SAO-銀ノ月-
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第十三話
前書き
今回も短いです。
それと、今回からsideを入れました。
シリカside
「さて、そろそろ落ち着いたか?」
横を歩くショウキさんが、明らかに面白がりながら聞いてくる。
さっき、ここがモンスターがでる場所というのも忘れ、夢中で歩き回っていたところ、再び巨大花に足をとられたり、イソギンチャクに似たモンスターの、粘液でグチャグチャになった触手に全身ぐるぐる巻きにされたりして、…その度にショウキさんが、助けてはくれたけど…いい加減危ないので、恥ずかしい思いを抑えて、一緒に歩いていた。
道中のモンスターは、大体ショウキさんが、POPした瞬間斬っていた。あの巨大花を一撃とは、きちんと弱点を狙っているのだろう。
私の役目は、ショウキさんの斬りもらしを斬ったり、背後の敵を倒すことだった。
元々は、シリカより高レベルのモンスター達だったが、足手まといにはならないという思いのおかげか、なんとか倒すことが出来ていて、途端にレベルが1上がってしまった。
「さて、そろそろ《思い出の丘》だ。」
前を行くショウキさんが、振り向いて言った。
…結局、何者なんだろうか。
今更ながら、シリカはそんなことを考えていた。
ドランクエイプや、巨大花を一撃の下に葬り去る、黒衣の侍。
一緒にいると楽しい、明るい人。
どちらが本当のショウキさんなんだろうか…
「シーリーカー?」
「は、はいっ!」
居眠りをしていたら、先生に名前を呼ばれたように素っ頓狂な声を出してしまった。
「す、すいません!ちょっと考え事を…」
「ま、別に良いよ。もう《思い出の丘》だ。」
ショウキさんに言われて、前の景色を見てみると、橋が一本建っていた。
「見たところ、一本道みたいだけど、ここからは大量のモンスターがPOPするらしい。」
「気をつけないと、ですね…」
あの巨大花みたいのが、大量にPOPするのは見たくはないが、仕方ない。
「でも、実はもっと簡単な方法があるんだ。」
「簡単な方法?」
モンスターを無視して走り抜けるという手はあるが、シリカの敏捷値では走り抜けられず、途中で囲まれてしまうことだろう。
「だけど、ちょっとリスクがある…だけど、とてつもなく速く着くだろうな。」
「やります。」
少しぐらいリスクがあっても、モンスター達に囲まれるよりは良いと思い、私は即答していた。
「良し、わかった…そんなに覚悟があるなら…」
ショウキさんは、途中で言葉を切ると、私をヒョイと持ち上げた。
いわゆる、『お姫さま抱っこ』みたいな格好だ。
「え?なに」
「ヒアウィーゴー!」
怪しい英語を叫ぶや否や、ショウキさんは私を運びながら、《思い出の丘》に突っ込んでいった。
「キャアアアアアアッ!」
《迷いの森》で体験した、ジェットコースターの恐怖、再び。
前回と違って、森の中じゃないから、枝がかするということは無いが、代わりに、きちんとPOPした巨大花の触手が大量に迫る。
ショウキさんは、それを全て紙一重で避けつつ、走り抜けて行く。
「ちょっと飛ばすぞ!舌を噛まないように気をつけろ!」
ショウキさんの声に、口を噤む。
舌を噛んで死ぬなんて嫌だ。
「《縮地》」
−その瞬間、私は風になった。
あらゆるものが後ろに下がっていき、自分だけが高速で移動している。
例えるなら、電車の中から、窓の外を見ているような速さだ。
口を噤んでいなければ、本当に舌を噛んでいたかもしれない。
私をおぶっているショウキさんは、そのままの速度で巨大花たちを突破し、橋の上のモンスターがPOPしない、丘の頂上へと飛んだ。
「ふう。着いたぞ、シリカ。」
「うわあ…!」
《思い出の丘》の頂上は、空中の花畑。そう例えるのがふさわしい、綺麗な花々が咲いている場所だった。
「ほれ、降ろすぞ。」
ショウキさんのかけ声と共に、お姫さま抱っこが解かれて、地上に降ろされる。
「あ…」
…恥ずかしいから、ちょっと残念がる自分がいたことは、ショウキさんには秘密にしておこう。
「ここに、《プネウマの花》が…?」
「ああ。ええっと…」
アイテムストレージから、メモ帳を取り出して読むショウキさん。
ショウキさんのそういうところが人間らしく、NPCではなく、自分と同じ人間だということを再確認させてくれる。
「真ん中の方にある岩に、そのてっぺんに…」
ショウキさんの言葉が終わる前に真ん中の方に駆け出し、《プネウマの花》を探す。
白く輝く大きな石があり、そのてっぺんに…
「ない…?」
何もなかった。
もしかして、何か失敗したのだろうか?
「ない…ないよ、ショウキさん!」
滲む涙を抑えられず、ショウキさんに向かって叫ぶ。
「泣くな泣くな。よく見てみろ。」
ショウキさんの言葉に、もう一度岩を見てみると…
「あ…」
岩のてっぺんから芽が伸び、光を放ちながら成長していく。
−綺麗…
そうして現れた白い花を、指で触れてみる。
ネームウィンドウに表示された名前は…《プネウマの花》
「…これで…ピナを生き返らせられるんですね…」
「ああ。じゃ、さっさと街に帰ろうぜ。ここじゃ、何があるか分からん。」
本当は、転移結晶でワープしてしまいたかったが、転移結晶はとても高価だ。
いざという時の為にとっておく必要がある。
「じゃ、また抱っこを…」
「…嫌です!」
若干迷ってしまったが、流石に断った。
後書き
次回こそは、この短さと内容の薄さを何とかする!
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