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八条学園怪異譚

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第五十七話 成長その二

「ああした人がおったことは日本にとって幸いじゃった」
「それでその時にですか」
「学校の先生の資格も取られたんですね」
「そうじゃ、間違いなくわしが最後の師範学校卒業者での現役じゃな」
「それは絶対にそうですね」
「間違いなくですね」
 戦前の話だ、もう現役でいる人なぞ普通は有り得ない。
「というか私達の学校でもですか」
「教えておられたんですね」
「そうじゃ、かつてはな」
 そうしていたというのだ。
「今はそっちには行っておらんがな」
「それでもですか」
「昔は」
「また理事長さんからお声がかかればな」
 そうなればというのだ。
「その時は受けさせてもらう」
「そうですか、それじゃあ」
「その時は」
「うむ、高校で会おうぞ」
 商業科のそこにというのだ。
「わしも楽しみじゃ」
「そうですね、博士が何の教科を教えてくれるのか」
「そのことも楽しみですし」
「全部の教科で出来るぞ」
 教えることがだというのだ。
「幼稚園から高校までな、あと保育園でも教えられる」
「そうですか、全部ですか」
「保育園もですか」
「うむ、出来る」
 そうだというのだ。
「そっちもな」
「博士と子供ですか」
「何かそれって」
 子供達と戯れる博士、二人はこの光景を想像した。 
 そのうえでだ、二人で話すのだった。
「合わない様で合うっていうかね」
「そんな感じよね」
「不思議ね、ちょっと思い浮かべてみたけれど」
「何かね」
「ほっほっほ、これでも子供は好きじゃぞ」
 博士が言うにはそうだ。
「もう曾孫どころではないがのう、子孫は」
「というか本当にお幾つですか?」
「普通曾孫でも結構なものですよ」
 この辺り本当にわからない博士だった。
「とにかく博士は子供好きなんですね」
「そうなんですか」
「若い子は好きじゃ」
 子供だけでなく、というのだ。
「これから成長していくからのう。君達もな」
「私達もですか」
「成長していくから」
「だからここまで来られたのじゃよ」
 泉を探していて遂にだというのだ。
「何かを探してそして最後まで行き着くこともじゃ」
「成長ですか」
「そうなんですね」
「そうじゃよ、君達はこれまで学園の中の色々な場所を巡ってきてじゃ」
 泉を探す中でだ。
「多くの人達と会ってきたな」
「はい、色々な人と」
「本当に」
 妖怪も幽霊も人間の心を持っているが故に『人』と認識してのやり取りである。
「それで色々な考えも聞きました」
「色々な人達から」
「それで色々なものも観てきましたし」
「巡ってもきました」
「冒険は人を大きくするのじゃよ」
 それが学園の中でもだというのだ。
「様々な物事を観て知ることじゃからな」
「だからですね」
「そうなるんですね」
「そうじゃ、君達にとってもな」
 二人にとってもだと、博士は話す。 
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