久遠の神話
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第九十七話 ラドンその二
「卑怯なことは絶対にしたくありません」
「卑怯は剣道ではありませんね」
「そう思いますから」
だからだというのだ。
「正々堂々と闘います」
「ではそのうえで」
「はい、勝ちます」
大石に確かな顔で納得する、そのうえで。
上城はあらためて闘う決意をした、まずはラドンだった。
そのラドンとの闘いについてだ、大石は今度はこう言った。
「ラドンは先程も申し上げましたが恐ろしいまでの巨体に」
「それにですね」
「百の頭があります」
それもまた大きな武器だというのだ、ラドンの。
「それはおわかりですね」
「はい、百もあるだけに」
「そうです、強いです」
「ヒドラは九ですね」
「しかしラドンは百です」
もっと言えば身体の大きさもヒドラとは比較にならないまでに大きい。それ故にラドンはテューポーンとエキドナの子の中でも最強ではないかとされているのだ。
「強いにも程がありますので」
「だからですね」
「そうです、お気をつけ下さい」
「百ですね、本当に凄いですね」
「ただ、竜は炎を吹きますが」
これは炎だけとは限らない、吹雪や毒、強酸、雷と龍によって様々なものを吐く。
「ラドンはです」
「炎は吐きませんか」
「その様です」
そのことは安心していいというのだ。
「どうやら」
「それじゃあ」
「そのことは安心して下さい」
竜の息についてはというのだ、竜の武器であるそれは。
「そのうえで闘って下さい」
「わかりました、では」
二人はこのことも話した、そうしてだった。
大石は微笑みだ、上城に自分のことも話した。
「私もそろそろ」
「大石さんも?」
「戦いから降りようと考えています」
こう考えているというのだ。
「もう」
「最後まで見られないんですか」
「はい、若しもですが」
「若しも?」
「上城君が戦いを止められるのなら」
そう判断すればというのだ。
「それが出来ると判断出来た時はです」
「戦いから降りられるんですか」
「そう考えています、ただ」
「ただ?」
「これは責任逃れではありません」
上城にそれを押し付けるものではないというのだ。
「それではありません」
「それはですね」
「違います」
決してだ、責任逃れはしないというのだ。
「上城君なら全てが出来ると思えばです」
「つまり僕を信頼してですね」
「格好のいい言い方をすれば」
微笑みだ、こう上城に告げるのだった。
「その時は」
「そうですか」
「そう、ですから」
それ故にというのだ。
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