| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十五話 中田の決断その二

「その相手が生きている限りは」
「それならばですね」
「助けられるよ」
 それも絶対にだというのだ。
「あの人達もね」
「では」
「今からね」
 仕事をするとだ、アポロンは聡美に告げてからだった。そのうえで彼等の手術室に向かった。そうしてであった。
 手術着になり帽子とマスク、それに手袋も身に着けた。それからだった。
 手術に入る、だが手術を手伝う者達もだった。
 まだだ、ひそひそと話すのだった。
「手術っていってもな」
「それでもな」
「助からないよな」
「ああ、例え手術が成功してもな」
 一パーセントもない可能性を叶えてもだというのだ、そうなっても。
「あの人達が目覚めるなんてな」
「まずないだろ」
「やっぱり助からないよ」
「今の延命だって息子さんが必死に何処からかお金入れてだったしな」
「絶対に無理だよ」
「起きないって」
「三人共」
 こう話すのだった、誰もが手術が成功して中田の家族が目覚めるとは思っていなかった。だがそれでもだった。
 だが、だった。アポロンだけは落ち着いていた。そして。
 まずは中田の父からだった、手術台の彼の横に立ち。
 まるで疾風の様に動いてだった、次々と手術を進めた。その彼を手伝いながら周りの者は目を瞠ってきこう言った。
「えっ、この動きって」
「速い、しかも的確で」
「そうか、こんなやり方があったのか」
「そこはそうすればいいのか」
「そうすればいいのか」
「何て凄い」
 速さだけでなくだった、的確と言ってもまだ有り余る手術の方法もだった。
 見事過ぎた、それで驚くのだった。
 そしてだ、その手術はだった。まさに一瞬でだった。
 終わりだ、次だった。
「次の患者さんを」
「えっ、次ですか」
「次の患者さんですか」
「今の手術はですか」
「終わったんですか」
「そう、終わったよ」
 まさにそうなったというのだ、一瞬でだ。
 だからだ、こうも言うのだった。
「では次の患者さんをね」
「わかりました、それじゃあ」
「次の患者さんを案内します」
「そうしますから」
「それで」
 こうしてだった、中田の父の次はだった。
 彼の母親が運ばれてきた、そのうえで。
 彼女の手術も恐るべき速さと的確さで進んだ、そして瞬く間に終わってだった。
 次の患者中田の妹もだった、手術を終えて。
 その三つの手術が終えた時間を見てだった、手術を手伝った医師達は驚愕してこうも言うのだった。
「えっ、あんな手術を三つもしたのに」
「これだけの時間しか経ってない」
「しかも手術はどれも成功したし」
「何かこれって」
「嘘みたい」
「有り得ないっていうか」
「まさに神技じゃない」
 そこまでの域に達していたというのだ、しかも。
 アポロンはだ、涼しい顔で彼等にこう言うのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧