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八条学園怪異譚

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第五十七話 成長その三

「よかったのじゃよ」
「そうなんですね」
「成長したんですね」
「君達はいつも一緒にいったな」
 博士は今度はこのことも指摘した。
「ずっと」
「はい、本当に」
「泉を巡る間は」
 実際にそうだった、二人はその間離れたことは一度もなかった。
 それでお互いに顔を見合わせてだ、まずは愛実が言った。
「私聖花ちゃんが頭がよくて皆に人気があってかるたも上手で嫉妬してたけれど」
「私も。愛実ちゃんが家事が得意で皆に慕われてて部活の先輩達に期待されてて妬んでたけれど」
 聖花も言う。
「それが ね」
「変わったわ」
「泉のことを知って二人で回る様になって」
「あらためてね」
 二人で話していく。
「聖花ちゃんといつも一緒にいて」
「愛実ちゃんに助けてもらったりして」
「ほんの子供の頃から一緒にいたけれど」
「あらためていいところがわかって」
「一人じゃちょっと巡れなかったわ」
「二人じゃないとね」
「人は一人では駄目なのじゃよ」
 博士はこんなことも言った。
「ほれ、よく言うが人という言葉はな」
「二人ですね」
「支え合ってるんですね」
「そうじゃ、あのドラマの通りじゃ」
 長年度々シリーズとして放送されていた学園ドラマだ。主演の俳優は九州生まれでありその独特の方言も魅力だ。
「人は一人ではない」
「それで私達も」
「お互いになんですね」
「わしから見れば君達はよいパートナー同士じゃ」
 それになるというのだ。
「例えるなら秋山登と土井享じゃな」
「誰ですか?その人達」
 愛実はその二人の名前を聞いて怪訝な顔で返した。
「何処かで聞いた気がしますけれど」
「大洋ホエールズのエースとキャッチャーよ」
 その愛実に聖花が話す。
「高校、大学、プロってずっとバッテリーを組んでたのよ」
「大洋?今の横浜よね」
「そう、横浜ベイスターズ」
 今はこの名前になっている。
「そのチームよ」
「昔は大洋漁業が親会社だったのね」
 愛実はこのことは知っていた、それで言ったのである。
「そうよね」
「そうよ、そのバッテリーって昭和三十年代よ」
 勿論二人が生まれる遥か前だ。
「阪神で言うと小山さんとか村山さんの時代よ」
「そんなに昔なのね」
「そう、牛若丸とかね」
 吉田義男である、小柄ながら神技と言っていい守備と瞬足、そして抜群のバットコントロールで阪神の看板選手の一人となった。その背番号二十三は永久欠番になっている。
「その頃よ」
「ううん、本当に昔ね」
「けれど博士だから」
 聖花はここでその博士をちらりと見て言った。
「そうした人達もね」
「その目で観てきたのね」
「そうだと思うわ」
「最高のバッテリーの一つじゃった」
 実際に観てきた者として話す博士だった。 
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