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ドリトル先生と京都の狐

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第三幕その四

「先生にお願いしたいことがあって参りました」
「神戸の親戚っていうと」
「はい、八条学園にいる狐でして」
「そういえばあの学園は狐も多いから」
「その狐達の中にです」
「貴女のご親戚がですか」
「あっ、敬語はいいです」
 狐はこのことはいいとです、先生に言うのでした。
「お気遣いなく」
「そうですか」
「私は先生にお願いがあって参りましたし」
 つまりです、立場が下だというのです。
「それに動物の為にいつも心を砕いて働いておられる先生ですから」
「だからですか」
「はい、敬語を使って頂くなぞ」
 恐縮だとです、先生は言うのでした。
「ですから」
「それでは」
「狐は学園のあちこちに。これは他の動物達も同じですが」
 犬や猫もです、そして狸達も。
「いて色々なお話を聞いていまして」
「それで僕達が京都に来ていることもなんだ」
「はい、知っていました」
「神戸から京都は離れているけれど」
「そこは神通力でのやり取りです」
「電話とかじゃなくてだね」
「電話も使えますが」
 それも使えるというのです、人間の文明のものも。
「ですが私達は基本的に私達の力を使います」
「だから神通力を使うんだね」
「はい、そうです」
 それでだというのです。
「使っています」
「そうなんだね」
「そうです、先生が来られることはわかっていました」
 そうだったというのです。
「ですから」
「そうなんだね、じゃあ」
「先生のところに参上した理由ですね」
「うん、それはどうしてかな」
「実は母が」
「貴女のお母さんが」
「病に臥せっていまして」
 ここで困った顔になってお話する狐でした。
「どの獣医さんにお見せしましても」
「駄目なんだね」
「ですから最後の望みの綱で」
 それでだというのです。
「先生にお願いしたいのです」
「それじゃあお母さんは何処にいるのかな」
「はい、それは」
「何処かな」
「四条です」
 そこにです、狐のお母さんがいるというのです。
「四条の裏手にいます」
「あっ、丁度いいね」
 四条と聞いてです、王子ははっとしたお顔になって言いました。
「丁度僕達も今から四条に行くところだったんだ」
「あっ、そうですか。では都合がいいですね」
「いやいや、お母さんが大変だから」
 だからだとです、王子は狐に答えます。
「そのことはね」
「気にしなくてですか」
「うん、いいよ」
 そうだというのです。
「ではね」
「それではですか」
「今から四条に行こう」
 そうしてだというのです。
「お母さんを治そう」
「お願いします、それでは」
「先生、それでいいよね」
「勿論だよ、観光よりもね」 
 先生がこう答えない筈がありません、何しろ動物達は先生にとっては動物の皆は大切な友達なのですから。 
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