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久遠の神話

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第九十八話 道場にてその十一

「私達にも私達の考えがあり動いていましたから」
「だからか」
「はい、ですから」
 それでだというのだ。
「お礼はいいです」
「そうなんだな、まあ家に来たらな」
 その時はというのだ、中田は聡美達三人の女神達に笑顔で話した。
「何か振舞わせてもらうな」
「ではそれをお礼として頂きます」
「そうしてもらうな、ではな」
「はい、それでは」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 中田は道場を後にした、この際上城と道場に礼をするのを忘れなかった、そのうえで彼は今日は姿を消した。
 上城もだ、ほっとして満足している顔で樹里のところに来て言った。
「それじゃあ僕もね」
「帰るのね」
「うん、よかったよ」
「中田さん倒さなかったね」
「何かね、心の何処かでわかっていたんだ」
「心の?」
「うん、僕達は倒し合う闘いじゃなくてね」
 そうした闘いだけではない、そのこともわかってだった。
「ああしてね」
「学ぶ為の闘いね」
「そう、剣道だよ」
 二人が行ったその闘いこそがだというのだ。
「剣道をしたんだ、僕達はね」
「中田さん上城君に教えていたわよね」
「攻め方をね」
「あれがなのね」
「そう、剣道になるんだ」
「そうだったのね」
「うん、中田さんに大切なものを教えてもらったよ」
 彼の剣士としての最後の闘いでだというのだ。
「物凄くね」
「そうなのね、それじゃあ」
「うん、剣道でね」
 ここで言ったのは剣道だった。
「凄く役に立つよ」
「剣道なのね」
「それがどうしたの?」
「剣士の戦いではないのね」
 樹里が言うのはこのことだった。
「そちらでは」
「そうだね、剣士としての戦いもあるけれど」
 それでもだというのだ、上城の心にあるのはやはりそちらだった。
「剣道をやっていてね。どうかなんだ」
「攻め方を教えてもらって嬉しいのね、剣道の」
「そうだよ、それで中田さんの剣道の考え方も生き方も教えてもらったよ」
「あれっ、そうなの」
「剣からね」
 中田のあの二本の剣からだったというのだ。
「教えてもらったよ」
「そうだったのね」
「こう言うと駄目かな」
「ちょっと。私剣道はしないから」
 だからだというのだ。
「そうしたことはね」
「剣道をやっていると言葉だけじゃなくてね」
「実際にああして闘うことからも教えてもらうのね」
「普通は稽古でだけれどね」
 そうしたやり方でだ、教わるというのだ。
「そういうものだから」
「そうなのね。ただね」
「ただって?」
「上城君と中田君は倒し合う為に闘ったんじゃないのね」
「そうだね、違ったね」
 それはだとだ、上城もそのことを認めて頷いた。 
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