東方魔法録~Witches fell in love with him.
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7 園児~Are they really kindergarteners.
幼稚園に入ったからってやることは変わらない。パチュリーとひたすら魔法の練習だ。
「ここなら遠慮する必要はないわね」
「うん。でも先生に見つからないようにね」
親から離れたからといって先生の目の前で魔法を使うと、その事を親に凄いですねと言う可能性は高い。幼稚園児はまだ魔法が使えないのが一般だ。
都合がいいことにウェネフィクス学園の幼稚園の先生は一人しかいない。
先生は四六時中、園児を見ている訳ではないのでこれまで通り魔法の練習が出来る。本は家から持ってきた。
「今日は四大元素の1つ水の基礎を学ぶわよ」
「魔力の弾はもう十分に操れるようになったし、火は最初にやったしね」
パチュリーは魔法を貪欲に学ぶようになった。文字を読めるようになると魔法の練習の方針を決めるようにもなった。いや、俺は別にいいんだけどねパチュリーと一緒に魔法を学べれば。
「え!?水って空気の中にもあるの!?」
「目には見えない小さな水の粒が空気中にあるんだよ。…ちょっと待ってて」
俺はパチュリーの疑問に答えるためヤカンを持ってきて水を入れた。パチュリーに見えるようにふたをしないで、魔法を使って火を手のひらで出し、お湯を沸かす。
しばらくして水蒸気が出てきた。
「この煙とさっきヤカンに入ってた水は同じなんだ」
「そういわれれば…確かに空気には水があるわね。細かい仕組みは後で理解するとして、明希って何でそんなこと知ってたの?」
「そ、それは父さんが教えてくれたんだ…氷の魔法の一貫で…」
実は産まれる前から知ってましたーなんて言えるわけないだろ。言ったって信じて貰えるかどうか…
「ふーん。そう。じゃあケトルはそのままにしておいて。その煙を集めてみるわ」
パチュリーは本を読んで水の集め方を理解し、実践する。
ヤカンから出る水蒸気を魔法で集め水を作る、それをヤカンの上でまとめて浮かべた。
「おーやったね」
「ええ、でもまだ集めただけ、自由に動か…」
パチュリーは誰かが来るのに気づいたようで部屋のドアに目を向ける。俺も目を向けると、そこには1つ上の年の園児が一人いた。…良かった先生じゃなくて。
「あー!すごーい!それって魔法!?みんな来て来て!魔法使っている人がいるよ!」
俺たちが魔法が使えることを知ったようで興奮して人を集め始めた。
不味い。このままじゃ人だかりが出来て何事かと思って先生がくる可能性が高い。そうなったら(ry
「チッ…うるさいわね」
パチュリーは魔法を解いて本を掴む。重いのか本を下に下げてゆっくりうるさい園児に近寄っていく。顔には精気が無いように見えたのは気のせいだろうか。
園児に近付くと一気に本を頭上に振り上げ…
「黙りなさい」
力一杯降り下ろした。ドカッ!と鈍い音がして本が園児の頭に当たった。
…白目剥いて気絶してるぞ。ちょっとヤバくないか?
「魔導書って鈍器にもなるのね…」
何危ないことを呟いているんだよ!
そしてパチュリーは廊下に目を向け、集まってきた園児たちに向かってこう言った。
「大人に話してみなさい。貴方達もこうなるわよ?」
「「「ヒィ!!」」」
園児たちはパチュリーに気圧されガクガク震えて首を縦に振る。パチュリー…いつからそんな事を思い付くようになったの…?まさか俺の母さんの影響…?
「ごぼごぼ…!…これで邪魔は無くなったわ。続けましょ?」
「う、うん…」
心の中で気絶した園児に謝りながら魔法の練習を再開した。
さて、今日は園児全員が集まって作業をする時間だ。準備したものは手袋と土で汚れていいようにエプロン、そして忘れちゃいけないのはマスク(この時代にあるのは気にしちゃいけない)。
「はーい。今日はデビルツリーの苗を植え替えますよー」
デビルツリーとは、ハエトリソウやウツボカズラなどが昆虫を誘引する蜜を分泌するのと同様、人間を誘引する蜜を分泌する。
この臭いに誘われてしまうと、ツルで捕らえられ生きながら血を吸われて死んでしまう恐ろしい木である。
前世では空想上の植物だったが、まさかその苗を植え替える日が来るとは…
「マスクを着けないと頭がボーッとして血を吸われちゃうから、ちゃんとマスクをつけてね」
さらりと恐ろしいことをいいながら先生が注意を促す。びびった園児は急いでマスクを着けた。
「苗だから吸われても蚊に刺された程度だけどね」
やっぱりねと俺とパチュリーは思った。苗だからそこまで強いはずがない。大体そんな危険なことを園児にさせる訳がない。
と言うか園児をびびらせてどうするんだよ先生…ほのかに俺の母さんと同じ匂いがする…
隔離された植物園に入るとマスクをしているのに甘い匂いが漂ってきた。おおっと危ない危ない。
「三人ずつお友だちを作って作業してねー」
三人か…。俺とパチュリーで二人だからあと一人…隣にいる彼女でいいや。
「ねえねえ一緒にやろう。うん、そうしよう」
「…え?え?」
一人でボーッと立っている彼女を強引に引き入れる。
「俺は明希。よろしくね。君の名前は?
「…パチュリーよ」
「え、あ、エ、エリー…。よ、よろしく…」
よし、これで三人作れた。
「みんなお友だちは作れたかなー?作れたら苗を植え替えてみよう!」
先生の指示に従って園児たちはデビルツリーの苗を植え替え始めた。
とは言ってもやることは簡単。普通の木の苗を植え替えるのと同じだ。
作業に取りかかる前にふとエリーの方を見ると何やらブツブツ呟いている。
「デビルツリー…魔草科、吸血属の食人植物…人間を魅了する蜜を分泌する…魔法使いも例外ではない…成長したデビルツリーは魅了した生き物の血を吸い尽くす…しかしその蜜は様々な魔法薬の元…だがその危険性故に高価…ブツブツ…」
「エ、エリー?」
「はっ!ご…ごめん…。わ、私、し、植物のことになるとつい…」
…エリーはどうやら植物のことになると性格が変わるらしい。
「さっさと植え替えるわよ」
パチュリーが何故だか不機嫌だ。早く魔法の練習がしたいのかも。
「そうだね早く終わらせよう」
このあとエリーのお陰でどのグループよりも早くデビルツリーを植え替えることができた。
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「何でここにいるのよ?」
デビルツリーを植え替えると俺とパチュリーは何時ものように魔法の練習に取り掛かった。しかし、1つだけいつもと違うことがあった。
「な、何でって…わ、私たち友達じゃないの…?」
俺の隣でエリーが植物の本を読んでいるのだ。
エリーは先生の「三人づつお友だちを作って…」を本当に友だちになると思ってたようだ。どうやらエリーは天然らしい。
「いいじゃん。隣で本を読むぐらい。別に邪魔はしてないからさ」
別に友達でいいんだけどね。むしろ嬉しいよ。友達が出来て。
「むう…そうだけど…」
「何が不満なの?」
「う~!わかったわよ!エリー!絶対に私達の邪魔をしないでよね!」
「え、い、いいの?わ、私二人の側にいていいの?」
「いいよ。よろしくねエリー。わからないことがあったら俺に聞いてみて。出来るだけ答えるから」
「う、うん!よ、よろしく…!」
後書き
ちょっと早いけどこれで幼稚園児編はお仕舞い
明「ちょっとじゃない!いくらなんでも早すぎ!」
だってーいちいち進級したーとか夏休みーとか文化祭ーとかやってたら、くどいし面倒。
明「ううっ、確かに…」
大丈夫だってイベントはちゃんと書くから。
明「絶対だよ!」
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