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久遠の神話

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第八十八話 強くなる水その九

「そういうのがあるから」
「あの人もなの」
「そういうのじゃないかな。表の仕事では凄く真面目らしいしね」
「人間ってわからないわね」
 しみじみとしてだ、樹里はここでこう言った。
「戦いが好きでもお掃除も好きって」
「全くだね、人間はね」
「それで加藤さんは」
「絶対に止めないと」
 このことはとだ、上城はこのことについては毅然として言った。
「駄目だよ」
「そうよね、それこそ戦ってでも」
「あの人だけはね」
 上城は加藤については覚悟を決めていた、そのうえでの言葉だtgた。
「戦わないといけないかもね」
「上城君達が」
「あの人だけは違うから」
 他の剣士達、戦うことを選んでいる剣士達に限ってもというのだ。
「戦うこと自体が目的の人だから」
「そうした人にはよね」
「そう、例え戦ってでもね」
 そうしてでもだというのだ。
「止めるよ」
「上城君達が」
「多分。あの人を止めないと」 
 加藤、彼をだというのだ。
「この戦いは終わらないよ」
「言い換えるとあの人を止めたら」
「この戦いは終わるよ」
 そうなるのだった、全ては加藤にかかっているというのだ。
「中田さん達はどうにかなるかも知れないから」
「戦いから降りてもらえそうなのね」
「僕達も何とかしたいし」
「銀月さん達もよね」
「うん、動いてくれているからね」 
 だからだというのだ。
「何とかなりそうだよ」
「だったら余計になのね」
「そう、加藤さんだけは」
 戦い自体を願い目的としている彼だけはだった、このことばかりはどうしようもないというのだ。上城は覚悟を決めた目を樹里に今も見せている。
 その目でだ、彼は言うのだ。
「止めないといけないよ」
「絶対にね」
「そう、僕もね」
 彼自身もだというのだ。
「その為には」
「闘ってね、そして」
「勝つよ」
「こういう時は勝たないといけないのよね」
 樹里もわかってきた、そのことが。
「どうしてもね」
「そう、勝つべき時はあるんだ」
「剣道は勝負にこだわらるものじゃないわよね」
「試合はあってもね」
 それでもだというのだ、上城も話す。
「それでもね」
「勝つことが目的じゃないのよね」
「段もあるけれど」
 武道には必ずあるそれもだというのだ。
「それでもね」
「大切なことは自分がどうかよね」
「剣道は活人剣だよ」
 今の剣道はそういう立場だ、間違っても殺人剣ではない。
「間違っても勝ち負けを求めるものじゃないんだ」
「そういうものよね」
「だからさっき話した先生も」
 その暴力教師だ、己の生徒達に対して非常識なまでの暴力を振るう。
「勝敗に異様にこだわっていたよ」
「だから負ければだったのね」
「怒ったんだ、負けた生徒にね」
「最低よね、そういうのって」
「試合に負けたら部員全員を丸坊主にさせたりね」
「それって問題ない?」
「あるけれど平気でそうさせたんだ」
 これは上城が後で中田から聞いたことだ、あの教師は生徒に対してそうしたこともしていたのである。無論問題があることは言うまでもない。 
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