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久遠の神話

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第八十八話 強くなる水その八

「その先生はおかしいよ」
「絶対にそうよね」
「そしてそんなおかしなことはね」
「したらいけないわよね」
「絶対にね」 
 またこの言葉を出した上城だった、やはり忌々しげな顔と声で。
「加藤さんにはそれがないから」
「そういえば剣士の戦いとかストリートファイト以外には」
「力を振るわないよ」
「そういう人なのね」
「確かにt型買うけれど」
 それでもだというのだ。
「あの人は誰彼構わず襲ったり暴れたりはしないんだ」
「けれど警察からは」
 高橋の所属する組織である。
「あの人をマークしてるのよね」
「一時期逮捕しようと思っていたらしいしね」
「けれどそうならなかったの」
「確実な証拠がなかったから」
 だから逮捕出来なかったというのだ。
「傷害罪でね」
「そういう事件も確かな証拠がないと駄目なのね」
「さもないと。冤罪とかになって」
 それでだというのだ。
「後で無実とかになったらね」
「警察が批判されるわよね」
「そういう話ってあるじゃない」
「今でもね」
「だから警察もね。そういうことには慎重みたいなんだ」
 基本的にはそうなのだ、ここで無実の人間万が一そうした人間を捕まえると後で警察が批判されその信頼が落ちるからだ。 
 だからだ、犯罪捜査についてはなのだ。
「警察も基本はそうなんだ。それにあの人はまだ人は殺していないしストリートファイトも他の地下での試合とかもね」
「裏よね」
「裏の世界のことは中々ね」
 警察も入り込めないというのだ。
「何とかしたくてもね」
「難しいのね」
「だからあの人はね」
「今もなのね」
「そう、捕まらずにね」
 戦いを続けているというのだ。
「表の仕事も続けながら」
「清掃業よね」
 それが加藤の表の仕事だ、彼は表の仕事にも励んでいるのだ。
「それをされてるのね」
「何かを綺麗にすることも好きなんだよ、あの人は」
「戦うことと」
「どういう訳かわからないけれど」
「その辺り不思議よね」
 綺麗にすることと戦うことがだ、樹里はどうしても彼女の中では結びつかなかった。それで上城にも怪訝な顔で言うのだ。
「どういうことかしら」
「ううん、それは僕もね」
「上城君もなのね」
「ちょっと結びつかなくてね」
 その二つがだというのだ。
「不思議に思ってるんだ」
「そうなのね」
「まあ人間っていうのは色々な顔があるから」
「だからあの人もなの」
「そう、戦いが好きな一面とね」
 そしてだというのだ。
「清潔な一面がね」
「一緒にあるのね」
「ほら、魔女狩りで罪のない人を拷問して殺していた人が家ではいいお父さんだったとかっていう話もあるじゃない」
 こうした話は実際にある、ヒムラーにしてもその生活は質素であり想い人と幸せな家庭を築いていたのだ。 
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