プリテンダー千雨・リメイク
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序章・1
私、長谷川千雨はネットアイドルをやっていることを除けばいたって普通の女子中学生だ。うちのクラス…と言うか麻帆良に居る奴らとは違って絶対に普通なのだ。そう思っていた。あの時までは・・・
「お前が長谷川千雨か?」
中学二年もそろそろ終わりのある日の事。学校からの帰りが遅くなった私は突然後ろから声を掛けられた。誰だと思い私は振り返る。そして、そこに居た二人の姿を見て驚愕した。
一人はブタ鼻でメタボ体形の怪物で、もう一人は眼帯をした半魚人だった。どちらも右手に光線銃のような物を持ち、私に向けて構えている。
最初、これは着ぐるみを使ったドッキリかと思ったが、それにしてはこいつらの皮膚の質感はリアル過ぎる。
「悪く思うなよお。こいつは仕事なんでな。」
ブタ鼻の方がそう言うと、光線銃の引き金を引いた。私はとっさに転がるようにして避ける。すると、光線が私の居た空間を貫き、後ろにあった電柱に穴を空けた。
「この!大人しくしろ!!」
今度は二人で光線銃を撃ってきた。私は必死でそれから逃げる。訳が分からなかった。
何故平凡な中学生の私がこんな化け物に光線銃で命を狙われなきゃなんないんだ!?
そう考えながら走っているうちに、とうとう光線が右脚に当たった。
「あぐっ!?」
その感覚は痛いを通り越して熱かった。私は走っていた勢いのまま転び、地面に転がる。それでも、何とか逃げるために身体を起こした。その時、ふと私は撃たれた傷を見た。それを見て私は驚愕する。傷口から血は流れていなかった。確かにレーザーで撃たれた傷口は焼かれている状態なので、血が出ないのは当然だ。だが、問題はそこじゃない。傷口から見えていた物だ。本来なら、レーザーで焼かれた筋肉の組織が見えているハズだろう。だが、私のそれからみえていたのはなんと・・・機械部品だった。
「何だよ、これ・・・」
「どうやら、自分の事を知らねえって話は本当だったみたいだな。」
私が驚いていると、ブタ鼻がそう言った。
「お前、何か知ってんのか!?」
「ああ、一応な。でも、今から死ぬお前には関係の無え事だ。」
そして、ブタ鼻は半魚人と共に光線銃を私に向ける。もう、私は恐怖で動く事が出来なかった。だがその時、何処からか飛んで来たレーザーが二人の銃を弾き飛ばした。
「いてっ!?な、何だ!?」
困惑しながらレーザーの飛んで来た方向を見るブタ鼻と半魚人。すると、そこから一人の人影が現れた。やがてそれは街灯の下まで来て姿が露わになる。そいつはまるでロボットみたいな全身スーツを着込んでいた。唯一露出しているのは顔の部分だけだ。そして、その顔を私はよく知っていた。
「父さん!?」
それはこの麻帆良において私の数少ない理解者の一人である私の実の父親『長谷川小鷹』であった。
「くそっ!プリテンダーの方は足止めしてくれてるんじゃ無かったのか!?」
手を抑えながらブタ鼻が言う。すると、父さんはそいつと半魚人に向かって右手のレーザー銃を向けた。
「ま、待ってくれ!こっちは丸腰なんだ!!撃たないでくれ!!!俺には女房一人と十二人の子供が居るんだ!!」
光線銃が無くなったとたんに弱腰になるブタ鼻。って言うか、随分とベタな命乞いだな。
すると、父さんは奴に聞いた。
「お前達を雇ったのはクインテッサか?」
「そ、そうだ!おれだって好き好んでこんな仕事引き受けたんじゃねえんだ!でも家族を三食食わせて行くには仕方ねえんだ!!」
またしてもベタな事を言うブタ鼻。それを聞いた父さんは銃を下ろす。
「分かった。命だけは助けてやる。だが、また千雨を狙って来た時は・・・」
「ひぃ!!わ、分かってまさぁ!!!」
そして、ブタ鼻は半魚人を連れて逃げて行った。
「大丈夫か!千雨!!」
二人組が遠くに言ったのを確認すると、父さんは私に駆け寄った。
「父さん・・・」
私は聞きたい事があり過ぎて頭の中がぐちゃぐちゃだった。父さんの着ているスーツの事、さっきの奴らの事。そして・・・私自身の事。
「傷の手当が必要だ。」
だが、私は何も言えず父さんに抱き上げられた。
続く
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