おじさんとぬいぐるみ
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第二章
第二章
漫画本とライトノベルとゲームソフトとゴミでだ。足の踏み場もない。すっぱい異臭がして今にも何か出そうだ。随分と無惨な部屋であった。
その部屋に入ってだ。妙子は再び引いた。そうして叔父さんに対して尋ねるのだった。
「あの」
「ああ、おじさんでいいよ」
叔父さんは妙の前を進みながら彼女に答える。
「実際にそんな歳だし血縁関係はそれだし」
「だからですか」
「うん。まあ適当な場所に座って」
おじさんは妙子に今度はこんなことを告げた。
「まあそれからね」
「それからですか」
「これから一緒に住むから」
このことも話すおじさんだった。
「御祝いをしようか」
「わかりました」
「御祝いはピザでいいかな」
その注文しているだ。それでだというのだ。
「それとカップラーメンと」
「カップラーメンですか」
「後は」
おじさんは考える顔になる。とりあえず二人は座った。
妙子は何とか座る場所を確保した。ゴミをどけてだ。そうして座ってだ。あらためておじさんと向かい合った。そのうえで話を聞くのだった。
「パンがあったかな」
「食パンですか?」
「何だったかな」
首を傾げさせてだ。今一つ要領を得ない返事だった。
「大分前に買ったから覚えてないや」
「あの、ちょっといいですか?」
妙子はそんなおじさんに対してだ。恐る恐る尋ねた。
「おじさんって」
「うん、何かな」
「ずっとそうしたものを食べてるんですか?」
「うん、そうだよ」
その通りだというのであった。
「外に出たのは十日前だったかな」
「十日前って」
「真夜中にコンビニにね。行ったんだよ」
「じゃあそれ以外は」
「うん、出ていないよ」
おじさんは平気な顔で答えた。
「だって僕漫画家だから。家で仕事するからね」
「漫画家なんですか」
「うん、そうなんだ」
「そうだったんですか」
「まあ漫画はそこそこ売れてて収入はあるから」
その心配はしていないというのだ。
「それに外出るのは好きじゃないし」
「だから食べるのはですか」
「注文したりとかコンビニで買ったりとか」
そんな話をしながら何処からかコップを二つ出してきた。見れば何ヶ月洗っていないかわからない極めて汚いコップである。
あちこちにジュースの残りがついている。そのコップを二つ出してきてだ。
これまた何処からか一・五リットルのぺットボトルのジュースを出してきた。オレンジジュースだ。
それをコップに注ぎ込んでからだ。妙子に尋ねるのだった。
「飲むかな」
「そのコップで、ですか?」
「いつもそうしてるけれどね、僕は」
「あの、それは」
そしてだ。妙子はこれまた恐る恐るだ。おじさんに尋ねた。
「おじさん、掃除とか洗濯は」
「しないよ」
平然とした返答であった。
「だって僕漫画家だから」
「漫画家だからですか?」
「漫画書いて御飯食べて寝るだけだから」
本当にそれだけだというのだ。
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