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久遠の神話

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第九十七話 ラドンその一

                  久遠の神話
              第九十七話  ラドン
 ラドンについてだ、上城は大石から詳しい話を聞いていた。話を聞く場所は大石の教会、彼の自室の中でだ。
 紅茶を共に飲みつつだ、大石はテーブルの向かい側に座って彼と共に紅茶を飲んでいる上城にこう話した。
「ギリシア神話の中でもかなり強力な怪物です」
「テューポーンとエキドナの子供達の中でもですね」
「そうです、相当にです」
 強大な力を持っているというのだ。
「その力は神に匹敵します」
「神様にもですか」
「だからこそ黄金の林檎を守っているのです」
 神にとって黄金の林檎は自分達の不老不死を保たせる絶対のものだ、それだけに彼等にとってはかけがえのないものだ。
 それを守っている、それだけにというのだ。
「強いのも道理です」
「そういうことですね」
「そうです、ですから」
「戦うにはですね」
「ご注意を」
 強い声でだ、大石は上城に告げた。
「くれぐれも」
「わかりました」
 上城も確かな顔で大石に答えた。
「そしてラドンに勝ってですね」
「その力を手に入れてです」
「中田さんとですね」
「闘いそして」 
 そのうえでだというのだ。
「あの人にも勝って下さい」
「わかりました。ですが」
「それでもですね」
「僕の剣道は闘う為のものではなく」
「活人剣ですね」
「ですから闘い勝っても」
 それでもだというのだ。
「僕は相手を倒すことはしたくありません」
「決してですね」
「人を倒すことは」
 この場合はその命を奪うということだ、だが上城はその表現を使うことに抵抗があり倒すと言っているのだ。
「殺人剣ですから」
「それは君の剣道ではありませんね」
「剣道は暴力ではありません」
 それはだ、決してだというのだ。
「己の心と身体を律するものです」
「まさにその通りですね」
「はい、ですから」
 その考え故にというのだ、上城は。
「僕は中田さんに勝ちます、ですが」
「その命はですね」
「そのつもりです。駄目でしょうか」
「いえ、それでこそ上城君です」
「僕ですか」
「そうです、闘いがあろうとも」
 それでもだというのだ。
「誰も倒しません」
「それでいいです。自分の道を信じて進んで下さい」
「わかりました、では」
「しかし勝つことはです」
「それはですね」
「絶対として下さい」
 必ずというのだ。
「何があろうとも」
「そうですね、勝たなければですね」
「何もなりません、しかしその勝ち方も」
「剣道ですから」
 その道、それを知っているからだというのだ。 
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