機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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desire final 誓い
前書き
シン達がオーブの慰霊碑へと足を運ぶ。
周囲を海に囲まれた島国。
真空に囲まれ孤独に身を寄せ合う故郷。
どちらも閉じ込められた土地、けれど似ていないとアレックスは島国の海を眺めて思った。
この国に、アレックスが任務以外で足を踏み入れるのは恐らくこれで最後。
隣に立つナオトも慰霊碑に向けて黙祷をしている。
幼い頃に失った家族に伝えたいことは沢山あるだろう。
ステラ「…お墓参り……?」
シン「これは俺やナオトの家族の墓参りも兼ねてるんだ…って言っても実際にお墓が有る訳じゃないんだ。戦後に建てられた慰霊碑が有るだけ」
家族を失い、今でも悲しくないと言えば嘘になる。
あれから3年も経つ。
少しでも前に進まなければ…。
すると、後ろから服を引っ張られて振り向くと5~6歳くらいの女の子がいた。
「お兄ちゃんにもあげる!!」
女の子が袋に手を入れ、シンに渡す。
シン「?」
ステラ「何…?」
シンの掌にあるのは花の種だった。
ステラ「お花の…種……ありがとう…」
ステラが礼を言うと女の子は手を振って母親と共に去っていく。
シンは笑みを浮かべながら慰霊碑のある場所へと向かう。
慰霊碑の前まで来ると、既に殆どの面子が来ていた。
レイ「来たか」
クレア「遅いよシン!!」
ハイネ「何してたんだよお前?」
シン「いえ…女の子からこれを貰って…」
ルナマリア「花の種?」
シン「ああ、プラントに戻ったら早速植えるよ。」
ステラ「…ステラ、お世話する。」
シン「うん、一緒に育てよう……やっぱりここから見る景色は変わらないな」
家族を亡くしたシンが、何を思い佇むか計り知れない。
慰霊碑周辺に植えられた花は、潮の香りで芳しさを打ち消されて存在感が薄い。
ナオト「うん…お父さんとお母さんが生きていた頃と全く変わってない……」
ルナマリア「ナオト…」
クレア「……風が冷たいね」
レイ「そうだな…」
クレアの言葉にレイは応じた。
ハイネ「ほら、お前ら。1本ずつな」
並び立つと、ハイネから差し出されたのは花束から抜き取られた白百合をそれぞれに1本ずつ。
シン「ハイネ…?」
アレックスもナオトもルナマリアもレイもクレアもステラも、そしてハイネ自身もそれを手にし、困惑しながら自分も受け取ったシンは、その手元に先ほどは見えなかったオレンジ色のリボンを見つけるとハイネの意図に気づく。
オレンジ色のリボンが捲かれた、白い花束。
オーブで亡くなったシンとナオトの家族のための物。
多分ハイネなりの献花なのだろう。
ハイネ「みんなで一斉に投げるか?」
ルナマリア「いえ、ここは1人1人投げませんか?クレア、ハイネ、ステラ、私、レイ、アレックス、ナオト、シンの順番で」
アレックス「そうだな」
海へ、花を投げる。
ルナマリアが言った順番通りに。
ナオト「(お父さん…お母さん……)」
ナオトは花を投げると亡くなった両親を思いだす。
まだ幼かった自分を守るためにブルーコスモスの連中の銃弾の盾になった父と母。
父と母が自分を守ってくれたおかげで自分は今ここにいて、アレックスと共にいられる。
ナオト「(お父さん…お母さん…ありがとう…私、幸せになるから……)」
白は淡い飛沫を上げて、ぷかぷかと浮いた。
深い色に浮き立つように。
花は、少しずつ、攫う波に遠くへ運ばれるのだろう。
クレア「終わってしまったね。デスティニープランも施行されて、戦争が起きることは無くなった。さてと…これから僕達はどうしようか?」
クレアは空を見上げながら口調だけ愉快そうに。
ナオト「この平和が無くならないように守り続けていかないと…」
ハイネ「……そうだな」
ルナマリア「帰りましょうプラントへ。そして守りましょう。プラントを私達が。あそこには大切な物が沢山あるから」
レイ「分かっている。まだクライン派の残党、過激派が残っているからな」
ハイネ「明日からまたハードスケジュールだぜ」
ハイネは視線を巡らせながら言った。
その視線は空を見上げて、その大空の先、宇宙にあるプラントを見上げていた。
クレア「やっと戦争は終わったけどこれからもプラントを守るために僕達が頑張らないと…」
シン「ああ、これから先、どんな困難が待っていたとしても、俺達は負けない。」
アレックス「そうだな、この平和を仮初の物にしてはいけない。この平和を永遠に続けさせる。それが、俺達“人類”の戦いだ」
ルナマリア「そうですね…」
シン「帰ろう、プラントへ」
自分達の故郷プラントに。
その時であった。
アレックス「…?」
ステラ「シン、綺麗な音が聞こえるの」
シン「え?」
ステラが綺麗な音にはしゃいだように言った。
レイが言われて耳を澄ます。
レイ「ピアノの音だな」
ルナマリア「でもどうしてピアノが?ここは市街地から大分離れてるのに…」
ハイネ「何なんだ?」
頷いてすませた耳が拾う音にアレックスは微笑んだ。
それはいつか聞けたならと夢想した音。
アレックス「ニコル…ようやく聞けたな…。確か…“友情のテーマ”だったよな?とびっきりの演奏をありがとう」
懐かしそうに目を閉じてその音に聴き入るアレックス。
かつての自分達のために作曲した“友情のテーマ”
気のせいか優しい彼の声が聞こえた。
ニコル『はい、またとびっきりの演奏をお聞かせしますよアスラン、ナオト…』
ナオト「っ!ニコル…?」
ナオトは思わず振り向いた。
今のは間違いなくニコルの声だった。
レイ「…ニコル・アマルフィ」
アレックス「ニコルを知っているのか?」
レイ「俺がピアノを始めたのも…偶然聴いた彼の音が始まりです」
アレックス「そうか…」
ナオト「アレックス…?」
ステラ「…?」
アレックス「…ニコル」
未熟だった当時の自分を思い出す。
あの頃と比べて自分は前に進めただろうか?
進みたいと思う。
隣にいる彼女と共に。
アレックス「思いもよらないもんだな、人生は。だけど、後悔だけは絶対にしない。誰でもないこの俺が決めたんだからな。だから…見守っててくれ…ニコル。さあ、帰ろう!!」
シン、ルナマリア「「はい!!」」
ステラ、クレア「「うん」」
レイ「はい…」
ハイネ「おう」
ナオト「帰ろうプラントに」
アレックス達はプラントに戻るべく、手配したシャトルの元に向かうのだった。
後書き
機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~完結しました。
最後までこの作品を読んでくれてありがとうございます。
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