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久遠の神話

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第九十八話 道場にてその十二

「僕にしてもね」
「そうよね」
「うん、ずっと覚悟していたけれど」
「中田さんは最初からそういうつもりだったのかしら」
「多分ね」
 このことは上城も断言出来なかった、それは何故かというと。
「あの人はそうしたことを言わないからね」
「そうなのよね、あの人はね」
「あえて言わないよね」
 それも中田だ、彼は照れ臭いのかそうしたことは言葉として最後まで言わない、言葉の外に入れているのが彼なのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「うん、剣を交えている中でわかったよ」
「色々と教えてくれる為に闘ってくれたのね」
「そうだったんだ、技とかをね」
「じゃあその技で」
「もうすぐだね」
 ここでだ、上城は微笑んでこう言った。
「この戦いを終えられるよ」
「あと少しよね」
「あと少しだから」
 戦うことを望んでいる剣士はもう加藤だけだ、まさに後一人だ。
 しかしだ、その最後の最後でだというのだ。
「けれど最後の最後まで果たしてだからね」
「終わりまでは気が抜けないわよね」
「うん、だからね」
「中田さんは上城君に教えてくれたのね」
「そう、そして僕は中田さんに教えてもらったことで」
 技や心のあり方、そうしたものでだというのだ。
「最後の最後まで戦うよ」
「そうしてね、そして生き残ってね」
「生き残らないと意味がないからね」
 それが剣士の戦いだ、それ故にだ。
 彼は今は剣を収めてそのうえで今ハいない中田と道場に一礼してそのうえで場を後にした、聡美達も剣士達がいなくなり道場を去ることにした。
 その時にだ、聡美は声の方を振り向いて言った。
「これで残り一人ですね」
「戦いを望む剣士は」
「はい、彼だけですね」
 加藤、彼だけだというのだ。
「戦いはあと少しで終わりです」
「確かに戦う剣士は一人になりましたが」
「それでもだというのですか」
「力はまだ集めます」
 それはというのだ。
「何としても」
「あの方と共にいる為に」
「私は諦めません」
「この世界での戦いをまだ進められますか」
「はい」
 まだだというのだ、声はまだ諦めてはいなかった。
 それでだ、こう聡美に言うのだった。
「四人の、戦いを選んでいない剣士達にも」
「彼等にもですか」
「戦ってもらう」
「力を集めるのですか」
「あと少しなのですから、だから」
 それでだというのだ。
「私は何としても」
「そうですか。では私達も」
「その私を止めるのですか」
「何としても」
 こう話してだ、そしてだった。
 聡美は声の方を見たままだ、彼女に言ったのだった。
「目を覚まして欲しいのですから」
「私に」
「そうです、本当に目をお覚まし下さい」
 何としてもだというのだ、そこは。
「どうか」
「私の目は既に覚めています」
 声はきっぱりと言い切った。 
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