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久遠の神話

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第八十八話 強くなる水その七

「相手にね」
「そこは違うのね」
「うん、あの人は戦いが好きなんだ」
「戦いと暴力は違っていて」
「あの人が好きなのは命と命、そして力と力のぶつかり合いなんだ」 
 加藤が好きなのはそうしたことだ、しかし暴力弱い者に振るいその相手をいたぶることはというのである。
「暴力じゃないんだ」
「そういう人なのね。それで」
「戦いと暴力はだね」
「また違うのね」
「そうなんだ、力は使うけれどね」
 このことは同じだ、だがそれでもだというのだ。
「戦いは暴力じゃないんだ」
「そこの違いが私はまだ」
 わからないというのだ、樹里は。
「そうした先生は暴力なのね」
「自分より剣道を知らなくて体格もない、しかも生徒っていう立場の弱い相手を好きなだけ殴ったり蹴ったりすることはね」
 そうした行為こそはというのだ。
「暴力だよ」
「そうなるのね」
「言葉の暴力もあるけれど」
「人の心を傷付ける言葉ね」
「暴力は戦いとは違うんだ」
 上城は暴力については忌々しげに話していく。
「ネットの書き込みでもね」
「誹謗集中とかよね」
「ネットいじめってあるじゃない、あれもね」
「暴力になるのね」
「そうなんだ、暴力なんだ」
 それになるというのだ。
「あの先生は言葉の方も凄かったみたいだけれど」
「根っからの暴力気質だったのね」
「みたいだね、何も出来ない相手に思う存分殴ったり蹴ったり罵ったりしていたから」
「つくづく最低な人だったのね」
「人じゃなかったかもね、あの人は」 
 今は再起不能になり廃人にさえなっているその輩はだ。
「そんなことをするなんてもう人間じゃないかも知れないよ」
「人間の心をなくしてるっていうのね」
「人間の心がなくなったら」 
 それこそだというのだ。
「人間じゃないからね」
「そうなるからよね」
「少なくとも最低の人間だよ」
「歯向かえない相手にそこまで暴力を振るえる人は」
「最低だと思うよ」
 ここでも忌々しげに言う上城だった。
「僕はそんな人間になりたくないよ」
「私もよ」
「力は何も出来ない相手に振るったら駄目なんだ」
「絶対によね」
「うん、ましてその先生は大人で生徒は中学生だったから」
「まだ子供よね、中学生っていうと」
「ついこの間までランドセルを背負っていた子供にね」
 その教師は暴力を振るっていたというのだ、こうした教師が実際にいてしかも何の処罰も受けないのが日本である。
「そうしていたんだ」
「酷いことよね」
「よくそんなことが出来るよ」
 上城にはわからなかった、その教師の考えが。
「幾らその子の剣道の腕が拙くてもさぼっていてもね」
「それでもよね」
「そんなことをするなんてね」
 例えその相手に非があってもだ、そこまでの暴力を振るうことはというのだ。
「そりゃ先生って仕事は大変だし」
「ストレスがたまっていても」
「そんなことをするなんてね」
「普通はしないと思うよ」
 それは絶対にだというのだ。 
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