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久遠の神話

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第九十六話 剣道家その九

「もうな」
「しかしです」
 声は己の考えからだ、こう返したのだった。
「力が集まらない場合は」
「どうしてもか」
「そうです、戦ってもらいます」
 是非にというのだ。
「貴方達にとっては悪いことですが」
「あんたも決めたからな」
「ですから」
 決意を変えることは出来ない、声にも覚悟があるのだ。例えそれが己のエゴに基づくものであってもである。
「止められません」
「決してか」
「そうです、力が集まるまで」 
 戦ってもらうというのだ、中田達に。
「それまでは」
「そうか、前世とかは知らないけれどな」
 それでもだとだ、中田はここではシニカルな笑顔で述べた。
「もう戦いたくないな」
「二度とですね」
「そうだよ、この戦いで終わって欲しいな」
「少なくとも貴方は」
 中田自身はというのだ、彼の今の人生はだ。
「降ります」
「そうなることは確かなんだよな」
「そうです、そのことは約束します」
「それはいいことだよな」
「来世での貴方は魂は同じですが別人格です」
 中田直行ではない全く別の人間になりそのうえで戦うというのだ。
「そのうえで戦ってもらいます」
「だからそれは断りたいな」
「力が集まれば解放されますので」
「ったくよ、じゃあ俺達は虜か」
 それに他ならないと察してだ、中田はシニカルな笑顔で声に返した。
「神話の頃からの」
「そうなりますね、魂の虜囚です」
「因果だな、けれどもうな」
「それでもですね」
「終わって欲しいよ、少なくとも俺は降りるさ」
 lこの人生での戦いはというのだ。
「そうさせてもらうからな」
「では」
「ああ、そういうことでな」
 こう話してだった、そのうえで。
 声は中田に別れを告げて気配を消した。中田は後は飲みそのうえで五日後のことを忘れて日常に戻るのだった、考えると憂いを感じるからこそ。


第九十六話   完


                          2014・1・16 
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