訳だってしない…お前らみたいに平和のためだったから仕方がないなんて…絶対に死んでも言うもんか!!」
クレア「いつだってそうだよね!!相手を責めて責めて、自分は被害者面して、戦場では人を殺して!!だからあんた達の声は僕達には届かないんだ!!」
シン「あんたは本当に父親そっくりだよ!!理念のためなら平気で何でも犠牲に出来るところとかな!!」
カガリ「なっ!?」
ハイネ「悪いけどシンに同意見。オーブの話はシンから聞いたけどあんたの父親は状況がどれほど変わっても理念を押し通し、その結果連合の侵攻を招き、その時点でもまだ理念にこだわってプラントと結ばず、戦力差を無視して単独で連合と戦って、当然の如く敗れて連合の支配を許した…信じられない馬鹿だな。馬鹿じゃなかったら途中で頭がおかしくなったとしか思えない」
カガリ「な…な…っ!!?」
ハイネ「連合に支配されたっていうことは、オーブは結局その後の戦争で、連合に加担したんだ。その点から見ても、そのウズミ代表は失敗したって何で気づかないんだよ。オーブの理念は一体、誰のためだ?その理念を守り抜いたことでオーブの国民の中に、1人でも幸福になった奴がいるのか?いないよな?寧ろ怨んでる奴らの方が多いんじゃないのか?」
カガリ「お、お父様だって…悩み苦しんで、決断を…」
目に涙を浮かべ、身体を震わせながらカガリが言葉を搾り出す。
レイ「悩み苦しんで出したからといって、それが正しい決断とは限らない」
アレックス「カガリ、当事者である俺が言えたことじゃないかもしれない。けどいくら尊敬している人間の行動でも、それが間違っていれば、こちらも命をかけて正さなくてはならないことだってある。どれほどの人間でも間違いを犯すものだ。俺達も君も、議長もね」
カガリ「…………」
シン「あんたは、もっと仲間以外の人間の話を聞くべきだよ。同じ考えに凝り固まった奴とばかり相談していても、堂々巡りがいいとこだ。それじゃまずいんじゃないか?あんたが本当にオーブを想うならさ」
カガリ「仲間以外…?」
シン「あんたはキラ・ヤマト達とか、アスハ派の連中以外とまともに話し合ったことあるのか?」
そういえば私は仲間以外に話すことなどあっただろうか?
いつもいつもキラ達とばかり話をしていた。
拘置所から出たアレックス達を紫色の髪の女性が声をかけた。
「もうよろしいのですか?」
アレックス「ああ、ありがとう。すまない、君も代行として色々多忙だろうに」
「いえ、カガリ様の目を覚まさせるにはあなた方の力を借りるしかないと思ったので…」
彼女はアヤカ。
ユウナの従兄弟でカガリの友人であった。
今のカガリに心を痛めてアレックス達を呼んだのである。
アレックス達はこの場を後にし、アヤカは拘置所に入る。
アヤカ「カガリ様」
カガリ「アヤカ…?丁度よかった…話があるんだ」
アヤカ「何でしょうか?」
カガリ「…アヤカ。政治家が国民のためにすべきこととは、何だ!!?」
カガリの問いに後ろにひっくり返りたい衝動に駆られたアヤカは、その衝動との戦いに勝利した自分を褒めてやりたいと思った。
アヤカ「(カ、カガリ様…一応政治の勉強はしてましたよね…?)基礎に戻るのはいいことですけど、ちょっと戻りすぎでは…?」
カガリ「誤魔化さずに答えてくれ!!」
アヤカ「一体どうしたんですか?」
アレックス達との話を聞いてないアヤカは首を傾げるしかない。
カガリ「アスラン達と話したんだ…」
アヤカ「はい」
カガリ「お父様の事を馬鹿だと、理念に囚われすぎて頭がおかしくなったと評した」
アヤカ「そ、それはまた…」
アレックス達も随分とストレートに言ってくれたものだ。
まあ、実際その通りだが、とアヤカは思う。
オーブの政治家の中には、そう考えている者もかなりいるはずだが、一言でもウズミを批判すると、カガリが目の色を変えるため、口を噤んでいるのだ。
カガリ「腹が立った。殴ってやろうかと思った。でも、でも…」
握り締められたカガリの拳の震えが大きくなった。
カガリ「あいつら言った事は…正しいんじゃないかって、思えてならないんだ!!だからアヤカ、教えてくれ!!政治家が国民のためになすべきこととは、一体何なんだ!!?」
アヤカ「そうですね…国民の生命と財産を守る事だと思います。言っておきますが、これは最低ライン。これが出来ない政治家は、無能と言われても文句は言えません」
カガリ「…つまり、お父様は……」
噛み締めたカガリの唇から、赤い鮮血が流れる。
アヤカ「ウズミ様が統治していた頃の殆どは間違いなく名君でした。内政手腕は勿論、中立を貫いた外交手腕も、参考にさせて頂いている政治家もいます。ただ、最後の最後で、理念という誘惑に心を奪われた…」
カガリ「何故だ!?何故、それを今まで黙っていた!!?」
アヤカ「言ったとしても、あなたは聞く耳を持ちましたか?ユウナ様達を、自分の意見を聞き入れない邪魔者としか見ていなかったのは、あなたでは?カガリ様は自分は未熟だ、未熟だ、といいつつ、何であそこまで自分の意見に固執出来たか不思議でなりませんでした。しかしそのうち分かりましたよ。あなたの言う“未熟”とは、自分の意思を通せない事を指していることを…」
カガリ「もういい!!私は…私は一体、今まで何をやってきたんだ…アヤカ。他の首長達が私を無能だと知りつつ、私を廃さなかった理由は何だ?」
アヤカ「…あなたの容姿と飾らない性格は客寄せパンダには持ってこいだからだよ。お兄様達では無理だからね、あなたと同じ事は」
敬語ではない、彼女の素の言葉遣いで言われる言葉には不思議と腹が立たなかった。
カガリ「…よくもまあ、元がつくとはいえ国家元首にそこまで言ってくれたな」
カガリの声が低音を帯びた。
アヤカ「殴られるのは嫌なんだけど?」
カガリ「心配するな。事実を言われても今更腹は立たん。それに、客寄せパンダ程度の役にはたっていたと分かって、ホッとしている」
アヤカ「そっか…」
カガリ「私は…間違えてしまったんだな…もっともっとよく考えていればこんなことには…」
アヤカ「本当に反省してるなら出所して、代表に返り咲いてから活かしてね」
カガリ「え?」
アヤカ「知っての通り、まだオーブにはあなたを慕っている人は沢山いる。あなたにはまだまだ客寄せパンダをしてもらわないと困るの…それに反省してるならそれを証明して。勉強なら私や他の皆が教えてあげるから」
カガリ「…うん……」
カガリの瞳から一滴の涙が零れ落ちる。
まるで過去の弱い自分を洗い流すかのように。
きっと明日からのカガリは今まで以上に光り輝くのだろう。
後書き
カガリ編終わった…
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