プリテンダー千雨・リメイク
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序章・2
前書き
リメイク版ではプリテンダー以外にも色々なタイプのトランスフォーマーを出します。
私を抱き上げた父さんは車の通る道路の前まで来た。すると、遠くからサイレンの音が聞こえて来る。見ると救急車が走って来て私たちの前に止まった。
「父さん。どう考えても私、普通の病院じゃ・・・」
「分かっている。」
私の言葉にそう答えると、父さんは救急車の後ろの扉から入って私をベッドに寝かせた。車内には私と父さん以外の気配は全く無い。そう、全くだ。運転席を見てみると、そこには誰も座っていなかった。だが、サイドブレーキやハンドルが勝手に動き、救急車は動き出した。
もはや何が何だかわからない私はそのまま大人しくベッドの上で横になる。救急車はそのまま病院には行かず、何故か麻帆良の外れにある山の中に入って行った。山に入って暫く走った後、私はふと運転席の向こうにあるフロントガラスを見た。すると、なんと救急車は山の岩肌に向かって一直線に進んでいたのだ。
「父さん!!」
私は直ぐ側に座っている父さんに向かって叫ぶ。
「大丈夫だ。見ていろ。」
だが、父さんは呑気にそう答えるだけだった。やがて、岩肌がフロントガラスいっぱいに広がるまで近づいた。
「ぶつかる!?」
思わず私は目をつむったが、いつまで経っても衝撃は来なかった。そして、目を開けて窓の外を見ると飛んでも無い光景が広がっていた。
「何だこりゃ!?」
それを見た私は思わず叫んだ。何せ、周りはSFみたいな色々な機械で覆われた壁になっていたからだ。
「驚いたかい?」
その時、車内に私とも父さんとも違う声が響いた。低い、大人の男性の声だ。私は辺りを見渡すが、やはり車内には私と父さんしか居ない。
「もう直ぐリペアルームだから、あと少しの辛抱だ。」
また声が聞こえた。私はまた周りを見渡すが、やはりここには私と父さんしか居ない。そうこうしているうちに救急車は角を曲り、停車する。
「着いたぞ、千雨。」
すると、父さんは私を抱き上げて救急車を降りた。そして、私はそこにある手術台のような所に寝かせられる。隣を見ると、巨人の手術にでも使うのかと言う感じのヤケにデカイ手術台があった。
「ラチェット。後は頼む。」
私を手術台に寝かせた父さんは救急車に向かって言った。すると、何と言う事だろう。救急車が巨大なロボットに変形したのだ。フロントガラスは胸のパーツとなり、赤十字のマークは肩についている。
「OK。この名医の名を継いだ私に任せてくれ。」
そして、ロボットは私の方に向かって歩いて来た。
「ま、待てって!まずは説明をしてくれ!!」
「そうだったな。ラチェット、リペアは説明の後に頼む。」
「分かった。」
私が叫ぶと、父さんは思い出したようにそう言い、ロボットは足を止めた。そして、父さんは説明を始める。
「千雨。私と彼、ラチェットは地球で生まれた存在では無い。」
「え?」
「私達はここから遠く離れた惑星セイバートロンで生まれた超ロボット生命体『トランスフォーマー』だ。」
そう言うと、父さんは叫びながら飛び上がる。
「プリテンダー!!!」
すると、なんと父さんの姿が黄色い巨大ロボットへと変わった。
「これが私の本当の姿だ。そして、本当の名はサイバトロン宇宙指揮官メタルホークと言う。」
それから、さらに父さんは説明を続けた。
何千年も前、父さんは仲間達と共に宇宙旅行をしていたら事故に遭い、この地球に不時着した。その宇宙船と言うのが今私たちの居るこの基地だ。宇宙船は基地として使える機能は残っていたが、再び宇宙へ飛び出す事は不可能なレベルのダメージを負っていた。ゆえに、父さん達はここにひっそりと隠れながら定住する事になった。そして、父さんは一人の女性つまり母さんと出会い、私が生まれた。
「本当は、千雨にはこの事を知らずに、普通の人間として生きて欲しかった。夜空・・・母さんもそう望んでいた。」
「母さんは知ってたんだな。父さんの正体を。」
「ああ・・・」
「でも、だからって何で私が命を狙われなきゃなんないんだ。」
「君を襲ったのはクインテッサ星人に雇われた殺し屋だ。」
私が聞くと、ラチェットさんがそれに答えた。
「クインテッサ星人?」
「我々トランスフォーマーの先祖を生み出した種族だ。はるか昔、セイバートロンの支配者だった奴らは我々の先祖を奴隷として扱っていた。だが、自由を手にするために先祖達は立ち上がり、クインテッサ星人をセイバートロンから追い出した訳だ。」
「だが、奴らは今でもセイバートロンを奪い返そうと暗躍している。」
ラチェットさんと一緒に父さんが説明をする。
「何でそんな奴らが私を?」
「クインテッサ星人が言うには、我々トランスフォーマーは他種族と力を合わせる事で奴らの予想を超える力を発揮するそうだ。それですら連中にとっては恐ろしいと言うのに、君はトランスフォーマーと他種族の間に生まれた存在だ。連中からすれば、君はセイバートロン奪還の最大の障害だろうね。」
ラチェットさんはそう語るけど、いくら父さんの故郷の事だからって、今まで知らなかったんだから私には関係の無い事のハズだ。
「さて、簡単な説明はこれで終わり。これから治療を始めよう。」
すると、ラチェットさんは何処からか工具を取り出して来て、私のレーザーで撃たれた足の修理・・・いや、治療を始めた。ラチェットさんは結構器用で、彼からすれば豆粒ほどしか無い傷を治して行く。
「ふむ。フレームには異常は無し。だが、神経回路の一部の交換が必要だな。」
そうやってラチェットさんが傷の状態を言う度に、私は自分が人間では無く機械なんだと実感した。
「ここをこうして。後は、この薬で皮膚を再生させればOKだ。ちょっと時間はかかるが・・・まあ、包帯でも巻いておけば大丈夫だろう。」
そして、ラチェットさんは最後に私の撃たれた足に包帯を巻いた。あの巨大な手で私の細い足に包帯を巻くなんて、本当に器用だ。
「さあ、起き上がっても大丈夫だ。神経回路を交換したばかりだから多少歩き辛いかもしれないがね。」
ラチェットさんがそう言うので、私はベッドから起き上がってみた。確かにもう痛みは無いし、立つ事は出来る。
「それじゃあ、今日はもう遅いから基地に泊まって行くといい。」
今度は父さんが言った。ケータイで時間を確認してみると、もう寮の門限は過ぎていた。
「寮の管理人さんには連絡を入れておく。明日は休日だし、ゆっくり休むといい。」
そして、私は一つの部屋に案内された。意外な事に、それは人間サイズの私が使うのには丁度いい広さの部屋だった。てっきりロボットサイズの部屋かと思っていたが、トランスフォーマーの中には人間とあまりサイズの変わらないのも居るため、宇宙船にはこう言う部屋も有ると言う。
私は早速部屋に置かれている若干大き目のサイズのベッドに寝転がった。だが、ロボットが使う物として作られたのか、マットなどという物は敷かれておらず、上にかぶる毛布も無い。寝心地が悪いことこの上無かった。だが、今日のたった数時間の間に色々あり過ぎたせいで私は直ぐに眠ってしまった。
続く
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